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管理者の遺物

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『対象が転移した模様、ハーキル様、ご指示を。』


転移妨害を突破した?

緊急転移では無かったのだろうか。

いや、なんらかの手段で妨害をレジストしたのかもしれないな。

こんな時の為に緊急転移先は抑えているんだ、まずはそちらを確認するのが先決だろう。


『シャシャ、準戦闘モードへ移行。身体強化と加速を解除してくれ。それと、緊急転移先の領軍に転移反応を報告するよう指示を。』


『準戦闘モード移行。身体強化を解除、監視中の各小隊に指令内容転送。完了しました。返答集計完了まで予測時間40。』


トーヤの安否について、リンドが何かつぶやいて居たのが気になるけれど、何らかの利用方法を考えていたのだろうか。

ふむ、当主の嫡男でなければできない儀式?いや、洗脳して己に心酔させ、傀儡にでもするつもりだったのかもしれないか?

今の段階では、判断に足る材料がない。まずは、見つけなければ話がすすまないようだ。


『報告集計完了。E1よりE26小隊全て信号なし。目視確認を追加指示しています。返答集計完了までの予測時間360』


・・・なんだって?

足を切った後に、治癒を行使している反応は有った。

いくら魔力操作が優秀とは言え、転移先の隠蔽に割くリソースは無いはずだけれど、どんな手品を使ったのだろうか。


『目視確認に追加で、魔道士に走査させてくれ。不在の隊はこちらから遠隔で頼む。コストがかかっても構わない。』


『指令内容転送しました。領主承認の元、遠隔走査実行。予測時間に変動は有りません。』


ふぅ、思わぬ出費となったな、どう補填したものか。

しかし、別の可能性も考えておかねばならないようだ。

緊急転移では無いから妨害を受けなかった?生身で長距離転移を掛けたのか?

領主権限で力押しすれば・・・いや、それが出来るほどの魔力の発動を検知していない、術式の規模から言って、隠蔽と並行して施行出来るものではないしな。


答えが出ない。・・・まったく、出来るだけ爺に頼りたくないんだが。


『シャシャ、秘匿で霊子通信。暗号は赤の45だ。邸宅の爺に繋いでくれ。』


『霊子連動、通信経路確保、応答を確認。秘匿を施しました。通信繋ぎます。』


・・・霊子連動?いや、待て、まさか。


「緊急事態ですネ?取り逃がしましたカ。・・・いかがされたのですカ?」


問いかけてくる爺を片手で制す、考えをまとめたい。

霊子連動を利用して・・・パスを通せば・・・

いや、だが魂の同期級の難事だぞ・・・?妖精となら容易にパスは通るが、それはそもそも生誕時に魂を分け与えたからこそだ。人と人でそのような事が出来るわけ・・・

だが、そうだ、リンドはトーヤが安全地帯に居ることを気にしていた。転移先の候補としていたなら腑に落ちる。しかし、どうやって?・・・俺一人で考えても埒が明かないか。


「爺、教えてくれ。人と人が魂を同期させることは可能か?」


爺が片眉を上げ、少し考えてから口を開く。


「不可能ですネ。起きうるとしてモ、双生児を無理に同期させる位ではないかト。・・・一体何があったのでス?」


「リンドがトーヤの元へ転移した可能性がある。」


「トーヤ様でしたラ、先程129長距離転移航路を通過し終えた様でス。2万光年は離れていますヨ?緊急転移で避難所に逃れただけでハ・・・いや、魂の同期ですカ。まさかパスが通ったト・・・?」


『目視確認報告集計及び、走査完了。転移痕跡なし。隠蔽の可能性は1%未満。否定できるレベルです。』


やはりか、想定しうる最悪の事態が想起される。


「緊急転移ではなイ?・・・お待ちヲ、阿迦奢に接続しまス。」


「頼む。」


爺の権能、記録領域への接続に頼る。万能ではないが、最低でも可能性の有無はわかる。

・・・時間が惜しい、今は他に打てる手を打とう。


『129の首都星系側の治安維持部隊へ、直轄艦トーヤへ近隣の対魔道士戦に耐えうる部隊を回すよう通達。それと・・・』


『近隣の領地でしたら、ケイダ子爵領とオミネリーム男爵領です。』


『そうか、有難う。反逆した手負いの貴種が向かう可能性がある為、襲撃に備えるよう通達しておいてくれ。』


『承知しました。通達を開始します。』


反逆者など、ここ十数世紀でていないからな。先代やその前からの借金で手一杯の両名だ。

手負いとなれば、功名心にはやり出撃してくれる可能性は高い。・・・相手が伯爵とも知らず。

仮に損害が出て、補償を求められたところで、こちらの指示は防衛の強化だ。責を追う必要もない。

・・・悲しい事に、俺の思考も爺に似てきた。領主としては正しいのだろうが、気持ちの良いものではないな。



「・・・ハーキル様、こちらにお戻り下さイ。私がトーヤ様の元に向かう必要が出てきましタ。あの腕輪、ただの妨害では無い事が推察されまス。管理者の遺物の可能性が高イ・・・それならばパスが通ったとしてもおかしくはありませン。」


眉間にシワを寄せ、両目を釣り上げ、吐き捨てるように爺が報告してくる。これ程、怒りをあらわにした姿など初めて見たな・・・


「いや待て爺、なんだそれは。管理者の遺物など初めて聞くぞ。」


「・・・あの邪神ハ、知能有る存在が混沌に踊らされる様ヲ、それはそれは好んでいましタ。その為の仕込みとしテ、己の権能の極一部ヲ、混乱の種として撒いていたのでス。・・・初代皇帝と精霊種で共に回収したはずなのですガ、まさか残留物が有るとハ。・・・いヤ、しかシ、それならばショーキが気づかないはずガ・・・」


「考察は良い、転移の可能性が高いことはわかった。俺は最短で戻るので爺はトーヤの元へ向かってくれ。」


「直ちニ。ハーキル様もどうカ、道中お気をつけテ。」


爺が俺のみを案ずる言葉を掛けてくるなんて、子供の頃以来だな。・・・それ故に、事の大きさを再認識する。



培養器から出たら、いろいろ遊びを教えてやりたかったのだ。どうか、無事で居てくれよ、トーヤ。

2019/10/14:1行目を加筆

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