辻拓也
「おはよう。」
「よー」
軽く挨拶をして、僕は自分の席に座る。そして、斜め後ろを見つめる。ここ一週間、冬休みが終わってから毎日続けていることだった。
「あいつ今日もこないんじゃね?」
隣の席の杉野がぶっきらぼうに言う。
僕の見ている席、榊麗也の席は今日も使われることはなかった。
俺、辻拓也はサッカー部に所属していて毎日のようにだらだら練習をしている。ちょうど今日はオフだったこともあって疑問点を解消しようと思っている。
「なぁ、すみれあの写真のことなんだけどさ。」
出来る限り落ち着いた声で言った。すみれに気づかれるわけにはいかないから。
「あの写真ってなに?」
「えっと……すみれと麗也がその。」
すると、すみれはバッと立ち上がって顔を赤らめていた。
「ちょっと来て!」
引っ張られてそのまま教室の外に出た。
「どうして知ってるの?」
すみれが聞いたことのない声で問いただしてきた。
「えっ、なんか知らない人に送られてきたんだけど。」
「それって、麗華ちゃん?」
「あぁ、そうだよ。」
「なんで?拓也に送るの……」
すみれはぶつぶつと独り言を言っていた。そして、すぐに、麗也くんの家に行こう。と言ってまた僕を引っ張った。
道中、麗華のことを教えてくれた。
まず、最初にすみれは麗也のことが好きだったことから始まる。この段階で俺は傷を負った。
けれど麗也はみんなにモテモテ、どうすればいいのかなって時に麗華に会ったらしい。麗華は麗也のことを知っていて、あの映画の原作者のことが好きだとすみれは知った。そして、映画に誘った。けれど、麗也はその時お姉さんが彼氏と歩いているのを見て、泣き崩れた。すみれはショックを受けて、混乱しているうちに、プリクラに誘ってキスしてしまったらしい。その時はハイになっていいて、麗也に気づかれないようにスマホに保存したけど、落ち着いた次の日は羞恥心で耐えられなくて休んで、麗華に相談した。そして、あの写真はその時、美伶に奪われたものだろう。と言っていた。
何のために?
この会話の後、さらに五分ほど歩いて、麗也の家に着いた。
すみれは勇足で中に入ってインターホンを押した。
ピンポーン
間の抜けた音が響く。
ガチャと音がして扉が開いた。
「どうも」
出迎えてくれたのは栞さんだった。
「あー麗也の友達かな?」
「そうです。麗也くんはいますか?」
「それがね、いないのよ。」
驚いた。麗也がいないってことにはもちろん。それ以上に栞さんが嬉しそうな表情をしていたからだった。
「じゃあどこにいるんですか?」
「多分、海外。」
開いた口が塞がらない。隣のすみれが寂しそうな顔をしているのは、見ていないことにした。
「急に、写真が送られてきたのよ。どうやって海外まで行ったのかは、父親に頼ったのかな。」
一度家の中に戻った後、一つの封筒を差し出してくれた。
送り主の欄には知らない国名が記されていた。
ただ、俺はそれを開けることはできなかった。開けたら麗也が本当にいなくなってしまう気がして、怖かった。
けれどすみれはその封筒を僕から奪い取って中の写真を見て、そして、泣いた。綺麗な涙だった。
「ありがとうございました。」
震える声でそう言った。
「あ、そうだ、麗華って子知ってる?」
びくっとして、振り返った。二人とも帰ろうとしていたのに自ずと、栞さんの方に寄って行った。
「その麗華って子はね、一昨日ぐらいにうちに来たんだけど、麗也が海外にいっちゃったって話をしたら目を輝かせていたの。多分あの子は麗也のことが好きなのね。頑張ってと伝えてください。と言って走り去って行っちゃったけど。声が震えてたから。」
「知らないです。」
すみれは即答していた。
直後、俺を引っ張って走り出した。
けれど走ったのは一分にも満たなかった。すみれは止まった。そして、声を上げて泣いた。
「麗華ちゃん優しすぎるよ。」
すみれはそんなことを言っていたように聞こえた。
僕は得体の知れない敗北感に襲われている体に鞭打ってすみれの手を取った。
「行こう。」
すみれは涙を拭って付いてきてくれた。
「俺じゃ頼りないかも知んないけど、いつでも頼ってくれていいから。」
くさいと思いながらも言わずにはいられなかった。
「……うん。」
俺とすみれは手を繋いで歩き出した。
こんばんは、上坂ふらりです。まず、ここまで読んでくださった方本当にありがとうございます。
今回の話は私が書きたいと思っていたものをそのまま形にしたようなものなので、好き嫌いが分かれるのではないでしょうか?文章も変ですしね……。
1000人いたら999人の人から嫌いって言われそうな作品だと私も思っています。
今回の話で私の処女作である「甘苦」は終わりです。もしよろしければ評価をしていただけると嬉しいです。
それではまた、次回作で会いましょう。




