第三十話 出発と拾いもの
「はぁ。王様の考えが分からないよ、もう帰っちゃわない?」
「そだね~、ナニーの仇の事は聞けたし、さっさととんずらしちゃいましょうか?」
「そうですわね。フォルトゥナちゃんには悪いですが」
「ええ~、私と居るのはお嫌ですか?」
そんな上目遣いされても······。
「あのね、俺達はやらなきゃならない目標があるんだよ、だからここにとどまる事は出来ないんだ」
「叙爵だって必要は······多少あるけれど、
どうしても必要って事も無いのよ」
「それに、先程の言い方ですと、私達を配下みたいに扱いかけてましたわ」
助けて喜んでくれるのは良いが、何かで縛られる訳にはいかないからね。
「では私もこの国を捨ててついて行きます!」
いやいや、それは駄目だと思うな、王子が一人減った所だよね? そこでまたフィナが減ったらこの国駄目だよね?
「それは、この国が駄目になっちゃう可能性があるよね?」
「そうよねぇ、一気に二人はね、あはは」
「あら、気配が近付いて来てしまいましたわね」
「逃げられなかったな、あはは」
カチャ
「待たせたね。ん? 皆、パティは来てないのかな?」
ペイジさんだった。
「いえ、ここには来てませんね。ペイジさんと一緒に行ったとばかり思ってましたが」
「パティさんはキュキィさんと一緒じゃないのかな? 仲良さそうだったし」
「また、誰か来そうですわ」
「待たせたな」
リベル王とキュキィさん、とれと噂のパティさんが一緒にやって来た。
「おお、パティどこにいったのかと心配していたのですよ」
「うふふ。心配させましたね。少し懲らしめないといけない悪い子がいたのでキュキィとちょ~っとね」
「まったく、危うくこの国の危機になるところだ、最悪壊滅もあり得る事案だぞ」
「ま、まったくもって申し訳無かった」
リベル王が俺たちに向かって深く頭を下げる、その頭をキュキィさんがさらに押さえ込み、膝に着いちゃいますよ~のレベルだ。
「うふふ。何やら解決したようですわね」
「じゃあ俺達はもう行っても良いの? 馬車の練習もしたいし」
「か、構わん! へぐっ! いえ、構いません、馬車は最高の物を御用意致しますので! うちの庭で練習をして下さい! 馬車はそのままお持ち下されて大丈夫です!」
リベル王はキュキィさんに頭を拳で殴られ、馬車をくれる話になった。
「リベル、だから止めておけと言ったでしょう、貴方がやろうとした事はこの国、この街を救ってくれた方への裏切り行為ですよ」
「貴族として縛ろうなんて本当に馬鹿なことを考えました! 本当に! 本当に! 申し訳ありませんでした!!」
やっぱりそんな事を考えてたのか。そうなっていたら、さっさと出ていってただろうな。
その後、馬車をもらい庭で少し練習すると······。
「ねえユウマ、よく考えたらスキルがあったよね」
「そうですわね、乗馬もありますわ」
「知らない内に、知らないスキルが沢山あるね、房中術とかこれって······」
見なかった事にしよう。
3日もかからずと言うか、初日に、それも1時間程でマスターした馬車の練習を終え、明日出発となりました。
テイラーもフィナも学校があるため(テイラーは、病気のため休んでいたので追い付くのが大変そうである)、この旅はいつまでかかるか分からないのだ、それを聞き流石にこの旅には付いていく事が出来ず、相当残念がっていた。
翌早朝、俺、セイラ、ナニー、忍君は馬車に乗り込み、皆に別れを告げ出発した。
最初の2日くらいは代わる代わる御者台に座っていたが、流石に飽きてきたので、車でだが運転経験のある俺が御者に落ち着いた。
すると、屋根の上で偵察と言いつつ何やら魔法か何かの練習をしていた忍君が何かを見つけた。
「ユウマさん、前方に何か落ちてますよ、この坂を登りきった所ですね」
「了解、ちょ~っと見てきてもらっても良いか? あんまり坂の途中で停めたくないからね」
「そうですね、馬さん達に負担がかかりますから、じゃあ行ってきます」
「すまんな、気を付けて降りろよ」
「は~い♪」
ピョ~ンと飛び降りると一気に加速して坂を登っていく。
シェアしたからステータス上がりまくりだな、あはは。
坂の上まではすぐに到着した、何やら驚いているようだね、ジェスチャーで左によれかな? よし右にはよらずに左によせていきます。
もうすぐ頂上だ。あの後忍君はしゃがんだ様で姿が見えなかったが、頭が見え、全身が見える様になったのだが、何か抱えていますね、······忍君が抱えているのは小さな子供だった。
平らになったところですぐに馬車を停め、忍君の元に近付き声をかける。
「えっと、どんな状況?」
「ど真ん中に倒れていただけで、後は気絶しているので分かりませんね、冒険者にしては軽装ですかね」
「いや、アイテムボックスに武器は持っているだろうな、ん~鑑定はしたの?」
「あっ! そうですよね、この状況がもし毒とかならヤバいです! 鑑定!」
いやいや、それもあるけれど、まずは自身の安全のために称号くらい見ておこうよ、あはは。
「あ~、脱水に空腹ですね。一旦馬車に乗せても良いですか?」
「良いよ、変な称号は無いんだよね?」
「特に無いですね。行き倒れとは出てますが、あはは」
「そのまんまだね、乗せてあげて」
「分かりましたありがとうございます」
いやいや、忍君がお礼言うのもおかしな話だね。
ってか、屋根なの! 小さいし軽そうだけど、お姫様抱っこで飛び上がれましたか。
「ぬふふ、忍君がロリっ子拾いましたね」
「うふふ。あの娘私たちより年上ですよ、ドワーフです」
おお! ドワ子でしたか! 髭もじゃレディじゃなくて良かったよ。
変わった落とし物を拾いましたが、旅は順調に続き、遠くに街道沿いの村が見えてきた。
時間的に今日の夜営はこの村の向こうに抜けてからかな、朝一に出発するから村の中をガタガタ走らせるのは少し気が引けるしね。
そんな事を考えながら村に入らず、通りすぎた所に停車させ、まだちょっと早いが夜営の準備を始めた。
日も落ち、持ち運びハウスに皆が揃い、そろそろ晩ごはんかなと思ったところでドワ子ちゃん? 年上だからドワ子さんかな、目を覚ました様だ。
「はふぁあぁぁ、は? あ、あの、ここは?」
寝惚けているようだ、そりゃ旅していた筈なのに、いきなり家の中じゃね。
「大丈夫ですよ。街道で倒れていましたので助けたのですが、体調は大丈夫ですか? 脱水でしたから水は少しだけ飲んでくれましたが」
くきゅるる~きゅる
盛大にお腹が鳴ったので場の空気がゆるゆるになった。
「うふふ。そろそろ晩ごはんにしますわよ、テーブル席に着いて下さいませ」
「は~い!」
「君も一緒に食べよう、ユウマさん良いですよね?」
「もちろん、一緒に食べよう」
そうして始まった、晩ごはん。
「そうだ、僕は忍よろしくね」
「私はテルースです、助けてくれてありがとうございます、よろしくお願いします」
「俺はユウマ、よろしくね」
「私はセイラです、仲良くしてね」
「ナニーと申します、どうぞよろしくお願いします」
ドワ子さん改め、テルースさんは、鍛冶士を目指す裁縫士だ、職も裁縫士······。うん頑張ってね、あはは。
何だかんだで忍君と仲が良い、忍くんがロリっ子テルースさんを膝に乗せ、なんだかラブラブな感じなので俺達3人はさっさとお風呂に入り、······もちろん一緒に。セイラも俺とナニーがそうなった事を知っても、『やったねナニー!』と大喜びなので修羅場は回避されたのだが、しっかりお風呂で2人をお相手してから部屋に引き上げた。
翌朝、持ち運びハウスから外に出ると、武器を持った人達に周囲をぐるっと囲まれていたのだが······。
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