第二十九話 転校生はお嬢様で、ギャル
第二章スタートです!
この時、俺は重大なミスを犯してしまったことに気が付き絶望していた。
それはもう大分前から継続しており、もう後戻りが不可能な状況に陥っている。
その時は受け入れていたことだが、今はその逆で不都合に感じている。
だから、この状況は非常にまずい。
何としてでも打開しなければ、ゲームオーバーだ。
俺は周囲を見回しながら、解決策を見出そうとした。
この段階でいくつもの案は頭の中に浮かんでいる。
しかし、実行するところでどうしても足が竦んで動かないのだ。
これは、やばい・・・・・・。
机の上にうつ伏せになり、愕然としてしまった。
ダメだ!全然声掛けれねぇ!
入学式から三週間が経ち、友達作りに出遅れた俺である。
当初、友達作りをするつもりはなく、高校生活は一人で過ごすつもりだった。
自分のせいでまた誰かが傷付いてしまうかもしれない。
そんな恐怖心から人との関わりを避け、自分だけ痛みを背負うことで全てが救われると思い込んでいた。
自分の本心を無視して_____。
今となっては、愚かな考えだと思う。
しかし、蠍型の魔物の戦闘中、自身の存在を否定し続けていた俺をユイが肯定してくれたことで全てが変わった。
例え過去に過ちを犯してしまっても、やり直すことができる。
そして、失った人のために不幸になるのではなく、幸せにならなければいけないことを_____。
それがきっかけで俺は前に進む勇気を持つことができた。
その第一歩として、俺が今まで抱いていた『友達が欲しい』という願いを実現しようと考えたのだ。
だが_____。
まさかこうも上手くいかないとはなぁ・・・・・・。
俺は自身の奥手さに呆れ、深い溜息を吐いた。
人に話し掛けるだけで、ここまで苦労するなんて思いもしなかった。
ユイやツバサに話すのとは違い、変に意識してしまう。
なんて声を掛ければいいの?
どのタイミングで?
そもそも誰に?
てか、話し掛けていいの?
浮いたりしない?
そんな心配事が頭を過り、なかなか行動に移すことが出来ないのだ。
もしかしてこれ、もうとっくの昔に積んでるヤツ?
悪戦苦闘を一週間も続けているためか、心が折れそうになっている。
「おーい、お前ら席付け」
チャイムの音が鳴り、担任が教室の中に入ってきた。
あ、やべぇ、朝のホームルーム始まっちまったよ。
結局朝は誰にも話し掛けることが出来ずに終わってしまった。
今日もダメなのか、と諦めながら、教卓の方に視線を向ける。
担任は教卓の上に出席簿を置き、怠そうな口調で話し始める。
「えーと・・・・・・出席を取りたいところだが、その前に転入生を紹介する」
転入生?この時期に?
誰もがそう思ったことだろう。
俺も思った。
「入れ」
担任が言うと、廊下の向こうから一人の少女が教室の中に入ってきた。
ゆるめにパーマがかかった栗色の長髪をツインテールにして束ねている。
化粧に関しては濃くもなく薄くもなく、童顔と相まってか割と整った仕上がりになっている。
瞳の色はエメラルドのように透き通るように綺麗に見えた。
制服は見事に着崩れており、胸元のボタンが開いて谷間が露わになっている。
少女は徐にチョークを手に取り、黒板に文字を書き始めた。
まあよく見る光景だな。
なんて感心していると、少女はチョークを置き、再度こちらに向き直った瞬間だった。
「どうもどうも初めまして、早乙女エリです!知っての通り、あたし早乙女グループの令嬢です!まあ、この格好じゃ実感わかないかもだけど、フレンドリーに接してくれるとカンシャカンゲキって感じで、シクヨロ!」
いやよく喋るなオイ!
満面の笑みで答える彼女の姿は、俺から見ても活発で良い子に見えた。
多分こういう子が、友達が多い部類の人なのかもしれない。
自分もあれだけ堂々と振舞えたらなぁ。
そんなことを思っていながら、エリと名乗る少女は座っている俺の横を通り過ぎようとしていた。
「以後お見知りおきを、なんてね」
「え?」
声がしたので振り返ってみる。
何か言われたような気がしたからだ。
しかし、目に映ったのはエリの後ろ姿だけ。
ちょうど今、空いている席に座ったところだ。
「気のせいだよ、な・・・・?」
どこかで聞いたことのある台詞に違和感を覚えたが、何事もなく午前の授業を受けた。
因みにその間にあった休み時間でも、俺は誰一人として声を掛けることができなかった。
如何でしたか?
やっと投稿できたので、少しホッとしています。