溺れる人
世の中、酒や薬や女と溺れて死ぬ人が多い。今日もそれを求めて生きる人も、死んでいった人もいる。
一体、何のための人生だ。
そういう私も同じだ。大切な人を失い、受け入れられずにいた。死にたいと毎日のように自分を殺そうとする。
でも、人生を終えることは出来なかった。
死のうとするたび思い出す。私がいなくなれば、私は彼女の夢も願いも思いも現実に残すことはできない。
まるで呪いのようにつきまとう。
ふと幻影を見る。彼女が語りかける。いないはずなのに目の前にいる。そんな日々が続いた。
私は現実にいるかのように振る舞う。
共に向こうを見て、歩もうとする。だが、私は一人だけ。君の願いを優先するあまり、現実には誰もいなくなった。
一人だけ、ここにいるじゃないか。
そうやって、彼女に溺れていく。元々幸せになろうだなんて思ってはいない。ただ、隣にいて欲しいだけなんだ。
壊れてしまったら、後戻りできない。
ただひたすらに沈んでいく。現実か夢かはもう分からない。もう、このまま勝手に人生が終わればいいや。
失うだけでここまで弱くなるんだ。
彼女は語りかける。握った手を離してもいいんだと言う。私を忘れてもいいのだと言う。
どうしても手放すことができなかった。
忘れられないのなら、することは一つだけ。私が彼女の願った道を進むのだ。本当に本当にもう一度だけでいいから、会いたい。
もう、一生思い続けて死ぬ。
私は海の底まで辿り着けるのだろうか。溺れたらそれはそれでいいや。きっと、この先、良いことは何一つとしてないのだ。
それでいい。
一人、孤独に死んでいく。彼女の理想を追い求めるだけの人生。待ち望んだ未来は私には訪れない。
もういいんだ。
今日も夢か現実か分からず、進む。彼女に、彼女の理想に溺れ死ぬのもいいか。今は都合のいいように振る舞うレプリカの彼女。