不発のち空間創造
やりやがったよこの人!!
先程の衝撃を思い出し思わず身構える。
・・・が、特に何も起きなかった。
「まあ、出ないよな。」
「バカさに説得力は出ましタ。」
「お前本気で撃つぞ。」
「どうゾご随意ニ。ハーキル様如きがどの程度の物か、見てあげましょウ。」
「よし、死ね。」
突如父の横に現れる手のひらサイズの妖精
「エキスティンション・レーザー!」
放たれるビーム
「デッドリー・ウェイブ!」
広がる謎の波
「アブソリュート・ゼロ!」
空気を凍らせる青白い空間
ケラケラと笑い転げるチル
コームは全ての攻撃を左手で消滅させつつ、俺に顔を向け口を開く。
「まア、雑魚はいいとしテ。トーヤ様、領主ビームとはチルとお決めになったのデ?」
突如、普通の質問を受けたことに脳の処理が追いつかない。
「・・・え、あ、ああー。そう、あ、いや、違う。チルから言われて。」
「なるほド・・・」
そうつぶやくと悪魔は、魔法の反動なのか、息も絶え絶えな父親に向き直る。
「雑魚・・・いヤ、ハーキル様には不釣り合いな程の魔力量のお子に恵まれましたナ!おめでとうございまス!」
元気に煽ってくる執事に対して、父は息も絶え絶えなようだ。
「・・・糞ジジイ・・・め、いつか消してやる。」
「ハッ!」
うわあ、鼻で笑ったよ。
「さテ、チル。そろそろ笑いやみなさい。」
そう言いながら今度はチルに近づいていき、右手でチルの顔面を掴んだ。
アイアンクローっていうんだっけ、あれ。
「アハハハハ・・・イダダダダ」
「ふム、妖精もこれくらい大きいと掴みやすくて良イ。トーヤ様は良い仕事をなさル。」
「・・・いや、俺は何もしてない。」
「ハハハ、ご謙遜ヲ。チルへの魔力供給量の尋常ならざる高サ、このコーム感服しましタ。」
独り言のつもりだったけど、聞こえてたようだ。地獄耳だなあ。
「は゛な゛し゛て゛え゛ー」
マスコットっぽい外観から出ちゃダメな感じの声を出しつつ、涙目で訴えるチル。
「この程度、ダメージにはなっていないでしょうニ。それデ、勝手に登録したのは何故でス。このご様子だとトーヤ様にご説明していないでしょウ、あなタ。」
登録。気になる言い回しだけどリンクはでてこない。そういえば目が覚めてからはリンクでなくなったなあ。故障かな。
悪魔がマスコットの顔面を掴んで尋問する様を受け入れられず、現実逃避気味な考えになってしまう。
「だっでぇ、トーヤパパの登録見たけどかっこ悪いんだもの・・・あれなら領主ビームのほうがましよ!」
「そこは個人の趣味の範疇ですのデ。私が聞きたいのは何故トーヤ様にご説明していないかですヨ。」
唐突なカッコ悪い発言に父の心にダメージが入ったようだ・・・悲しそうな目でチルと俺を交互に見ている。
・・・俺は嫌いではないよ、なんとかレーザー。
「最初は登録してからってワタシもおもってたよ!でもでも!なんだかトーヤ撃てそうだったもの!実際うてたもの!」
「説明になっていませんネ。しかシ、ふム。イレギュラーなのは外観だけではないようですネ。今回は不問としまス。」
「ならはなじでえ。」
涙目で訴えるチルに対し、唐突に赤と紫のオーラを纏う悪魔。いや、精霊。
・・・なんでこんな禍々しいオーラ出せるんだろう、悪魔じゃないんだよね?
「次回以後、トーヤ様にお決めいただくようニ。いいですネ。」
「わ゛か゛り゛ま゛し゛た゛ぁ゛」
「よろしイ。さテ、トーヤ様は戸惑っていらっしゃる様ですシ。落ち着いた場所で話たいですネ、ハーキル様。」
戸惑いの原因はほぼコームなんだけど、まだ禍々しいオーラを出してて怖いから言わない。
「お前なあ、主人をアゴで使うなよ。」
「生後まもないお子ニ、覚えたての魔法で破られるような空間を作るような雑魚にハ、適切な対応であると自負しておりまス。」
「・・・いつか消す。まあいい、シャシャ、前回の倍でやるか。」
「はあい。」
シャシャと呼ばれた、間延びした声の妖精が返事をする。
「クリエイト・ディメンジョン」
再び俺の体は青空の中に放り出された。
※2019/10/14 前話との重複部分を削除。誤字修正。