第二十九話 奴の正体
「ぐぅぅ、なぜだぁ、体が動かせん」
トラウト侯爵に奴隷の腕輪を嵌める。続いて王子と王妃にも。
「な、何をする、不敬罪だぞぉ」
「触らないでぇ、下民が汚らわしぃ」
「王様。終わりましたよ」
「うむ。3人ともすまないが、動かず嘘をつかないように、すぐに答えるように命令を頼めるか」
「分かりました」
座り込んでいる者、這いつくばっている者、その者達に命令をした後、部屋の中央に集められています、王子も王妃も同様に。
そして王様が話し始めた。
「まずはトラウトの娘とそこの王子との婚約は認めてやろう」
「ではなぜこのような」
「王子、王妃もなぜそうなっているのか分からんか?」
「分かる訳がありませぬ~、父上、このような仕打ち」
「そうですわ、私までなぜ」
「他の貴族達もそうか?」
皆は頷いている。
「ふむ。モンスターハウスの魔道具が管理ダンジョンに仕掛けられ暴走させる計画を立てた者は? 暗殺ギルドのメンバーである者は? ここまで言えば皆は分かるだろう」
「トラウト侯爵、暗殺ギルドのグランドマスター、相違無いか?」
「はい、くぅ」
「隣国、ヘキサグラム魔法大国からの依頼でペイジ辺境伯の暗殺を請け負い、自身の娘をそこの王子に嫁がせるため、ペイジ辺境伯の娘、テイラーの暗殺を企てた、相違無いか?」
「くぅ、は、はい」
「モンスターハウスの魔道具でスタンピードを企てた、者はその場で立ち上がれ」
その場で倒れ伏して居た者達は、全て者が立ち上がった。
「さて、申し開きはあるか? あるなら聞こう」
流石に無いだろうな、これであったらそれはもうヤバい人か何も分かっていないか。
「父上が我に直ぐ王位を譲らぬ事で招いたことですぞ」
いるんかい!
「元々そなたに王位は譲らんと言っておいたが、理解しておらなんだか? フォルトゥナが次期王と、伝えただろう」
うわぁ~、そこまで言われていても理解出来なかったのか······
「そんなものは無効に決まっているではありませんか! 王とは男がなるものです!」
いやいや、女王様も居るよね?
「理由も伝えたのだがな。そなたが民から略奪紛いの税の取り立てや、理不尽な暴力の数々、そんな者に王位なぞ譲れるものではない」
「その通りだと思うものは座れ」
なんと、立っている者は王子と王妃のみ、あのトラウト侯爵でさえ座ってしまったぞ。
「なぜだぁ。我しか王に相応しい者はおらんだろうが、トラウト、お前までなぜ座っておる」
「王子がその様な事をなさっているとは······」
その王子と娘さん婚約しちゃったよ。どうするのかね、あはは。
「トラウト、貴様の娘との婚約もある。まあ、婚約者たる王子は犯罪奴隷だ、逢うことは無いだろうがな。それとも、娘も犯罪を措かしておるのか?」
「くうぅ。暗殺ギルドのトラウト領のギルドマスターです」
ああ~、家族でやってたのか、そこにナニーの仇が依頼に行ったと、そこも怪しいよな、念話で依頼をしてみるか。
(王様、ヘキサグラム魔法大国の王様は暗殺ギルドのメンバーかどうか聞いてもらえないかな?)
(ふむ。そうだな、テイラー暗殺を企てたトラウトとの間柄も気になる、分かった)
「トラウト、ヘキサグラム魔法大国国王とはどんな繋がりだ?」
「あぁ、同じグランドマスター同士です。あの王家で暗殺ギルドのメンバーでは無い人物は、ナニーと言う第一王女のみ、それも数か月前に私が渡した毒薬で死に、街道に捨てたと聞いております」
マジか! ナニーの死因の一つはこいつじゃないか!
ナニーを見ると、冷えた目で見下しながら前に出る。
「そうでしたの、貴方が私を殺した毒薬を」
そう口にしたナニーをトラウトが、見た瞬間!
「な、なぜ生きている! なぜこの場に居るのだ! あれは一舐めで死に至る猛毒の筈だぞ! 王は間違えたのか!」
「いいえ。私は街道脇の木下で遠ざかる馬車を見送りながら死にましたわ。少し、仕返しをしようと戻ってきただけですわよ」
「ひぃ~! た、助けてくれ! 頼む何でもくれてやる! だ、だから殺さないでくれ!」
ナニーは答えず、収納から刀を出して鞘から抜き放つ。
俺はナニーの横に、セイラも、二人でナニーを挟むように立ちナニーの握る刀に手を添え。
ゴトン
トラウト侯爵の最後である。
恐怖に見開いた目はもう閉じることは無い。
「王様。この場をこのような者の血で汚してしまい申し訳ありません」
「構わん。私も今から汚さなくてはならないからな。王子よ、それに第三者王妃よ、申し開きはもう良いか?」
王もシンプルだが使い込まれた一振の剣を出し王座の有る壇上から下りてきた、辛そうな顔してる、そりゃ血を分けた親子だからな。
「お前の教育を私が出来なかった事をこの先後悔しながら生きていく」
「ち、父上、我は王にならねばならないのですよ! なぜ下民を虐げる事がいけないのですか! なぜいくらでも沸いて出てくる者を虐げてはいけないのですか!」
死ぬ間際で最後の力を振り絞るかのように叫び、立てと命令があるにもかかわらず、王子の体が前に倒れ込んだ。
ドサッ
「ああ! 私の王子が! は······」
王妃も力の限り叫んだ後、体力が0になった。
ドサッ
「最後は私の手を汚させず逝くか、すまぬがこの者達は私の汚点として、私と共に墓に入れるとする」
「さて、叙爵は終りだ。この犯罪者達から事情を聴き、報告をあげて下さい」
「はっ!」
兵士達が座り込み動けない者達を、両脇から抱え、謁見の場から連れ出してしまいました。
王は剣をしまい、王座に戻り、静かに話し出した。
「ユウマよ、此度の働き見事である。よってフォルトゥナを幸せにしてやってくれ、二人の婚約をここで正式に認める! 異議は受け付けん」
「いやいやちょっと何言ってるのですか!」
「確定だ、諦めろ。これにて叙爵の儀を終了とする。残っている者はこれからの事を考えねばならない、宰相、すまぬが場所を押さえてくれるか」
「はっ!」
ぞろぞろと退室して行く皆を、目と口が開きっぱなしで唖然と見つめる俺達······。
「皆様、こちらに部屋が用意してあります。まずはそちらに移動お願いいします、すぐに王も参られますので」
メイドさんの言葉で皆は我に返り、メイドさんの後をとぼとぼと、ついていくのであった。
「理不尽」
俺の言葉に皆は頷くのであった。フィナ以外ではあるが。
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