無事に帰ろう【挿し絵:チル/デフォルメ】
「ええっと、副節の話の途中だったよね。指定と追尾はわかったよ。広域は威力も速度も落として範囲を広げる感じかな?」
「ああ、そのとおりだ。怯ませたり、防御をしにくくするのが主な狙いだな。」
「妖精が居る方は、さらに長大な節や多数の工程を含む魔法を使えるそうですが、私達が習得出来る範囲だとこれが限界ですね。」
現代の戦闘がどんなものかイマイチわかってないけど、普通に火球だけでも結構戦えるような・・・?
「いや、十分だよ、ありがとう。チル経由で追加魔法が覚えられない以上、今は少しでも身を守れるように練習しておきたいんだ。」
「わたしからもありがと!ふふふ、魔法技能の向上、護身技能の教育、道中の護衛っと、これだけ功績あれば、二人をトーヤ付きの侍従に出来るように報告できるね!」
侍従って、偉い人の付き人とかだったけか。
「・・・トーヤの侍従をやりたがる家は多くなるんじゃないか。当主の嫡男でこの魔力量だぞ?当主候補の筆頭だと誰でも考える。」
「そうねえ、でも今ってリンド叔父さんが、明確な謀反を起こした直後でしょ?嫡男の誘拐なんて普通やらないもの。」
リンド叔父さん・・・?誘拐ってことはあの白ひげダンディの事か。
「そうですね、どの家が敵対しているかわからない内は、出自がはっきりしている割に、敵対しうる理由のない私達は適任という事ですか。」
「きっとね!そうなるんじゃないかなって思うの。対外的には嫡男を補助してくれたショーキの顔を立てる為!とか言えちゃうしね。侍従なら、準貴族扱いだから生活には困らないと思うのよ、どうかな?」
チルが政治の話をしてる・・・二人も当たり前に理解してるふうだし、ついていけてないのは俺だけか。
ちょっとショックだなあ。まあ、これから勉強するしかないか。
「願ってもない話だ、よろしく頼む。」「私にとっても大変有り難い話です。」
「うんうん!それじゃあ、戻ったらそんな感じで動くね!だから、皆で無事にかえろう!」
そうだな、無事に帰ろう。・・・そのために出来ることが無いってのは悲しいけど。
せめて、教えてもらった魔法は身につけておくか。
「チル、せっかくだから練習したいんだけど、仮想現実空間で戦闘とかはできる?」
「ごめんね、トーヤ。あれは通信経由してたから今は難しいかな。」
そっか、練習するとなると難しいなあ。二人相手だと万一怪我させたりしたりした時が怖いし。
「俺達が相手をしよう。チル、お互いに防御しそこねた奴だけ防壁で止めて貰えないか。」
「そうね!それでいきましょ!レアもそれでいい?」
大丈夫です!と元気に帰ってくる。やはり武闘派・・・
しかしそうか、防御練習の時みたいにチルに補佐してもらえばよかったなあ。
「わかった、頼むよ。」
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これは・・・すごいな。
これまで魔法と言えば撃つと空間が消えるか、太い棒が出るか、何かを守るかだったからなあ。
ちゃんとした魔法だ。しかも高性能。
途中で思いついた、威力重視で頭部狙いで、防御を誘いつつ目眩ましとして使って、本命の速度重視で手か足を狙う連撃がかなり決まる。俺、才能あるのかもしれない。
「このフェイント自体はよくある手なんだが、魔力量の高さの影響だろうが、弾速が段違いだな・・・これはわかってないと回避できない。良い手だ。」
魔力量のおかげだったかー。上手くやったと思っていただけに嬉しくない。
「そうですね、火球の威力も速度重視とは思えません。防御を拡散しては防げませんし、わかっていたとしても、両手両足で1/4の確率でしか防御できない。対してトーヤ様は防がれたら次弾を撃てばいいだけですし、中距離戦の1対1ではそうそう負ける事はないでしょう。」
レア先生のお墨付きをもらえた。せっかくだし強みは活かそう、この方向性で頑張ってみるか。
「よし、次頼む!」
気合を入れてそう言ってみたが、チルに止められる。
「あ、ちょっと待ってね!もうすぐ長距離転移区間に入るから、ちょっと防御できなくなるの!」
区間ってことは、長距離転移していい区間とかが指定されてるってことかな。
「区間に入るまでやらなかったのは、法律とかで決められてるからって感じ?」
「そうよ!長距離転移は悪いことに使いやすいから、転移前後の記録が残しやすかったり、時空震が少なかったり、中間に開発している星系が無かったりって条件で区間が設定されてるの!」
記録は犯罪や反乱防止だろうし、時空震自体は謎だけど、災害を避けるためなんだろう。開発してる星系はなんでだろう。
「開発してる星系ってのは入植してる星ってこと?」
「ううん、資源惑星とかも込みよ!長距離転移の航路にいると、たまに余波で星がダメージ負っちゃうから、それを避けるためね!」
星にダメージってどんな余波だ・・・でもまあ、ちゃんと法律側でなんとかしてくれてるならいいや。
「何か、俺が気をつけたほうがいいことってある?」
「ないよ!ご飯食べたりお風呂入ったりしてて!」
頼りになるなあ、頭なでとこ。
「わかった、よろしく頼むよ。」
「任せて!ご飯は何食べる?」
ご飯か、二人に聞いてみるかな。
「二人は何か食べてみたいものとか無い?」
※219/9/27 サブタイトルに挿し絵が有る旨追記。
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