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第七十九話 静寂の襲撃

第四章、開幕するです!

12月22日にアップしたものを少し手を加えました。

 某日。

 未明。

 とある山道道路。

 そこには二台の車とその間に一台のトラックが走っていた。

 街灯が設置されていないためヘッドライトの光を頼りに、見通しの悪い道をゆっくり進んでいる。



 そんなトラックの運転手、ひげを携えた小太りの男はというと、大きな欠伸をかいていた。


「あ~ぁ、眠い」


 乾いた目を瞬きで誤魔化そうとしている。

 が、道中何度か居眠りし掛けたこともあり、そろそろ限界を迎えようとしていた。


「おいおい、寝るなよ。こんなところで事故を起こすなんて真っ平ごめんだからな」


 助手席に座っている痩せた中年の男が肩を叩く。


「じゃあよ~、変わってくんねぇか?こっちは急な仕事の依頼で前以て眠れてねぇんだよ」

「それ言ったら俺だってそうだ・・・・・・まあ、いいや一回その辺で停車しろ、運転代わってやる」


 そう言うと、トランシーバーを手に取り、前後で走行している車両に指示を出した。



 それからしばらくして、トラックを測溝に停車させると、二人は車を出て入れ替わった。


「しかし、今回は一体どんな上物を持ち出そうとしているのかねぇ。うちの雇い主さんはよ」


 小太りの男が呟く。


「さあな、少なくとも俺たちには関係ねぇことだ」

「そりゃぁそうだよな。なんたって()()()()()()使()()()()たちしか扱えない代物だしな」

「嫌味か?」

「別にいいだろ?あいつらは俺たちより給料が良いんだしよ。嫌味の一つや二つ言ったってなんとも思わねぇだろ?」

「確かに」


 高笑いを上げて、男たちは車に乗り込んだ。



「あとどれくらいで着くんだ?」

「一時間くらいじゃねぇの」

「うわっ、マジかよ」


 痩せた男はボヤキながらも発進の準備をした。

 そして、小太りの男は助手席に座ると、トランシーバーを使って連絡を取ろうとする。


「今から車を出す。どうぞ」


 しかし、応答がなかった。

 もう一度伝えるが、やはり反応がない。



「おい、どうした?」


 痩せた男はハンドルを持ったまま訝しげに話し掛ける。


「いや、さっきから反応がねぇんだよ」

「寝てんじゃねぇのか?お前みたいに」

「うるせぇ」


 それから何度か話し掛けるが、応答はなかった。

 埒が明かないと判断し、トランシーバーから顔を離した。


「ちっと様子を見てくる」


 溜息交じりにそう言うと、小太りの男は車から出て行った。

 残った方は窓越しでその様子を伺う。



 小太りの男は前に停車している車の中を覗くと、慌ただしくドアを開けた。

 そして、上半身だけ中に入ると、大声を上げて何度も呼び掛けている。

 一体何かあったのだろうか?

 不審に思い、自分も車から降りようとドアノブに手を掛ける。

 その時だった。



 悲鳴のような音が聞こえたのだ。

 ふと視線を戻すと、小太り男が倒れた。

 ただ事ではないと察し、ドアを開けようとする。



 ドンッ


 頭上から何かが落ちた音が聞こえた。

 恐る恐る上を見上げる。

 天井だ。

 だが、その向こうにいる屋根の上に『何か』がいる。



 痩せた男は立て続けに起きた奇妙な出来事に恐怖心を覚え始めた。

 あとはドアを押して開けるだけだが、躊躇ってしまう。

 呼吸が乱れていき、風の音さえも反応してしまう程、聴覚が鋭くなっていく。


 ドンッ


 上からまた音がした。

 それと同時に、心臓の鼓動も弾む。


 ドンッドンッ


 ぶつかる音が激しくなっていく。


 ドンドンドンッ


 そして____。



 音が鳴り止んだ。

 男はやっと解放されたと思い、貯め込んだ息を一気に吐き出した。


「!?」


 が、顔を上げた瞬間、呼吸が止まってしまう。

 先程までいなかった人影が、目の前にいるのだ。



 小太りの男や護衛で着いて来ていた協会の人間とは違う。

 真夜中の山中、人ひとりとしていないような場所に人がいるのだ。

 いるとしても、それは自分たちのような車で移動している人くらいだ。

 だから、目の前にいる存在が不気味でしょうがなかった。

 何よりもただならぬ殺気を放っているようで、今にもこちらに襲い掛かるのではないかと錯覚してしまう程だった。



「・・・・・・う、うわああああぁぁぁぁぁあぁぁああぁぁぁああぁあああっ!!!!」


 錯乱状態になり、倒れた仲間を置いてトラックを発進させた。

 本能的に悟ったのだ。

 ここで逃げないと自分も殺される、と。

 アクセルを付加し、山道を猛スピードで走る。

 急なカーブもハンドルを回して、強引に曲がろうとした。

 が、途中でスリップしたのか車体が大きく回転し、そのまま横転してしまったのだ。


「・・・・・・う、くぅ・・・・・・・・っ」


 衝撃で身体の至る所が痺れるように痛い。

 なんとか窓から外に出ようとした。

 そして、目前の光景に全身が硬直してしまう。



 横転したトラックのコンテナ。

 屋根が四方形の形に切り抜かれている。

 アスファルトには繰り抜かれた部分が鉄板となり、無造作に転がっている。

 まさか、あいつがやったのか?

 その予想は的中することになる。

 穴の中から人影が出てきたのだ。

 手には何か物を鷲掴みにして持っている。


「ひっ!」


 もう片方の手に小刀が握られていることに気が付き、思わず委縮してしまう。

 それ以上声が出ず、完全に動けなくなった。


 こ、殺されるっ!?


 自分の死期を悟り、それに対する抵抗から顔面を濡らす程の液体を流した。



 すると、人影は瞬く間に消えてしまった。

 まるで瞬間移動のような早業で、目で捉えることができない程に。

 人影がその場からいなくなったことを理解すると、腰を抜かしその場にへたり込んでしまった。


「は・・・・ははは、ははははっ」


 男は壊れた玩具みたく笑い続けた。



 この一連の出来事は、後に魔術協会に知れ渡り騒動となった。


 アルテミス。

 ナイチンゲール。

 アフロディテ。


 輸送中の魔道具を何者かによって強奪されたのだ。

如何だったでしょうか?

次回は1月30日13時に投稿しますので、そちらの方もご覧ください!

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