佐々木美伶2
気がつくとショッピングモールにつた。すみれと遊んだあの場所だ。
時間的には二十四日というのもあって、カップルが大勢いるのは間違いなかった。
僕は自転車を降りて、ショッピングモールに入って行った。
何処も彼処も人でいっぱいだった。この時期は殆どの高校が冬休みに入っていて、知り合いの顔もぽつぽつあった。そんな中、白黒の集合写真の中に一人だけ色がついているようにある人物が僕の目に飛び込んできた。そこはフードコートで多くの人がいて、絶えず動きがある中で、その顔を見つけた。ずっとスマホを見ていたが、急にその、首が隠れる長い髪を翻して、こちらに視線を移した。
彼女は間違いなく 美伶だった。
美伶は驚いた顔をした後、スッと立ち上がってこちらに寄ってきた。
「久しぶりだね。」
美伶の顔が何処か寂しそうなのは、僕が学校に行っていないの知っているからなのだろう。
「久しぶり。」
本当に久しぶりでだった。ちょっと前は毎日のように会っていたのに、学校ですれ違うことすらなかった。
「もうクリスマスなんだね。家にいると感覚がおかしくなるよ。」
「本当だよね、もう今年も終わりなんだよ。来年は受験もあるし、クリスマスなんて言ってられないね。」
沈黙、そもそも、なんで美伶は僕の方に来たんだろう。手を振るだけでもよかったのに。
「麗也、なんか変わったね。」
声色が急に変わった。その声は誰かと似ていた。
「さっき麗也と会った時も誰だかわかんなかったもん。」
僕が変わった?
「自分じゃわからないと思うけど、なんか、大人になった感じかな。」
「大人になった?」
つい口から溢れていた。
「うん、私さ、麗也と別れた時何か足りないんだよねって言ったよね。やっとそれがわかったんだ。」
すると美伶は僕をフードコートの席に促した。
「麗也くんにはね、余裕がなかったんだよ。」
「余裕?」
「そう、自分じゃわからないと思うけどね。常に求めている気がするんだよ。付き合う前はさ優しかったのに、いざ付き合うとなんかほっとかれるんだよね。」
「そう言われるとそうかもしれない。でもそれが『余裕がない』に繋がるの?」
「お姉さんいるよね、お姉さんのこと……好き?」
「まぁ……好きではあるよ。」
「それなんだよ、大抵の人は好きって言えないんだよ。恥ずかしくて、それでも言えるっていうのはね、麗也が一人が嫌なだけだよ。」
一人が嫌なだけ。
「付き合う前はいつ離れるかわからないけど付き合ったらそう簡単に離れられないもんね。もちろん例外はあるけど。」
そう言った後美伶のスマホがなった。彼氏かららしい。今のところ良好な関係を築いているらしい。
美伶を見送ると、その背中は僕と比べ物にならないくらい大きかった。
あてもなくショッピングモールを歩きながら美伶の言っていたことを反芻して、全てが腑に落ちた。やっぱり僕は誰かと一緒にいたかっただけだったんだ。そして、僕の中心にいたのは栞だった。絶対に僕から離れないと確信していたから。その外を回っていたのは、美伶をはじめとする、彼女達だった。つまり、僕は女性に依存していただけなんだ。ただ、それだけじゃ満足できない僕は美伶が翔と付き合ったのを自分のおかげだと思った。思い込んだ。それが間違いだったんだ。
僕はショッピングモールを出て、自転車に跨る。道を右折する時、カーブミラーに笑っている僕を見た。
やっと、本当の自分の姿を見れた気がする。
僕の方こそ滑稽だった。どこぞやのハーレム漫画の主人公と勘違いして、人の甘い部分に全体重をかけていた。でも僕は変わった。きっかけは家にいる時の栞の不在を心から喜んだことだと思う。中心を失った僕は壊れた。僕は終わった。でもそれは新しい僕の始まりなんだ。誰かに依存するんじゃなくて、自分の足で立って。自分の存在意義を探すんじゃなくて、作り出していくんだ。綺麗事と言う人もいるかもしれない。それでもいいんだ。完璧な人間なんて、いるわけないんだから。
僕は自転車を駐めた。ここ、全てが始まった
『しゃす』に。
中に入って、入口から一番遠い席について、ウエイターを呼ぶ。僕はココアを頼んだ。僕からの門出だ。外からは眩しい日光が差し込んでいた。




