共感・共振
週1~2回更新と書いているのを、そろそろ消したほうがいいのでしょうか。
1話毎の文字数が少ないから、セーフ理論で今はまだ残しています。
ちょっとした身の上話をしたら、思った以上に深刻に受け止められてしまった。
でも、二人が心を開いてくれそうなのは嬉しい誤算かもしれない。
「うん、俺でよければ聞かせて欲しい。」
コウは、少し言葉を選んだ後に続ける。
「・・・俺達は共振に適正が無かった。それが判明した段階で、妖精の構築が未了のまま培養器から排出された。」
「兄さん、共振を説明しないと。」
いつの間にか泣き止んでいたレアが、補足を促してくれる。頭を撫でるのをやめると、頬を染め、俺から離れた。
「そうだな。共振は、魂を分割した双子に起きる現象だ。我が家の祖先が発見し、秘匿していた。魔法の行使に際し、共振しつつ発動する事で、個人で使用するより効果が10倍程になる。二人が同時に同じ魔法を使用する必要がある時点で、メリットがそこまで大きいとは言い難いが。」
「私達の両親は、共振の適正を確認する方法を発見してしまったそうで、何人もの兄や姉が研究の為に、生まれる前に廃棄されたと聞きます。」
あれ・・・?俺より厳しい人生に聞こえるな。
「幸運な事に、俺達は魔力が貴族の平均より高かった。何か用途が有ったのだろう、培養器には次の子が入れられたが、俺達は処分はされず、放置された。」
「俺なんかよりよほど壮絶に思えるんだけど・・・」
「そんなことはない、幸運な事に家のデータベースの閲覧は許可され、知識は得られたし、両親は俺たちへの興味が薄いからか放置され、辛い想いをする事もなかった。昨年には両親の逮捕に来たショーキに拾われ、不自由を感じる事無く過ごせている。悲壮な日々を過ごしたお前より余程救われている。」
「結局、両親は何らかの罪状。詳細は知らされていませんが、恐らくはこの実験の罪で、先月に貴族位を剥奪されました。貴族位は失いましたが、無事に人として暮らせる事をありがたく思っています。」
その状況を不幸と認識出来ないことが不幸なんじゃないだろうか・・・
そう考えたが、ひょっとしたらそれは自分にも言えることなのかもしれない。
自分自身、ちょっと不幸だとは考えていたが、それは人に泣かれる程のものと認識できていなかった。
自分の境遇を客観視するのって難しいもんだな。
「うん、そうか。二人が前向きに捉えてくれたってだけでも良かったよ。」
「お前は・・・どれだけ前向きなんだ・・・」
なんだ?呆れられているような。
チルが頭を撫でながら話す。
「うんうん、仲良くなれそうでよかった!コウ、レア、トーヤをよろしくね!」
「ああ、これから宜しく頼む・・・さっきは悪かったな。」
「気にしてないよ!それよりご飯食べましょ!トーヤ、なにがいいかな?」
む、難問だな。
「二人は食事取ったことないって話だけど、消化器って普通に働くのかな。弱ってたりしない?」
「大丈夫よ!ショーキがそのへんちゃんとしててくれたみたい!船には簡単な医療カプセルもあるから、合わなかったら調整するよ!」
合わない可能性があるけど、考慮はしなくていいってことかな。
どのみち、物を食べたことがない二人に希望を聞いてもピンとこないだろうから、俺が考えるしか無いだろう。
食事のマナーとかも教えろって言われてたけど、そもそも食べるのに慣れるとこから入らないとな。
熱いものは火傷が怖いし、最初は温度が高くなくても美味い物がいいだろうか。
「まずは、冷たい麺類でいってみようか。なにか出来る?」
「ザルードンとかでどうかな?」
恐竜・・・?いや、ざるうどんか。悪くないかも、だしの味がわからないのが少し怖いな。
「いいね、つゆって味を見たり出来る?」
「うん!どうぞ!」
手元に金属筒が出現する。そう来るか。これ使うのも久しぶりだな。
勢いに気をつけて少し魔力を込め飲んでみると、よくわからない風味が口に広がる。
醤油ベースなのは間違いなさそうなんだけど、なんの出汁なんだろう。謎の香りと旨味を感じる。
まあ、美味しいのは間違いないし、これでいいか。
「ありがとう、ざるうどんにしてみようか。食堂ってどこにあるの?」
「飛ばすね!」
「えっ?」間抜けな声を出したときには転移していた。
トラッカーと比べて歩く機会は無いようだ。
食堂は、飾り気のない机に飾り気のない椅子が、床から生えているだけだった。
元は軍に配備される船だからこんなかんじなのかな?と考えていると、壁一面に星空が広がる。
スクリーン?いや、映写機が無いか。ディスプレイなんだろう。
キョロキョロしている俺と比べ。コウもレアも、慣れたもののようで、何のリアクションもせずにチルに案内されるまま、席に座っていった。現代っ子め。
席につくと、白磁の器に盛られたうどんが、スッ・・・っと出現する。もう動揺するものか。
「いただきます。」と口にして、現代っ子に説明しないとかなと思ったが、二人共あっさり同じ語句を口にして驚く。今も残っている文化なのかもしれない。
うどんは思っていたより細く、コシが弱かったけど、普通にうまい。
フォークの使い方の心配をしていたが、二人共器用に食べていた。
俺教えることあるか?
「二人共、初めてとは思えない程フォークの使い方が上手いな。」
感心してそう言うと、少し照れた様子になる。
「私達二人共、毎日データベースを読み耽ってまして、知識だけは結構有ったんです。」
「うん、食事って非効率的だと思っていたけど、案外悪くない。」
和やかな雰囲気の中、これまた和やかにチルが告げる。
「そろそろ虫食い穴通るねー!」
・・・軽い。
転移門の妨害とか転移先の襲撃者とかどうする気だろう。
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