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第九十五話 新たな幕開け

第四章、最終話です!

エピローグ、というか今回のオチみたいな感じです。

 梅雨時期は雨が降ってジメジメして憂鬱な気分になる。

 だが、それから解放されると真っ青な晴天が広がり、気分が清々しくなる。

 今日は気持ちのいい朝____なんて家を出るまではそう思っていた。

 実際外出すると、熱気が全身を襲い、強烈な日差しが肌を容赦なく焼く。

 まるで砂漠のど真ん中にいる気分だ。

 だから、学生は学校という名のオアシスを求めてやってくる。



 俺が通っている学校には、教室ごとにエアコン設備が設置されている。

 だから、今教室は冷房の効いた快適な空間となっている。


「「「涼しい~」」」


 ユイ、カオル、マルコは、手持ち扇風機のファンに煽られながら呟いていた。

 こう見ると、本当に仲良し三人組って感じがする。

 まあ実際そうだけど。


「放課後さ、アイス食べに行かない?」

「おお、いいね」

「わたしも食べたい」


 カオルが提案すると、二人は快く承諾した。


「ミツキも一緒に行こ」


 そして、ユイが俺を誘ってくれた。


「いいぞ」


 当然断る気はこれっぽっちもない。



 なんというか、平和な一日だな。

 何も面倒事が一切なく、友達と平凡な会話をする。

 そんな日がいつまでも続けばいいのにな、と思った。



 ____が、嵐は突然やってきた。



 向こうの方から引き戸を開く音が聞こえた。

 見ると、小柄な少女が立っている。

 マキナだ。

 教室に入るや否や、早足でこちらに歩いてきた。

 そして、ユイの目の前に仁王立ちになる。

 その表情は真剣で、ただ事ではない雰囲気を出していた。


「な、何?」


 当然、ユイは予想もしていない出来事に狼狽える。

 教室内にいる人たちも、何事かといわんばかりに注目を集めていた。

 俺も状況が読めていないため、警戒しながらその様子を見ることにした。



 教室内に沈黙と緊張が走る。

 いったい何が起こるのだろうか。

 しばらくして、マキナが口を開いた。



「おはよう!」



 そして、再び沈黙が走った。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?


 多分、全員そういう反応になっただろう。

 俺もそうだ。

 だが気付いていないのか、マキナは更に言葉を続けた。


「今日の放課後、近くにあるアイスクリーム屋でアイスを食べないか?そこのお勧めは、夏みかんと夏メロンのトッピングらしい。返事はチャットで送ってくれ」


 「それじゃ」と言うと、そのまま教室から出て行ってしまった。



 三度沈黙が走る。

 しばらくして、周囲からざわざわと話し声が聞こえてくるようになった。

 所々で「今の何だったんだろう?」と話しているのが聞こえる。

 俺も同じ気持ちだ。


「えー・・・・・・と、取り敢えず一名追加ってことで、いい?」


 マルコが問い掛けると、二人は頷いた。


「あー・・・・・・と、多分あいつ友達も連れてくるんじゃねぇかな?だから六人だと思うぞ」

「そう、なの?」

「おう」


 なんとも気まずさの残る会話だ。

 まあ、これもある意味では平和なのかもしれない。



 そして、放課後。

 俺たちは近くのアイスクリーム屋に行った。

 予想通り、マキナは友達であるコハナも誘っており、結果的に六人になった。

 今、近くのフードコートでテーブルを囲い、注文したアイスを食べながら談笑している。



「このみかんアイスおいしい~っ」


 ユイはマキナに勧められた夏みかんと夏メロンのトッピングアイスを口にする。

 本当に美味しそうに笑顔で食べるから、見ていて気分が良いな。


「ああそうだろ。ボクも前食べた時美味しかったから、是非食べて欲しいと思ってね」


 隣に座るマキナは得意げに答える。

 ユイと同じものを食べている。

 この前までは顔を合わせるだけで逃げていたのに、今ではべったりだ。

 まあ、俺の時もそうだったし、特に驚くこともないけど。



「へぇ~、コハナちゃんって本を読むのが趣味なんだね」

「博識って感じ~」


 カオルとマルコはコハナに話し掛けている。

 二人はそれぞれ、ブルーベリーとチョコレート、いちごとバニラのトッピングアイスを食べている。


「まあ、ライトノベルだけどね。あ、今お勧めの本紹介してもいい?」


 コハナは手の平を重ねながら、嬉しそうに話している。

 手元を見ると空になった紙カップがあるが、抹茶と小豆のアイスが入っていた。

 なかなか渋いチョイスである。



 それにしても、まさかこのメンバーでアイスを食べる日が来るとは想像もしてなかった。


「てかさ、光剣寺君それ、おいしいの?」


 カオルが小馬鹿にするような調子で、食べているアイスを指差してきた。

 俺が注文したのは、チョコミントとコーヒーのアイスである。


「チョコミントって歯磨き粉みたいな味するって聞くからさぁ。ホントにおいしいのかな~て」

「いや美味いと思ってるからこうやって食べているからな。大体歯磨き粉みたいな味っていうけど、そうでもねぇから。俺の場合は」


 こればかりは人によるとしか言いようがないが。


「ふ~ん、まあいらないけどね」


 そう言って、カオルは自分のアイスを食べた。


「そうかよ」


 俺も自分のアイスを食べる。

 爽やかな風味が口の中に広がって美味しい。



「んっ」


 アイスの味を堪能していると、ユイの声がしたので顔を向けた。


「大丈夫か?」


 心配になり、咄嗟に声を掛ける。


「ん、大丈夫大丈夫。ちょっとアイスが沁みただけだから」


 ユイは苦笑いを浮かべて答えた。


「・・・・・・そうか」


 俺は安心すると、肩の力が抜けて背凭れに寄り掛かった。



 数日前、謎のフードの魔術師と交戦をした時、ユイは重傷を負った。

 『ナイチンゲール』の魔道具の力で、回復して一命は取り留めたものの、やはり心配だった。

 そして、魔道具は現在も起動し続けている。

 もしかすると、ユイの身体はまだ治り切っていないのかもしれない。

 だから、エリとも話をつけて、当分の間預かっておくことになった。

 フードの魔術師が襲ってくることも警戒して、基本俺と一緒に行動するようにしている。

 今もその一環である。



「ねぇミツキ、それ食べてもいいかな?」

「え?」


 突然、ユイにそんなことを言われた。

 俺はユイの顔と自分のアイスを見比べると、手に持っている紙カップを差し出した。


「ありがとう」


 ニコリと微笑んで、チョコミントアイスをスプーンで掬うと、そのまま口に入れた。

 顔を歪め、視線をあちらこちらへと向けてく。

 そして口で押えながら感想を述べた。


「なんというか・・・・・・歯磨き粉みたいな味がする」


 どうやら口に合わなかったらしい。

 そんなユイの反応を見て、俺や周りの連中は笑った。



 その後、気が済むまでアイスを食べながら話した後解散した。

 俺とユイは帰路に向かって歩いている。

 冷房の効いた屋内にいたためか、外に出ると無性に暑く感じてしまう。

 空で燃えている夕日に焼かれている気分だ。

 俺は首に伝う汗をハンカチで拭った。



「あのさミツキ」


 隣を歩いているユイが話しかけてきた。


「コハナさんから聞いたんだけど・・・・・・」


 前置きをすると、俺の前に回り込んで立ち止まった。


「この前、ミツキ倒れたって本当?」


 ジト目で問い詰めてきた。


「え、ああ・・・・・・」


 俺は何か言い訳を考えようと頭を巡らせた。

 だが、その反応が肯定を指していることに気付いていない。


「やっぱり無茶してたのね。あれだけ散々言ってたのに・・・・・・」


 呆れた様子のユイ。

 次の瞬間、真剣な表情で人差し指を立てて言葉を続けた。


「ミツキ、ちゃんと休んで」


 とうとう忠告から命令へとなってしまった。



「休んでって・・・・・・お前、フードの魔術師に狙われているかもしれないんだぞ?」


 だがこちらにだって言い分はある。

 襲撃に遭った時、一緒に戦ってくれる奴はどうするのだろうか。


「ちゃんとエリさんに返すわよ。そうすれば狙われることはないでしょ?」


 随分と短絡的な考えだ。

 でも、俺は知っている。

 一度やると強く決めてしまったユイは、何が何でも曲げようとはしない。

 真っ直ぐ自分の意思を押し通そうとする。

 だから何を言っても無駄であることも理解していた。



「一応何かあった時に戦えないなんてことにはならないように、魔道具は没収しないでおくから。でも、それ以外はちゃんと休んでよ。エリさんにはわたしから伝えておくから」


 そう言うと、ユイは振り返り歩き出した。

 なんだか前にも、帰り際に説教されたような気がするな。



 人何去ってまた人何、なんて前にエリがそんなことを言っていたが、今後起こる出来事も全てそうなってくるような気がする。

 願わくば、誰も傷つかないで済むようなことであってほしい。

 俺は溜息をつくと、ユイの後を追った。

如何だったでしょうか?

因みに自分はチョコミントアイスは結構好きです!


次回からは第五章がスタートします!

お楽しみに!

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