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第五十五話 追跡と隔離

「ああもう、しつこい!」


 空中を縦横無尽に飛び回りながら、追っ手から振り切ろうとするユイ。

 しかし、ドローンの追跡は尚も続いている。

 急降下や急旋回を繰り返しているのに、落とせたのはたったの二機。

 光弾で破壊しようとしたが、それ難なく回避してしまったのだ。

 しつこく追いかけてくるドローンに嫌気を指しながら、ユイはある違和感を抱いていた。



 飛んでいる途中で、自分の意思とは関係なく方向転換されているような気がするのだ。

 何かがおかしい。

 思えば全てがおかしかった。



 以前魔物退治に協力してくれたのに、自分の命を狙っている。

 その点にも違和感を覚えているのは事実。

 だが、それよりももっと他にあるような気がする。



 そもそも銃声が何度も鳴っているのに、どうして騒ぎにならないのだ?


 それに人の気配が一切感じられない。

 まるで自分とミツキ、マキナ以外の人間しかいないようだ。



「もしかして・・・・」


 ユイは空に向かって光弾を放った。

 そこに存在するであろう『何か』に向かって_____。

 光弾は見事に着弾した。

 爆発共に、薄らと『何か』が浮かび上がる。


「結界・・・・・・」


 どうやら自分たちが気付かない間に、マキナの作った結界に閉じ込められたらしい。



「逃がさないってこと・・・・・・うわぁっ!?」


 ドローンの機関銃から放たれる弾丸の雨に襲撃されてしまう。

 避けるのは容易いが、動きに制限が掛かるため魔術を上手く発動できない。


「んっ・・・・・・このっ!」


 やけくそ気味に光弾を四発程発射するが、全て回避されてしまった。


「まずはこのドローンたちを何とかしないと・・・・」


 再度ドローンとの空中戦が開始された。



 それにしても驚くほど、攻撃が当たらない。

 まるでこちらの動きを予測しているようだ。

 恐らく、高性能のAIか何かが搭載されているのだろう。

 マキナもそれを専門としているようだし、強ちこの推測は正しいのかもしれない。

 だとしたら、相手が予測できないような攻撃をする必要がある。


「それなら・・・・」


 ユイは『未来観測』を発動した。

 瞬時に十秒先の可能性の未来を見た後、反撃を開始する。



 空中で急加速からの急停止。

 ドローンとのすれ違い様に、『瞬間転移』を発動。

 目の前にあったドローン軍団が一斉に姿を消失させた。

 これにより、転移した先でドローンが同士討ちをするという魂胆だ。

 だが、その読みは呆気なく外れてしまう。

 それぞれ別の場所に転移していたドローンが一斉にこちらに集まってきているのだ。

 見たところ、一機も落とせていない。

 これにより、ユイは無数の機関銃によりハチの巣になってしまった。






 それが十秒先の可能性の未来の話である。

 ユイはその間に、水魔法と瞬間転移の準備を行っていた。

 ドローンが発砲した瞬間に転移を行い、こちらにドローン軍団が一カ所に集まったところで水玉を弾けさせた。

 宙に散った水飛沫がドローンの装甲に降り掛かる。


「ここっ!」


 転移が完了したユイは、水の温度を急速に低下させた。



 すると、ドローンに付いた水滴が一気に凍りだした。

 本体へ、プロペラへ、内部へと侵食していく。

 これにより、全てのドローンが凍結し、機能を停止させた。

 鉄屑と化したそれらは、次々と地面に落下していく。



「よし、これであとは・・・・」


 この隔離された結界を創り出している魔具を見つけ出して、破壊するだけ。

 早速、魔具を探し出すために結界内を飛び回る。



 結界を張る際、魔具は境界線上に置くことで機能する。

 つまり、その箇所に目星をつけて探せば見つかるはずだ。

 ユイは急いで境界線付近で怪しい物がないか捜索した。

 一周。

 二周。

 三周・・・・・・。

 何度も回り続けて、目が回りそうになった。

 それでも目を血眼にして見つけようとした。

 だが、見つからない。

 もしかしたら、見えないところに設置しているかもしれない。

 だとしたら、探し出すのは非常に困難だろう。



「ミツキは大丈夫・・・・だよね?」


 飛び回っている間に何度か見掛けたが、ミツキとマキナはどちらも引けを取らないような戦闘を繰り広げていた。

 経験の浅いユイでも、二人の戦い方には無駄がないように見えた。

 手数ならマキナの方が上手だが、それでもミツキは負けていなかった。

 どちらが勝ってもおかしくない状況だった。

 だからこそ、速く逃走経路を確保しなければならない。

 だが、打つ手がないのだ。



 瞬間転移も最初の方で試したが全く効果はなかった。

 物理的に結界を破壊しようとしても、ビクともしない。


「どうしたらいいの?」


 諦めかけたその時だった。



 突如、空に黒い渦を巻いた曇天雲が出現したのだ。

 ゴロゴロと鳴らし、今にも雷が落ちてきそうである。


「あれって確か・・・・・・」


 思い出す前に、雲から落雷が発生した。

 バチバチと二本の稲妻が地面に突き刺し、残りの数本が上空を駆け巡る。

 結界を薄らと浮かび上がらせると、細い亀裂が入る。

 ユイはそれを見逃さなかった。



「もしかしてあそこからなら!」


 突破口を見つけ、迷わず飛んでいった。

 途中、大きな落雷が発生したが、気にせず亀裂の方へと向かう。

 複数の光弾を出現させた。


「これで!」


 ユイは光弾を一斉発射させた。

 放たれた無数の光弾は亀裂に集中攻撃を加える。

 着弾する度に、激しい爆発音が鳴り響く。

 すると、亀裂が徐々に広がっていく。

 光弾の数がなくなった時、複数のひびが入っており、そこから瞬く間にドーム状へと模っていった。

 一瞬の間の後、ガラスの破片と化し、結界は粉々に砕け散った。



 これにより一つの目的を達成したが、まだ最後に残っていることがある。

 それは合流と逃亡である。


「ミツキ」


 ユイは急いで彼のもとに向かった。



「ミツキ!」


 後ろ姿を確認したところで呼び掛ける。

 ミツキもこちらに気付いたようで顔を向けていた。

 ユイはすぐに瞬間転移の発動準備を行った。



 場所はどこでもいい。

 とにかく遠い所へ。


 そう念じながら、ミツキとの距離が目と鼻の先になったところで、視界が真っ白になった。

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