祖父
祖父・・・?基礎知識にあったかな・・・えーと。
思い出そうと試みると、リンドを老けさせたような顔が出てくる。なるほど、この人か。
ええと、ジードリグ=アイビーネ・・・おじいさま?かな。
「ジードリグお爺さまと顔を合わせるのは初めてかな。なにか理由があるの?」
「えエ。現在はリンドーリグの領地を仮預かりしておりましテ、ジードリグ=アイビーネ=カリス様になりますネ。領主業務の合間ニ、陞天の手続きに奔走されておりますかラ。トーヤ様が培養機に入っていらっしゃる時に数度お顔を見にいらした程度ですネ。」
そうか、リンドの領地はお爺さまが治めてくれているのか。
領主が反逆したからと言って、領民に罪はないだろうから、なんとなく安心。
しかし、しょうてん・・・?前に聞いたような聞いたこと無いような言葉だな。
「しょうてんって?」
「陞天はねー!功績の大きい領主が天領で皇帝へーかのお手伝いをできるようになることよ!」
チルが元気よく答え、コームが申し訳無さそうに補足する。
「リンクが切れているのにご説明が足りませんでしタ、ジードリグ様は領主として統治していた時期の功績が認められておリ、亜神となり寿命が免除されるのですヨ。既に領主業はハーキル様に引き継いでおりますガ、人間を辞める手続きですからネ。流石に簡単に終わるものでもないのでス。」
なるほど。領主は天領を目指すって前に聞いたけれど、寿命に囚われなくなるならそりゃ目指すよなあ。
・・・でも寿命が亡くなった人ばかりになって、天領が溢れたりしないのか。
「寿命を無くしちゃっても大丈夫なの?天領が人だらけになるんじゃ。」
「ハハハ、左様ですナ。意外かもしれませんガ、人は永き時に耐えうる精神構造をしていない事が多いのですヨ。大抵の者は1000年程デ、陛下の許可をいただいた上デ、記憶を無くし転生してしまいますネ。」
・・・千年も仕事してたらやめたくもなるか。俺ならその半分も耐えられないかも。
「それでですネ。今回の道中にハ、守護役としてジードリグ様とその私設艦隊ニ同行いただけるのでス。予定している顔合わせハ、その護衛計画の打ち合わせを兼ねておりまス。」
「でも、護衛につきあってもらって、しょーてんの手続きはダイジョーブなの?」
あ、それは俺も気になる。タダでさえ忙しそうなのに、余り迷惑をかけたくない。
「この護衛計画の為ニ、前倒して手続きをやっていますからネ。元は領軍で護衛する予定だったのですガ、リンドーリグの反逆がありましたからナ。」
「ああ、それで護衛の強化が必要になって、お爺さまも忙しくなっちゃったのか。」
領主の反乱なんか起きたら、いろいろ手続きも狂うよなあ。
「左様でございまス。まア、硬い方ではありますが孫はかわいいのでしょうナ。反逆の後、ハーキル様を脅しつツ、ご自分で同道する計画を力押しで決めてしまいましたかラ。」
「トーヤパパかわいそー!」
父、脅されていたのか。
・・・なんだか、帝国最強なのにちょいちょい不憫な人だなあ。
「ええと、取り敢えずわかったよ。お会いするときには、護衛を請け負ってくださったことにお礼を言うようにしておく。」
「えエ、それはお喜ばれになる事でしょウ。それとチル、リンクの対策が取れない分ハ、先程のように貴方が補佐して差し上げるのですヨ。極力、周囲の者に悟られぬよウ。タダでさえ異常な大きさの妖精を引き連れているのでス、余計な詮索をされかねませんからネ。」
「はーい!」
そっか、これから合う人はリンクが当たり前に使えるんだなあ。ちょっと羨ましい。
取り敢えず、そこら辺りも違和感持たれないように気をつけておこう。
「それでハ、トーヤ様。改めて無敗での模擬戦突破、お見事でしタ。どうカ、破れた者たちの為にモ、その功績を誇ってあげてくださイ。それでハ、失礼いたしまス。」
そう言い残したコームに生返事を返すと、満足そうに頷いた後、深くお辞儀をして転移していった。
・・・そうだな、負けから学べた事もあった。あの駆け引きのお陰で、より慎重に、より考えて戦ったからこそあの後負けずにいられたんだ。
生身で、ネットゲームのキャラクター達相手に勝つってだけでも結構凄い事のはずだ。
そうだよな、凄いことをしたはずなんだ。その分は自信を持とう。
「トーヤは自己評価低いもんねー!」
・・・反論できない。
「そうかもしれないね。ちょっとずつ治さないと、コームの言うとおり、戦った相手にも失礼になるよなあ・・・すぐには治せそうにないけれど。」
チルが頭を撫でてくる。
「変わろうって思っていればだいじょーぶ!ゆっくり変わればいいのよ!」
なんだかんだ、課題は多いな。少しずつ、良くしていこう。




