今の世界について
コームから、この世界について様々な事を教わった。
天領と呼ばれる、俺の感覚だと天国に位置する場所に皇帝の居城が有り、一般的な領主は最終的にそこで過ごすことを目指す。
天領は創造主によって生み出され、そこからいくつかの次元が創造され、次元トンネルを通じ天領と連結した。
創造主は、世界の根底を作成した後、理由は不明だがこの世界から離れ、管理者という存在に天領から世界の管理をするよう引き継いだ。
管理者は、はじめこそまともに統治していたが、突如娯楽を求め世界の有り様を変更した。
地獄を作り、元々存在した精霊をいじり、悪魔として送り込み、様々な次元で悪さをさせ、その様子を見て楽しんだ。
「私モ、その際に悪魔として再創造された精霊なのですヨ。」
(悪魔で合ってた。いや、でも当人にとっては不本意な事みたいだし、悪魔っぽい事については、余り触れないほうがいいか。)
悪魔として扱われた上位の精霊種の内、自身に起きた理不尽な変化や、荒れていく世界を良しとしなかった勢力と、その呼びかけに呼応した生命種の連合で管理者を撃破し、協力者の代表が皇帝となり管理システムを継続した。
そこから3万年ほど帝国は継続しており、皇帝より管理システムの一部権限を譲渡された領主により、格差はあれどそれなりに平和な世界となっているようだ。
我が家の初代は、管理者撃破の協力者の一人で、天領から見たら辺境のこの地を治める事となった。
他者は天領から近い次元の領地を希望する事が多かったが、生まれた次元に戻るという望みに、初代皇帝が答えたという。
「天領に近いほド、そこから溢れる魔力の恩恵が大きいのでス。管理者との戦いにより各次元の地元の魔力はかなり消費されておりました為、苦難の続く治世が予想されましタ。しかし、生まれ故郷の復興の為のその勇気ある選択に惹かレ、私が補佐として名乗り出たのですヨ。」
いい話なんだけど。父にはきついような・・・
「その割に、ええっと、お父様でいいですかね、お父様には厳しいですね。」
「領主が阿呆であれバ、正すのも執事の務メ。そう考えております故。」
「ええと、気を付けます?」
「トーヤ様は大丈夫ですヨ。オホン、説明を続けまス。」
何を根拠に・・・?
基本的に領地の内政は選挙で選ばれた存在が行い、領主は直轄領のみ干渉する権限がある。
では領主は何をするのか。
領主は、帝国や領地にとっての脅威となりうる存在が現れた際に、管理システム経由で領民より税として納められた魔力を使用し、それらを撃退する義務がある。
普段は管理システムの運行と魔力の適切な運営を行うことだが、これについてはコームが9割がた請け負っている。
俺は、培養器で既に体は15歳ほどまで成長させられており、後は好みでいじれば良いと言う。
「いじる?」
「えエ、先に申し上げた通リ、戦闘は領主の主要な義務でス。戦い方はそれぞれで御座います
のデ、骨格や筋肉量、臓器の強度等お好きに調整下さイ。」
すごいな、骨や内臓レベルでキャラメイクしていいのか。
「調整個所をチルに伝えて、培養器で睡眠頂ければ、余程在り方を変更しない限りは一晩もあれば終わりまス。」
「いじるよー!」
「今のところ違和感は無いけど、必要になったら頼むね。」
「まかせてー!」
「さテ、トーヤ様の飲み込みが良すぎるのデ、ついつい詰め込み過ぎましたナ。今日はこれくらいに致しましょウ。」
時計が無いから時間がわからないけど、あっという間で正直余り負荷にはなってない。
とは言え、気を遣ってくれてるのにそれを言うのもな。ここは有難く休ませてもらおう。
「わかりました、今日は有難う御座いました。」
コームがニタァと笑う。こわい。悲鳴が漏れそうになるが耐える。
「いエ、いエ、私にとっても得難い時間でしタ。今度、トーヤ様の前世についてもお聞かせ下さイ。」
「トーヤは真面目ね!」
「そうですねエ、ハーキル様を想定してチルを作成しましたガ・・・いじりますカ。」
ポンポンいじるって言葉出てくるな、こわい。
「ええ!やだー!」
「えっと、俺は今のままでも大丈夫ですよ。」
笑みが深まる。こわい。・・・慣れないとなあ。
「なんとお優しイ。チル、トーヤ様に誠心誠意お仕えするよウ。」
「はーい!」
「トーヤ様、チルには様々な娯楽へアクセスする権限も与えておりまス。空いたお時間ハ、それらをお楽しみ下さイ。」
そう言い残し、悪魔は去った。
2019/10/14:表記ゆれを修正
2019/9/28:誤字修正