第二十話 もふもふ Ⅱ
「もうすぐだ。だいぶ良くなってきただろ? ほら薬草の搾り汁、苦いけど飲めば中からも回復するから」
「ユウマ。持ち運びハウスのポーションにしてあげようよ」
「そうですわ、直ぐにお持ちしますわね」
ナニーは持ち運びハウスを出し、勢い良く飛び込み直ぐに戻ってきた。
「ナニーありがとう。ほら、これは苦くないから」
仔猫は、『本当に?』って顔をして口を開けてくれた。
俺はポーションの蓋を取り仔猫の口の中に手を突っ込みポーションを流し込んだ。
「ほら、苦くないだろ」
ゴクンと仔猫はポーションを飲み込み、その後も何本か同じ要領でポーションを流し込んでいく。
「ユウマ。もう大丈夫よ、猫ちゃんも頑張ったね」
「うふふ。良く頑張りましたわね」
「はぁ~、助かって良かったよ。よしよし、ふおぉ! 手触りがもふもふ!」
『助かりました、ありがとうございます』
その時頭に声が響いた。
へ?
「なんだ今の? お母さん猫が喋ったの?」
「どうしたの、ユウマ」
「猫は喋りませんわよ」
『うふふ。念話ですよ、この度は私の子を助けていただきありがとうございます』
「いや、そんなの当たり前だよ。だからお礼もなにも要らないから、でもこんな強いお母さんが居るのに誰にやられたの?」
「ユウマ誰と話をしているの」
「念話をオンにしてみなよ、たぶんそれで聞こえる筈」
『うふふ。今回はありがとうございます』
「きゃ!」
「聞こえただろ、あははは」
『先程の質問ですが、地龍です。私なら負けませんが、まだまだ娘は弱くて』
あはは。猫の苦笑いなんて初めて見たよ。
「地龍って近くに居るの?」
「ユウマ! もうすぐ街道に出てくるわよ!」
「来ます!」
バキバキッ!
物凄い音が近付いてくる、両脇が森の街道だ、ここでその地龍が突っ込んでくれば逃げ場はほぼ無いだろう。
バキバキッバン!
と音がして森の木が爆発したかの様に弾け飛び、地龍が現れ一直線に加速して俺達の方に走りよってきた!
「搾取! 全開!」
透明の玉が今までに無いスピードで地龍に迫り吸い込まれた。
突っ込んできた勢いそのままで、手足は力が抜けたように
ズザザザザザザザー
腹這いの状態で街道を滑り俺達の15メートルほど先で止まった。だが体力が搾取しきれない!
「流石に強いな! でも今なら!」
ダダッ!
俺は走り出し、地龍の首の横に、刀を抜き上段から切りつけた。
ズズン
刀の刃が短くはないが、それでも向こうまで届く筈がないのに斬撃が発生したのか一撃で地龍の首が落ち、目がギョロギョロ忙しなく動き、体はまだビクンビクンと脈打っているが、これで死なないって事はないだろう。
脈打っていた本体も、動いていた目も止まった、俺は
「収納!」
地龍を収納し、地龍が出てきてばら蒔いた木も収納して猫の親子の元に戻った。
「お前もあんなデカいのにやられたら仕方無いよな、ふおぉ~もふもふ最高!」
「ユウマおめでとう。ドラゴンスレイヤーだよ」
「うふふ。Cランクのドラゴンスレイヤーだなんて前代未聞ですわよ」
「そうか? まぁ、なんにせよ誰も犠牲にならなかったから良かったよね」
『まぁ、お強いですね。うちの娘が貴方を気に入ったそうよ』
「そうか、じゃあ友達だな」
「ぐるぐるぐるぐる」
「ふおぉ~もふもふ!」
仔猫と言っても象くらいの大きさだ、顔をすりすりしてくるだけでも、もふもふが気持ち良すぎる。
「あはは······従魔になってるよ」
「まぁテイマーですからね。うふふ」
こうしてウインドエンペラーキャットの大きな仔猫は俺達の仲間になりました。
そしてシェアをしたとたん。
「主、よろしく頼むにゃ」
「喋ったぞ!」
『うふふ、私よりその子の方が素質は上ですから』
「主、名前が欲しいにゃ」
「名前か······苦手なんだけれど、そうだな、風に関連した、風ので、フウってのは駄目か?」
「フウ? フウ、······フウ! 気にいったにゃ! 私はフウにゃ!」
そう言ってぐりぐりと顔をこすり付けてきた。
「うほぉ~もふもふ祭りや~!」
「あ~、楽しそうなところですが、どうなったのか教えてもらいたいのですが」
ペイジさんがすまなさそうな顔で話しかけてきたので簡単に説明しました。
「ふむ。ではこの街道の一番の懸念材料であった地龍は倒せ、ヌシであるウインドエンペラーキャット、フウのお母さん共々友達になった。これで良いのか」
「あなた。フウちゃんはユウマ君の従魔になったって事も忘れちゃ駄目よ」
「うむ。そうですね、分かりました。しかし、ユウマ君、君は、······いや、皆が無事に怪我もなくこの危機を乗り越えたのだから良しとしよう」
「当主様、申し訳ありませんが少しよろしいでしょうか」
「うむ、どうかしましたか?」
どうかしたのだろうか? 何か問題があったのかな?
「はっ。今回の件で馬が疲弊しております。今日は出来れば休ませて明日の出発に出来ませんか?」
「うむ、そうですね分かりました。その様にして下さい街道の真ん中は駄目ですので、そこに見えているお昼に休憩予定の所までは頑張ってもらい、そこで休む事にしましょう」
「はっ。では馬車などはそちらに寄せ、夜営の準備を始めます」
「よろしく頼む」
「はっ」
馬が頑張ったからな、結構なスピードで走っていたみたいだし、この後も走らせるのは少し可哀想だよな。
それから100メートルほど進んだ所にある小川に隣接した広場に馬車を寄せ、見られてしまった俺達の持ち運びハウスとテントを設置し、今夜の寝床の準備が完了した。
「本当に私もよろしいのですか?」
「大丈夫だよ、見た目より中は広いから」
ペイジさん達の持ち運びハウスは分譲住宅にあるようなサイズの物だが、俺達の見た目は六畳のログハウスだもんな、あはは。
「ひょえぇぇぇぇぇぇ~! 広いですぅぅぅ~!」
テイラーは中に入ったとたんその広さに驚き、叫ぶ。
「な、な、な、なんなのですかこの広さは!」
「広いだろ、だからテイラーひとりくらい増えても大丈夫だ、あははは」
「うふふ、フウちゃんも、お母さんまでなんとか入れましたね」
そうなのだ入り口が入る時だけ広がるのだ。
中もお母さんに合わせ広くなっているから、リビングだけでフットサルのコートが、二面がスッポリ入るレベルに拡張されとにかくデカくなった。
『少し小さくなりますね』
そう言うと、お母さんはしゅるしゅるとフウより小さくなって、それに合わせて部屋も小さくなる、最終的には、メインクーンくらいの大型の猫サイズに。
「お母さんスゴいにゃ、私も変化!」
フウも小さくなるようだ。
しゅるしゅると小さくなり、通常サイズの猫に小さくなった。
「すげぇぇ~!」
「まあ! 凄く可愛さがアップしましたわ♪」
「はわ~!」
そんなこんなで今日のお泊まりメンバーがきまりました。
読んでくれて本当にありがとうございます。
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