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連携訓練

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翌朝、目覚めた俺とチルを待っていたのは鬼教官達だった。


最初は、VR内でコームがビームを連射してくるのを防壁で止めたり、回避したりしながら突っ込んで、斬るだけの訓練で、正直なところ拍子抜けで、強化の恩恵を発揮して、一方的な戦いに出来ていた。

ほんの少し後に気づく事だが、コームは手を抜いていたんだ。



コウとレアが混ざる事で状況が一変する。



コームからの4条のビームを、それぞれ俺の防壁3枚とチルの防壁で防ぎ、反応加速の恩恵で強化前の5割増し程の速さで踏み込む。


「「光弾!」」


無視できないレベル、被弾すると四肢の何れかが飛ばされる程の攻撃を確認。防壁2箇所展開。

だが、そのせいでコームへ踏み込みきれず距離を取られる。


コウやレアに踏み込もうとすると光線に襲われ、防御している間に距離を取られる。

被弾覚悟での突破を試みるけれど、足が飛び、あとはなぶり殺しにされる。


「理解できますカ。」


未熟さなら理解しているつもりなんだけれど、何か含みがあるような。


疑問を胸にいだきつつ試行錯誤を続ける。だが、成果は出ない。

踏み込みに掛ける魔力が高いと防壁に綻びが出る。被弾、削り殺される。


防壁に魔力を掛けると、踏み込みが足りず、俺の刃は届かない。

防御に徹し続け、一瞬見えた好機に賭けたが、無理攻めの隙を咎められ、削り殺される。



「理解できますネ?」



・・・そういうことか。

コームなりにお手本を見せてくれているんだ。

強化を教わったらしい二人が、それを使っていない。

リンドとの戦いの時に、こうすればよかったのだと、実際に示してくれている。


大技は、それを撃つ時に溜めが有る。

それを、二人に妨害してもらいつつ、俺が近接で削る。


初めは俺が時間稼ぎに徹して、チルを経由し、二人に妨害中心に動くよう伝え、連携しつつ戦う。

・・・あの時、理想的に動くことができれば、封殺しつつ戦えたかもしれない。


自分の未熟さを実感する。恐らく、コームはまったく本気を出していない。

その状態で、手も足も出なくなる。

こうやって、数的優位を利用して、じっくりと戦うべきだった。


数分の戦いの後、防御の遅れから生じた被弾。そこから削り殺され、仕切り直しとなる。


「・・・自分の未熟さがわかるな。チル、コウ、レア3人とうまく連携できていなかった、ごめん。」


「・・・己の至らない点を、素直に受け入れられるお前がうらやましい。」


「私は怯えてすくみ上がっていただけですから。私も未熟だったのです。」


「教えられずに出来る者などおりませんヨ。幸イ、生きて帰れたのですかラ。次に活かす事を考えるとよろしイ。」


「トーヤは頑張ってるもの!私も強くなッたし!皆も強くなったの!次、また何か有ってもきっとだいじょうぶよ!」


本当に、幸運だ。そうだな、未熟なら成長すればいい。導いてくれる先人も、共に歩んでくれる存在もいるんだ。


「みんな、ありがとう。」


「構いませんとモ。トーヤ様にハ、お強くなっていただく必要も出てきておりますシ。」


なにか引っかかる言い方だな、どういうことなんだろう。


「近々、トラブルでも起きそうなの?」


「そうですネ、そのようなところでス。詳しいお話につきましてハ、いずれ時間を作りハーキル様と共にお伝えしましょウ。」


すぐには言えない事か、なら無理には聞かないほうがいいかな。


「さア、訓練を続けましょうカ。次は3人で挑んできなさイ。」


俺が前衛、二人が後衛、チルはその中間で補助。

二人の射線はチルから3DMAPで受け取り、自分の立ち位置はそこからずらす。

その上で、二人へ向かう光線は止めれるような位置取りを心がけつつ立ち回る。

中距離攻撃で隙を作ってくれたら、飛び込んで魔導刃で斬る。

理屈は単純だけれど、数の上で優位を取ってさえしまえば、どんな相手にでも一方的に負けることはなさそうだ。


「4人共、素晴らしいですネ。もう少し時間をかけテ、教えるつもりだったのですガ。」


何度目かの撃破の後、コームが何かを悩んでいる。

上手く戦えていると実感している。でも、油断や慢心をしないように気をつけなければ。


「・・・流石にまダ、二人には見せるわけにモ。トーヤ様だけですかネ、今日ハ。」


考えをまとめているであろう、小声を拾ってしまう。俺だけ追加の訓練だろうか。


「コウ、レア、二人はこれから二人の連携を高めてもらいまス。疑似リンドと疑似トーヤ様を用意しましタ。難度は10段階あるのデ、出来るだけ上を目指しなさイ。」


そんな事もできるのか仮想現実・・・なんでもありだな。


「わかった。」「畏まりました。」


「別部屋に転送後、30分程したら開始されまス。少し休んでいて良いですヨ。」


コームがそう言うと、二人が消えた。


「さテ、トーヤ様とチルは別メニューでス。」


そう言い、指を鳴らすと、父ハーキルが現れる。・・・疑似ハーキルかも?


「そうやって、指を鳴らして呼ぶのをやめろ。俺が雇われ側みたいだろうが。」


「大差無いでしょうニ。」


「大有りだボケ爺ィ!」


「アハハハハ!コームボケー!」


・・・漫才が始まってしまった。どうすればいいんだ。


「雑魚、わきまえなさイ。トーヤ様が固まっていらっしゃル。」


「お前なあ、これからいいとこ見せようってんだから茶化すなよ。」


「それもそうですネェ、でハ・・・」


「アハハハハハ・・・グェぇー」


あ、またチルがコームのアイアンクローの犠牲に・・・

なんて声だしてんだ。


「説明します、静かになさイ。」


「は゛な゛し゛て゛え゛ー」


咳払いをシつつ、父ハーキルが話を引き継ぐ。



「なに、ちょっとした我が家の伝統行事だ。トーヤ、俺と戦いなさい。」

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