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甘苦  作者: 上坂ふらり
14/22

神田麗華3

「麗也くんはどんな人がタイプなの?」

 沈黙を破ったのは麗華だった。

「どういうこと?」

「麗也くんの付き合っていた人って全然タイプが違うからさ、どんな人が本当に好きなのか気になって……これでも一応彼女だし。」 

 振り返ると口調を変えた麗華は少し頬を染めていた。

 好きなタイプなんてそりゃあ……

 二の句が継げなかった。 

返答に困っていると、ふぅんと生返事をして視線を下して、スマホをいじり始めた。

 間も無くして『しゃす』についた。店に入るとあの鐘の音が、また、胸に響いた。

 店は空いていてどこにでも座れそうだった。

 麗華はおもむろにウエイターに近づいて何かをささやき、そのあとカウンターの中に通してくれた。そこには生活感あふれる部屋があった。

 部屋は四つ椅子があって四角い机を囲むように置かれている。奥にもう一つのドアと食器棚、天井には傘のある照明がぶら下がっていた。いわゆる—

「ここ、叔父の部屋だから」

 僕が質問する前に麗華は答えた。しかし、余計に疑問が生まれてきた。

「叔父の部屋って、てことは—」

「この店は私の叔父の店だよ。……と言っても叔父はほとんど仕事しないけどね。」

 そう言うと僕に座るように促してから乱暴に椅子に座った。

何か飲む?とぶっきらぼうに聞かれた僕はコーヒーを頼んだ。

「ねぇねぇ、もう一ヶ月ないんだよ。」

「何が?」

「わかんないの⁉︎」

「ごめん、本当にわかんない。」

 露骨なため息の後クリスマスだよと答えてくれた。

 もうクリスマスか……来年は受験もあるし今年が高校生最後のクリスマスだよな。

 なんてことを考えると月日の流れの理不尽さを思ってしまった。

「今年のクリスマスはどうするの?」

 麗華が椅子の座る部分にすねを乗せて前屈みになっていた。

「麗華はどうしたいの?」

「……麗也と一緒にいたい」

「じゃあそうしよう。」

 少し俯きながら照れて答えた麗華は、その体勢もあいまって妹のように思えてきた。

 結局は麗華は僕のことが好きだったんだな、アプローチが特徴的だっただけで。

 カチャリとドアが開いた音がした。ウエイターだった。机に寄って飲み物を置いていった。一瞬、ウエイターの鋭い目が見えた気がした。

 運ばれてきたコーヒーを一口飲んだ後、麗華が静かに口を開いた。

「……すみれさんはどうするの?」

 コーヒーで暖かくなったはずの体が凍りつく。さっき拓也にも同じことを聞かれて、今度は麗華に聞かれた。偶然だとは考えられなかった。

「麗也くんさ土曜日すみれさんと遊んでいたよね?……まぁ別にいいんだけどさ。それでも麗也くんは美玲に振られたばっかりだったんだよね。振られてすぐになんで女の子と遊べるの?」

 麗華は静かに、それでいて強く言い放った。

 ただ、僕にはわからなかった。自分が何故女の子と遊べるかじゃなくて麗華の言っていることがわからなかった。

 なんで遊んだかなんてそりゃ誘われたからなのそれに—

「断る理由もない……から。」

 麗華がそう呟いた。寂しそうな顔で。

 麗華の言葉は、その通りだった。ただその寂しそうな顔は僕にそれを肯定するなといわんばかりだった。

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