雑貨屋売買日誌24
魔王の体力もかなりのもので走ってから数分もしないうちに見失ってしまった。
もう足が限界だ。オアシスで戻ってくるまで待っていよう。
[こっから魔王目線]
私は走った。先に黒い塊が見える。ゾマだ。
この砂漠で傭兵を失うのはまずい。
それに彼女は私が初めて会った女であり、初めて惚れた女でもある。
このまま嫌われるのも嫌だという魔王特有の独占欲が私を動かす。
砂埃を上げながらゾマの前に回り込む。
魔王「追いついたぞ!」
ゾマ「なに……!」
彼女は何故か怒っている。
魔王「こんな危険地帯で傭兵を失うのはまずかろう。」
ゾマ「嘘だ……!」
魔王「嘘って…」
ゾマ「お前は……女として見た……!傭兵として見ていない……!」
魔王「そんなことはない!というよりどちらもだ!
私は貴様を戦士としても、女としても見ている!」
ゾマ「じゃあいい…!!他の奴を…雇え!女なんて傭兵には不要な要素だろうからな!!」
魔王「…………」
ゾマ「ほら見ろ!何も言い返せない!」
魔王「何……何故そんなに女であることを嫌がる!?貴様…じゃない…そなたは美しいのに!それを誇りには思わんのか!」
ゾマ「みんなそう言う!でも結局は女としてしか見てくれない!闘えるのに……!」
感情が昂ったのか彼女は泣き出してしまった。
何故泣いたのかは分からない…
魔王「おい、やめろ、泣くんじゃない!下手に水分を消耗するなんて…!」
ゾマ「じゃあ……どっか行って……」
魔王「………」
俯く彼女の顔を掴み私の方を向ける。
未だに涙を流し続けている。
何の涙なのだ?
魔王「私を見ろ!泣いているのでは話ができない!
お前は傭兵だろう!女という理由で傭兵を辞めるのか!?私を魔物から助けたあれはなんだ!あれは女男関係ない!立派な戦士にしかできない行為だ!
魔王の命を救ったのだからな!だから何としてでも連れて行く!」
ゾマ「………!!」
必死で振り解こうする彼女だが泣いているせいか力が入っていない。
魔王「とにかく女だろうが男だろうが傭兵だろうが農民だろうが連れて行くからな!?」
私は彼女を抱えてハロルドの方へ走り出した。
彼女はじたばたしていたが何故だか異様に彼女を抱きしめる力が入る。
一歩強く踏み込むと一気に数十m飛び上がった。
恐らく[きっかけ]が発動したのだろう。
流石の彼女もこんな高く飛び上がるのは初めてらしく叫びを上げている。
心なしかちょっと楽しんでいるな。
そうして大ジャンプをしながらハロルドのところまで戻ってきた。
ハロルドは木陰で爆睡していた。
初めての砂漠で相当体力を消耗したのだろう。
しかも彼は人間の中では中年だ。厳しいのは当たり前だろう。
さっきから腹に何かが当たっていると思えば彼女が殴り付けている。大して痛くはないが彼女なりに力を入れているのだろう。
ゾマ「魔王って誘拐もするんだね……!」
睨めつけてくる。
魔王「独占欲が強いんでな。この戦いが終わるまで帰れないと思え。」
ゾマ「どうせ……このままあの化け物に…支配されるのはやだからね……奴等を倒すまでは一緒にいてやるけど……終わったら殺す……」
この目は本気で殺す目だな。私の部下にも暴走したらこんな目をする。
魔王「さて、私も一寝入りしておこう。」
彼女を抱えたまま寝転ぶ。
この大きさは抱き枕に丁度いいな。
ゾマ「な……!寝た……!」
[こっからハロルド目線]
目を開けると視界の左下で魔王が寝ている。
その腕の中に…ゾマ!?
しかも彼女はナイフを魔王の心臓に向けて突き刺そうとしていた。
ハロルド「……止めるんだ!」
言ったと同時に魔王がナイフを素手で受け止めた。
魔王「殺せると思ったか……?」
魔王は手の出血にも構わずナイフを握り潰した。[きっかけ]が発動している。何が[きっかけ]かは分からないが。魔王の殺気が尋常ではない。初めて会った時のようだ。
ゾマ「ひっ………や……!」
ゾマが腕を振り解き逃げようとしているが魔王は抱きしめてた腕を緩める気はないらしい。
魔王「この一件が終わるまで……逃がさんと言ったよなぁ……?」
ゾマはもう涙目だ。
ハロルド「魔王様!相手はじょ……人間ですよ!」
そうだった彼女は女性として扱われるのが苦手だったんだ。まるでメルと真逆だな。
魔王「安心しろ…殺したりしない……ただ気に入ったも物を離さないのが魔王だ……」
ハロルド「そうですか……離しなさい!早く出発しますよ!?」
とにかく先を急がないとこの2人の修羅場は見ていて結構怖い。とっとと偽魔王を倒そう。




