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雑貨屋売買日誌  作者: 毛ムチ
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雑貨屋売買日誌9

私は逃げることしかできないとは言ったものの考えようが逆立ちしようがそれしか私には能がない。

となればとことん逃げてやろう。


これから王国軍隊、魔王軍の第二次大戦が始まろうとしている。しかも、魔王には何処かの馬鹿野郎が転生しているためどんな作戦を立ててくるか想像ができない。

そこで私はこの大陸から抜け出そうと思う。

ゲルク達も一緒に。


しかしその為には足が必要だ。今までは店を馬に引かせて移動してきたが海を渡るには船がいる。しかも馬と店を丸ごと乗せられるほどの大きな船が。


ハロルド「何処かあてが有ればいいのですが。」


ゲルク「………そういえば魔王軍の所有する海に面する土地にはこの国の占領を前提とした戦力増強の為の船が何隻か置いてあった筈です。それならこの店と馬を余裕で運べます。」


ハロルド「それまた都合のいい展開だこと。虎穴に入らずんば虎子を得ずということですか。」


ゲルク「運良く今は魔王城に戦力が集中しているため警備も手薄でしょう。見張りレベルなら俺達4人で十分です。」



数日後


魔王城に向け城から大規模な軍が移動を開始した。

この中にこのゲームの主人公がいるのだろう。

私達はそれに紛れる形で王国を後にした。


多分しばらくは戻らないだろう。

しかし、私には不安は無かった。むしろ楽しみだった。今までは王国と北キイームの間を行き来していただけだったがこれからは世界を股にかけることになりそうだ。


ゲルク(………楽しみだ。山からほとんど出たことのない俺達がどこまで世界に通用する実力を持っているのか…)


メル(素敵な出会いはあるかしら?)


カルビ(新しい食事…)


ハール(人間がいなければいいな。)


北キイーム支配下の港


見張り「敵襲だぁーーー!」


そこら中に鐘の音が響く。手薄とは言えどやはり見張りの目をくぐり抜けるのは不可能だろう。


ゲルク「店長さん!ここは俺が殺ります!!あなたは3人と船を手に入れてください!」


ハロルド「ご武運を!」


そうして私と他の3人はゲルク達と一旦別行動をすることにした。


[こっからゲルク目線]


「ご武運を」とは言われたが運は要らない。実力行使だ。


店長さんはメルとカルビとハールで十分護れる。

後は追手が来ないようここを制圧する。

あの時のように。



3年前魔王城


ゲルク「ハール!カルビ!檻を全部ぶっ壊してやれ!」


メル「アナタもバカね。本当にこの数の敵を私とアナタで片付ける気?」


ゲルク「作戦は説明したろ。俺達ならできるって。」


メル「はぁ。その根拠のない自信、私は好きよ。

他の汚い大人と違ってね。」


ゲルク「話はいいから。殺るぞ!」



現在


前から10人、右から3人、左から5人!

俺はまず左からくる5人を切り捨てた。

そこまで強くない。

次に振り向いて三人を串刺しにした。

刺さった剣を踏み台にしてジャンプし攻撃をかわす。残りの10人は殴って済ませる。


これくらいなら息を乱すこともなくできる。

問題は残りだ。

剣を取って周りを見るとザッと50人はいた。

3年ぶりだ。この数を相手にするのは。

あの時は「まだ自分には生きる目的がある。まだ行きたい。」その一心で剣を振っていた。


今も同じだ!なんとしてでも店長を助ける。その為には俺が生きなければ。怯んではいけない。

それが勇者たる者。背中の傷は剣士の恥。

もはや誰にも山賊なんて呼ばせない。


ゲルク「俺は勇者ゲルクだ!」


ふっと、意識が遠のく。眠りにつくような感覚だ。

気がつけば周りは魔王軍兵士の死体で埋め尽くされていた。


まただ。俺は昔から強く相手を倒したいと意識するほど意識が遠のく。そして気がつけば周りの敵は倒れている。

本当に俺は呪われた子なのだろうか…


いや、そんなこと考える時間はない。

すぐに店長さん達と合流しないt……殺気!?

すぐに体を逸らすと脇腹ギリギリを鉤爪のついた拳が通った。振り返ると長身で細身、猫背の男がいた。今までの奴らとはまるで別物。


セルシウス「何やら妙な気配を感じると思ってきてみれば……久しぶりではないか?」

こいつ、魔王城から数分できたのか!?数十kmは離れているぞ!?

それより、こいつは不味すぎる……

3年前に一度対峙したが結局倒せず逃げ切った。

逃げ切ることさえやっとだった。こいつを彼らに会わせる訳にはいかない。


セルシウス「ふんっ…相変わらず黙りこくったままか。遺言も遺せず死ぬとは哀れな奴よのぉ…」


ゲルク「ゆ、遺言は、い、い、要らない。」


セルシウス「やっと話したと思えば下らんことを。死ね。」


再び奴の拳が飛んでくる。剣で受け流…感触がない……!


ゲルク「………っ!?」


何が起こったのか分からなかった。何故俺が血を吐いている?

視線を下にやった頃には奴の拳が腹を貫通していた。残像だったか!


セルシウス「ちっ…急所を外した。しばらく戦いとはご無沙汰だったからなぁ!」


拳が引き抜かれ俺は膝から崩れ落ちた。

情けないな。雑魚相手に粋がって、肝心な時にこの様だ。


セルシウス「おいおい…もうダウンか。せめて15秒は持ってくれよお…」


殺される。ここまでか。


奴の拳が振り下ろされる。


なんで諦めムードになっているんだ俺は!

さっきと言っていることが逆じゃねーか!


剣を突き立て奴の拳を貫く。


セルシウス「ククク…やはりこうでないとな」


奴の傷が回復する。これも魔物の力。


セルシウス「よおし…追加で3秒だ…今度こそ遺言を言っておけよ」


ゲルク「言っただろう。遺言はいらない!」


拳が飛んでくる。が、今度は見える!避けようとはするが体がついてこない。右肩に直撃したが痛みを感じない。これがアドレナリンか!


傷を無視して相手の懐へ飛び込む。

完璧に心臓を貫いてやる。


しかしそう上手くはいかずそこに相手の姿は無い。


セルシウス「俺にスピードで勝てると思ったのか?」

背後に回り込まれた。今度こそ終わりだ。

しかし、時間は十分に取った。


その時セルシウスの体は俺を素通りしぶっ飛んでいった。



[こっからハロルド視点]

3分前


ハロルド「しかし、彼一人で大丈夫でしょうか。」


ハール「彼のことは気にしなくてもいいよ。」


メル「私達よりずっと戦闘センスがあるのよ!」


カルビ「ステーキ(素敵)」


確かにそうだ。彼は国王直々に騎士団へ抜擢される程の逸材。見張り数十人に遅れをとるはずないのだ。


今は自分の役目を果たそう。


周りの敵をメル、カルビ、ハールが蹴散らす。


意外とあっさり船が見つかった。しかも、新品。


ここで問題発生。新品故にまだ陸の上。どう運ぶか。そう考えているうちにメルが喋りだす。


メル「カルビ、お願い。」


カルビ「…カルビ…」


なんてこった!パンナコッタ!

たった1人で巨大な船を担ぎ上げた。

彼らはゲルクのことを持ち上げていたがそれでも只者ではないな。


あっという間に海に浮かべると私達はすぐに乗り込みゲルクを探した。


メル「!!!いた!ゲルク!」


彼女が指さした方を見るとゲルクが倒れていた。なんて血の量だ…

そのそばにはセルシウスがいた。


ハロルド「は、早く。この船には大砲が積んであるはず!援護しないと!」


ハール「え!?あ、ああ!わかった!」


私は引き続きその様子を見守っている。

ゲルクが立ち上がった。お腹には向こうが見えるほどの大きな穴が空いている!不味すぎる!


ハール「店長さん!大砲用意できたよ!早く打たないと!」


ハロルド「しかし、これでは彼にも当たってしまう!」


メル「ゲルク………!」


くそ!2人が重なっていて無闇に打てない!

しかし、そこに動きがあった。


ハロルド「打てぇ!!」


どんな動きか知ったことではない。とにかく2人が重なっていなければいいのだ。


砲弾と同時にメルが飛び出す。


セルシウスが吹っ飛んだ直後にメルはゲルクを抱き抱え船の上に戻ってきた。


メル「あ、ああ!ゲルク!!」

今にも泣き出しそうだ。


ハール「下がって!!!」

ハールが全員をゲルクから引き離すと何かを唱え始めた。


ハール「¥+%*<\○♪<〆^^*」


何を言っているか分からないが唱え終わると彼の傷は嘘のように治っていた。


ゲルク「あ、あれ?俺は確か…」


メル「ゲルク……良かったぁ〜〜!!」


メルがゲルクに抱きつく。

あれ、2人って結構お似合い?


まあとにかく、窮地は脱したのだ。後は新しい地を目指して進むのみ。

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