表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/74

模擬戦開始

大歓声を手で制し、コームが演説を続けている。でも正直、歓声に気圧されて内容はまったくはいってこなかった。視界を埋め尽くす人、亜人、ロボット。何故こんなに参加しているんだろう。

でもまあ、そうか、前世で考えるなら自作のゲームキャラで戦って、勝てたらいい身分が貰えるって話だからな。そりゃあ参加するよなあ。


などと考えている間に、コームの演説が終わる。次は父のようだ。


「では、本件の規定事項を伝える!禁止事項はない!勝利の判定は・・・」


なんで父がルール説明するんだろう。俺のイメージだと家令が説明で当主が演説なんだけど、違うんだなあ。

予め聞いてはいたけれど、ルールとしては


1,攻撃手段は何でも有り

2,致死ダメージを与えるか場外に叩きつけたら勝ち


以上。シンプル。


しかし、どうして俺の修練の為に、こんな大げさな事になってしまったんだ。

てっきり、アルバイト面接会場みたいなところを用意して、「次の方どうゾ。お名前と自己PRの後、トーヤ様とご戦闘下さイ。」みたいな感じで、淡々とやっていくイメージをもっていた。


気圧されっぱなし、想定外の連続。そんな混乱を、流れる時間は待ってくれるはずもなく、あっという間に模擬戦が開始となる。


「でハ、各々抽選で割り当てられた順番に従イ、闘技球に転移されル。力を尽くすようニ。」


ええと、闘技球は中央に100m四方の闘技台があり、それを直径200Mの球体が覆っているんだったな。

球体の外壁が場外扱いと。加速をかけていると100M程度なら1秒かからない、飛び出さないように気をつけないと。


そうこうしている間に、両親は退場するようだ。

転移の直前、父が唐突に条件を追加してきた。


「そうだ、トーヤ。必ず相手に先手を譲りなさい。ただ、20秒待っても手を出してこなければこちらから仕掛けていいよ。」


え、先手撃って奇襲しまくるつもりで、速度をあげてデコイの練習したのに。

唐突な条件付与に驚いて、間の抜けた返事をしてしまう。


「え、はぁ。」


「期待しているよ。」


爽やかに笑って消えるヒゲダンディ。・・・先に言っておいてよ。


「大変ね、トーヤ!」


チルがくすくす笑いながら声をかけてくる。何が面白かったんだろう。


「うーん・・・まあやるしかないか。20秒のカウントは頼んでいい?」


「うん、任せてー!」


「それでハ、一人目。サミ=トゥスン。」


・・・っと、転移させられた。正面にはいかにも魔法使いですといった具合に、黒いゆったりしたローブを羽織っている女性。頭に生えている猫耳は、自前なのかアクセサリーなのか。

先手を譲れ、か。えーと、まずは防御の準備を・・・


「魔法くるよー!」


やばい!チルの戦闘モード移行も強化もしてない!

対応しないと!!


岩石が飛んで来た・・・ゆっくりと。


防御隔壁で打ち消しつつ、駆け出す。

相手は反応できていない?釣りだろうか?


念の為デコイを飛ばしてみる。

目の前に飛ばしたそれに「ヒッ」っと驚き杖で殴りかかった。


反応が遅い、これは単純に戦い慣れてないのか?後方に回って魔導刃で首を切り飛ばす。

血しぶきは上がらない。そういう仕様なんだろう。


何かの反撃が来ることに備えていたけれど、無駄だった。

魔導刃の調整を頑張ってよかった。太いままだと、顔を消し飛ばすところだったなあ。

・・・いや、切り飛ばすのも消し飛ばすのも大差はないな。

想定外に余裕だったからか、余計なことばかり考えてしまう。


「ウオオオオオオオオオオオオオ!」


歓声があがる。VRなのに音の圧がすごい。リアルにつくられてるんだなあ・・・


「次、カーリル=ウォルオン。」


首のない女性が消え、開始線に再度転移させられる。

しかし、チルは余裕だったから戦闘モードに入っていなかったんだろうか。

いや、慢心はよくない。準備はしっかりしよう。


「チル、戦闘モード移行、強化一式頼む。」


「戦闘モードはまだダメみたい!強化はかけるね!」


・・・まだってなんだろうか。しかし、今日のチルは輪をかけてゆるいなあ。


強化の影響で思考が加速する。


次は、刃が赤く光る薙刀を携え、緑色の革鎧を着込んだ男性だ。

じりじりと動いてはいるけれど、距離を詰めるというよりは何かを警戒しているようだ。

仕掛けてこないってことは、様子見からカウンター狙いなのだろうか。


「20秒経ったよ!」


攻めるか。


取り敢えずデコイを左側に飛ばして、逆側から後方に回り込む。

デコイに反応したようで、赤い光が長く伸びた薙刀で切りかかってくれた。

・・・後方から首を切り飛ばす。


「次・・・」



初日はこうして、守るか待つかした後、死角を取って首を斬る。その繰り返しだった。

それなりに警戒はされているようなんだけれど、速度についていける人が居ない感じだ。

攻撃に関しては、余り練習にならないような・・・。

いや、でもデコイの練習をした成果は出たわけだし、良しとしよう。


それに、相手の攻撃はいろいろ体験はできたと思う。

・・・回避も防御も、余裕で間に合う程度ではあったけど。


「楽勝だったね!でも、明日からもうちょっと変わると思うよ!」


肩透かしを食っていた事を見抜かれたんだろうか、チルが補足してくれる。


「参加希望日が選べるんだけれど、初日を選ぶ人はあんまり考えてない人だからね!」


考えてない人・・・?ああ、後の人のほうが俺の能力を見てから対策出来るんだもんなあ。


「そっか、てことは後からのほうが強い人が来る可能性高いんだね。」


「うん!明日もがんばろうねー!」


そういうチルへ、お礼代わりに頭をなでつつ考える。


お祭りノリで参加してたり、人生の転機を狙っていたりと、心構えは人それぞれってことだろう。

今日余裕だったからといって、明日以降も油断はしないようにしないとな。


そう言えば、動画の人・・・カツミさんだったっけ?

今日は名前を聞かなかったけど、いつ来るのかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ