雑貨屋売買日誌19
両腕を失った魔王。
剣を構えて追撃する元魔王。
壁にもたれてながら傍観する私。
彼等は転生したというより入れ替わっているのか。
しかし、何故元魔王がこちらに来れた?
あの剣は何処から?
考えている内に闘いの火種がこちらにも来た。
闘いは一方的だ。元魔王は次々と魔王に切り傷をつけていく。魔王はどうしようもなく口から四方八方に攻撃魔法を放っている。
魔王「クソがァァァ!!」
元魔王「………」
流石は元魔王といったところか、あの雨霰の用に迫る魔法を避けていく。剣を突き立て目を潰す。
魔王「目が…目がぁーー!」
随分と滑稽に崩れ落ちていく魔王。
見下す様に立たずむ元魔王。
この勝負、僅か十数秒。
元魔王「私の身体を持っておきながら……無様な者だ…」
ハロルド「貴方の身体ですよ?良いのですか…?」
ヨロヨロと元魔王に歩み寄り聞いてみる。
元魔王「良いのだ…どうせ第三形態ダサいし…」
ハロルド「そもそも何故この世界に…その剣は…一体何が……」
今までは魔王を倒すという事で頭がいっぱいだったが疑問がどんどん湧いてきた。
元魔王「うむ……一つずつ答えていこう。
まず、朝眠りから覚めたと思うとそこは知らぬ世界の病院だった。力を使えないどころか重症を負った少年として目覚めたのだ。
次にどうすれば此方へ戻ってこれるか考えた。
とにかく、監視の目を擦り抜け外へ出てみたのだがトラックなる物に吹き飛ばされ気付けばここへ来ていたのだ。
この剣はその時手元に出た物だ。そして何故か怪我も全て回復しおった。」
なるほど。入れ替わりと異世界転移が連続で起きた訳か。
元魔王「それから、その病院でいろいろなことを知った。この身体の持ち主はニートという職も身内もいない悲しい奴だったらしい。
此方の世界に戻った後、奴が魔王として存在していると知った時は怒りが湧き上がってきたのだ。だからせめて奴の望んだ姿で成仏させてやろうと思ったのだ。」
なんだか、あっちでも大変だったそうだ。
ハロルド「って、それよりどうするんですか、これから。」
元魔王「どうするも、こうするもありのまま伝える。そして、この戦争を終わらせる。」
ハロルド「なるほど戦争を…ってあんた魔王でしょ!?そんなことしていいの!?」
元魔王「向こうの世界は平和だったぞ?まぁ人民は性根腐れも結構いたが……とにかくあの世界に負けない様に魔物も人間も楽しく暮らす為にもこれが最後の犠牲としたい!」
その瞬間、ドランフの騎士団が突撃してきた。
騎士団長「魔王!今日こそ貴様の首を……って貴様等何者だ!何故魔王が死んでいる!」
元魔王「故奴は私の偽物だ!私こそが本物の魔王だ!簡潔に言えば入れ替わっている!」
騎士団長「そんなこと信じられるか!仮にそうだとすれば貴様をこの場で殺す!違うならば勝手な行いをしたという事で裁判にかける!」
元魔王「本当だ!そしてこの戦争を終わらせる為にここに来たのだ!」
騎士団長「……2人とも連れて行け!」
そうすると騎士団員が私達に手錠をかけた。
私も元魔王も抵抗せずに連れて行かれた。
フリードとゲルク達は大丈夫なのだろうか?
[魔王城門前]
セルシウス「こいつ……!なんだ、この前とは桁違いだ!」
ゲルク「やっと3年前の決着がつくな!」
オルギア「くそ!俺でも3人相手は……!」
メル「よーし!追い詰めたわよ!」
ハール「やったね!」
カルビ「………」
騎士団員「伝令!!たった今、魔王の死亡が確認された!!今、怪しい者を2人捕らえた!全兵、撤退とのこと!」
オルギア「そんな……」
セルシウス「魔王…様が……」
ゲルク「この戦争も終わりだな!!」
メル「でも、怪しい者って……」
カルビ「ディナー…」
[魔王城付近 森]
ゲルラード「あらあら、あっけな〜い!」
フリード「くっ………まだまだ…!」
魔王軍兵「ゲルラード様!!ま、魔王様が…魔王城が……」
ゲルラード「!!すぐにいくわ!命拾いしたわね!僕ちゃん!」
騎士団員「人が倒れているぞ! ってフリード!何故此処に…気絶している!」
[ドランフ国王城]
国王「なるほどなるほど……それで我が国と和平交渉がしたいというわけじゃな?」
私達2人は国王の前に座らせられていた。ドルネウス騎士団と魔王軍幹部に見守られながら、私達の処分が決まる。
元魔王「そうだ!私は今まで部下達のことしか考えていなかった…その為の犠牲ならばいた仕方無いと…だが、そうではなかったと今になって…身体を失って気付いたのだ…!」
国王「うむ〜……本当に改心してくれたのならいいのだが……そなたが魔王なのかにわかに信じ難いのぉ……」
魔王「ならば……国王!貴様、背中に猫に引っ掻かれた跡があるだろう!その怪我は猫カフェで引っ掻かれたものだ。だから貴様は王国の猫カフェを全て普通のカフェにしたのだろう!」
国王「なっ……!それは魔王と私の家族以外は知らぬ筈!そなた、本当に魔王なのか!?」
なんで魔王がそんなこと知ってるんだ!?っていうか最近猫カフェ見なくなったと思ったらそんなショボい理由だったのかよ!
国王「よし!国民へ伝えろ!考えを改めて、勇気ある決断をした魔王のことを!ドランフ王国の兵も北キイームの兵も皆平等に勇敢だったと!そして魔王の解放を!」
騎士団「はっ!!」
急に周りがざわつき始めた。
今まで邪険にし合ってきた互いの国の兵は手を握り合い、抱き合っている者もいる。
外はざわつき出し、記者の声も聞こえる。
国王「それで、お前さんは……」
ハロルド「通りすがりの雑貨屋です。」
国王「あっそ…解放!」
その後魔王が話しかけてきた。
魔王「あの、雑貨屋よ。」
ハロルド「なんです?」
魔王「前に、貴様の店が気に入ったといったのだが、これからも行って良いか?」
ハロルド「お金払ってくれるんなら誰でも歓迎しますが…」
魔王「そうか!それはよかった!そこで、私は今貴様等と良好な関係となったわけなのだが、その…私もいわゆる[みんなで行こう!!]要員にならないか心配なのだが……」
ハロルド「まぁ……そりゃあ…私が主役なわけですから…そうなってもいた仕方無いと…思いますけどねぇ…」
魔王「おーい!!この雑貨屋、実は違法な取引に手を染めて……ハロルド「ちょ…変な噂流すのやめて!」
魔王「ハッハッハ!魔王を怒らせると怖いのだぞ?」
ハロルド「すみませんでした……」
やっぱ好きになれねーこいつ!
数日後
あれから魔王は北キイームを改めて《北魔物連合共和国》としてボランティア活動や難民受け入れなどを積極的に行っている。
その魔王は魔物達から戦争を終わらせた英雄とされさらに部下が増えたらしい。更には今まで迷惑をかけた村などを周り、謝罪の意を示しているらしい。
もう、魔王って肩書きが必要ないと思う。
私の店はというと今まで通り普通の売れ行きだ。変わったと言えば少し魔物の数が増えたことだろう。
そんなある日。
メル「あ!やってる、やってる!」
ハール「はあぁー!なんかただいまって感じ!」
カルビ「…紅茶…」
ハロルド「なんだか久しぶりに会った気分ですね。ってあれ?ゲルクさんは?」
メル「ゲルクは……」
ハロルド「何かあったんですか!?」
ハール「いや、その…偽魔王と戦ってた店長さんを放って私縁にこだわってしまった自分には合わせる面がないって……」
ハロルド「あ、外から覗いてますね。丸見えだけど。」
笑顔で手招きすると飛んで入ってきた。
ゲルク「すいませんでした!店長さんの気も知らず自分勝手に暴れてしまって!」
ハロルド「そんなことないですよ!騎士団の人達の犠牲が出なかったのも貴方達が頑張ってだからですよ!こんな老人より大勢の命ですよ。」
ゲルク「うう……少し、照れますね。あ、それとこれからは今まで通りこの店の警備員として働かせて貰いますよ!」
ハロルド「ええ!?国王直属の精鋭班になるって聞いたのに!?」
ゲルク「蹴りました!」
メル「私達はこっちの方が楽でいいしね!」
ハール「知り合いが多い方がいいし!」
カルビ「食いっぱぐれない……」
とまあこんな感じで平和になった。




