第二十六話 謁見前に
「ふふふふん♪ ふふん♪」
「ユウマご機嫌?」
「ん? ああ、お城行くんだぞ? 何か楽しみでね。フウも行くか?」
「良いの! 私って森とここしか知らないから凄く見てみたい!」
『猫は入れるのですか? 入れたとしても、おそらく魔物の結界が張ってあると思うのですが』
それは可能性大か。
「結界があると駄目だよな。フウ、行ってみて入れるならこっそり行こうか!」
「良いの!」
「服の上にマントかローブを羽織れば隠れられないかな?」
俺は色々ファッションショーをしながら、フウをお腹に入れて、肥満の人の様にすればいけそうな気がしてくる。
首もとからフウが顔を出しているが、良い感じじゃないかな?
「お母さん、どうかな? 結構いけてるかなと思うんだけど」
『ぷふっ』
「笑われたね」
「笑われちゃったな、皆にも見てもらってアイデアを貰おうか」
「うん♪」
そうして、朝食の場に行って皆に見せると······。
「ぶはっ! ユウマ君、その格好で登城する気かい? ふははははは♪」
「お兄ちゃんが太ってるよ♪ あははははは♪」
「何それユウマ最高! うぷぷぷぷぷ♪」
「最高ですわね♪ うふふふふふ。」
「ユウマさん、笑わせ上手ですね、あははははは♪」
「あらあらまあまあ、ユウマ君が妊娠したみたいね、うふふふふはっ♪」
メイドさんまで笑っている······。
「フウ、これは駄目な様だね」
「完璧に隠れられたと思ったのにね」
『フード付きのローブでフウがフードに入れば良くありませんか? ぷふっ♪』
俺とフウは寝室に戻り着替えたのであった······。
フードに入ったフウと一緒に登城! 来てみれば従魔なら連れていても良かった様だ。
何も悩まなくて良かったのにね。まあ、気を取り直し、謁見までペイジさんは待機場である部屋に居ないといけないらしく、俺とフウは散策を、この一階だけなら良いと言われ、うろうろしている。
「へぇ~中庭もあるんだな」
「綺麗だね、川が流れているし、橋まであるよ♪」
「おお、渡ってみようか」
「お先に」
フウはフードから出て、肩に乗った状態だったため飛び降りると、とてとてとてとて小走りに石橋に、それを追いかけ石橋にたどり着いたのはほぼ同時である。
橋の上から川を覗き込んで、キラキラと魚の鱗の反射を見ていると、何やら声が聞こえてきた。
東屋があって、そこには煌びやかな服を着た小さな男の子と、今の俺よりは年上かなって男の子が居た。
「苛められてるよ、小さい方が」
「駄目だよな、仕方がないね止めよう」
俺は東屋に少し足早で近付き、木の枝を振り上げ今にも小さい子を叩こうとしているので、枝を掴み取り上げてしまって収納しておく。
「駄目だよ、木の枝でも叩いちゃうと怪我しちゃうからね」
なるべく優しく聞こえるように言ったつもりです。
「何だ貴様は! 我の邪魔をするか!」
おう、凄い上から目線だな、あはは。
「そんなつもりは無いけどこっちの子が怪我しても良いの? 何か気に入らない事があるなら口で言いなよ、手を出して酷い怪我とかしちゃったら駄目でしょ?」
「貴様! 我を誰だと思っておる! 我の前で何故跪かん!」
「いやいや、君が誰かは知らないよ、俺はそんな事を言っているのじゃ無くてね、君が叩こうとしたのは女の子だよ、お嫁さんに行けなくなっちゃうかもしれなかったんだよ」
「まだ言うか! 兵は居らぬか!」
兵士さん呼ぶの? これくらいで?
「殿下! 王妃様が御呼びです! 緊急性があると」
ん? メイドさんが凄く慌てて苛めっ子······殿下! 王子様かいな! 不敬罪にならなきゃ良いけど。
「何! もしやあの計画が! ちっ、分かった案内せい!」
「はい。こちらで御座います」
計画って? なんだろね。まぁ、一件落着かな。
「あ、あの助けていただきありがとうございます」
上目遣いで見上げてくる、さっきの殿下と足して二で割れば······まぁ、撫でておくか。
「良いよ。怪我しそうだったから手が出てしまっただけだし」
「いいえ。あのまま叩かれていたと思うと震えが来てしまいそうですよ」
「あはは、だろうね、でも殿下って言ってたけど俺大丈夫かな? 不敬罪とか言われない?」
ふと気付くと頭を撫でているがこの子の目線は俺の肩を見ている······横を見たら、うん、フウが居るからね、あはは。
フウをこの子の目線まで下ろすために、膝を曲げ高さを合わせてみよう。
「はわ~、猫さん、可愛いです」
「フウって言うんだよ」
「フウちゃん。良い名前ですね、私は、フォルトゥナ、よろしくね」
「フウだよ、よろしくね」
「まあ! お喋りが出来るのね」
「そうだよ。そうだ、俺は、ユウマです、よろしくね」
「はい、フウちゃんに、ユウマお兄様ですね」
「あははは、ユウマって呼び捨てでも良いよ、フォルトゥナ、ん~、そうだ、フィナって呼んでも良いかな?」
「まあ! と、特別ですよ。お母様が生前そう呼んでいたので嬉しいです」
「フィナの方が可愛いよね~」
「そうだなフウ。それに見た目も可愛いしな」
「はふん」
あらら。からかいすぎたかな? 真っ赤になっちゃった。たぶんどこかの貴族令嬢だから、これくらいにしておかないと、でも可愛いから撫でておこう、この頭はなでなでしやすいな。
「ユウマ様でしょうか?」
「はい」
振り向きながら返事をするとメイドさんが居ました。
「ペイジ様が戻ってきて欲しいとおっしゃってます」
なんだろね。
「分かりました、フィナ、ごめんね、用事が出来たみたいだ」
「では私も参りましょう、案内をお願いしますね」
え? そうなるの?
「畏まりました、こちらです」
そう言うと、歩き出すメイドさん。
俺の手を引くフィナ。まあ、良いか。
そして待ち合い室に戻るとペイジさんが知らないお兄さんとお話をしてますね。
「ペイジさん戻りました。凄く綺麗な庭がありましたよ、あそこでピクニックとかすればテイラーも喜びそうでした」
「おお! あの庭を見てきたのですね。そうですよあの庭はこの王が趣味の範囲でちょっとずつ造り上げた庭ですからね」
王様って! 駄目やん! ここは挨拶しておかないと!
「初めまして、ユウマです、よろしくお願いします」
「うむ。フォルトゥナも一緒か、よろしく頼むぞユウマ。して、何故フォルトゥナは、ユウマ君に引っ付いておるのかね?」
「お父様。ユウマは良い人です。私はヘキサグラム魔法大国の王子とは添い遂げたくありません。ユウマの元に嫁ぎたいと思います」
は? どういう事?
俺はあまりの事に、頭の中の整理が追い付いていないところへ、何度か聞いたことのある音が聞こえてきました。
カンカンカンカン
カンカンカンカン
読んでくれて本当にありがとうございます。
ほんの数秒、私にお時間を下さい。
この後書きの下にある☆☆☆☆☆で評価してもらえると励みになります。
『ダメダメ』なら★☆☆☆☆
『同情票で』なら適当に目を閉じて「えいっ!」
『面白い!』なら★★★★★
もう少し時間があるならブックマークもポチっとして貰えると嬉しいです。
読んでいただき、ここまでお付き合いありがとうございました。
これからも読んでもらえるように頑張ります。