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地獄の地方都市

戦闘を書きたいと思ってはいるんですが、チルちゃんやロヴィじいさんが優秀で回避されてしまいます。

どうしたものか。

 航路変更から時間を忘れ、砲や防壁の練習に明け暮れていた成果だろう、砲を使った際の対CPUの的中率は9割5分となっており、最高難度も突破できるようになった。防壁も、敵の攻撃に合わせた展開が出来るように成ってきたと思う。

…慣れが妙に早いのは、基礎知識のお陰なのだろうか。


そんな事を考えながら昼食を食べ終えるとロヴィから報告を受ける。


「トシヤ様、予定通り間もなく虫食い穴に到着いたします。」


「そっか、もうそんな時間なんだ。何か注意することってある?」


「そうですなあ、転送先は僻地の為問題は無い想定では御座いますが、現在のデータを保持しておりません為、確実な安全は保証されておりません。万一に備え、全周モニタから防壁を貼れるようにしておいていただけますかな。」


う・・・全周モニタか。砲の練習のときに使ったけど、360度の視界を圧縮してひと目で見られるようにされたもので、まだ少し慣れていない。練習の時はゴーグルのようなヘッドセットを付けたけど、ここでも同じだろうか。


「お願いねトーヤ!私は隠蔽を掛けないとだから、ちょっと反応が遅れちゃうと思うの。」


隠蔽は、魔法を使用した際に検出される魔導反応と呼ばれるエーテルの波を、出てくる波と真逆の波を当てる事で打ち消すらしく、実行にはかなりリソースを食ってしまうそうだ。

・・・一度説明をうけたけど、いまいちピンときてない俺では、暫く出来ない真似なんだろうなあ。


「わかった、やってみるよ。全周モニタ、もうつけておいていい?少しでも慣れておきたいんだ。」


畏まりました、とロヴィが答えると、艦長席に接続されたゴーグルが出現した。・・・装着したけど、やっぱり慣れない。最新技術なら視界を拡張してくれるんだろうなあ。無い物ねだりしても仕方ないけど。


幸い、魔力量は大きいんだし、少し大雑把でも広い範囲で防壁を貼るようにしよう。

しばらく、防壁を出したり消したりしていると、船の進路上遠方に、ふちが淡く輝く真っ黒な円が有る事に気づく。前世の記憶だとブラックホールに見えるんだけど、大丈夫かな。


「進路上にブラックホールみたいなのが見えるんだけど、大丈夫?」


「それが虫食い穴よ!近くから干渉して、穴を広げて無理やりワープしちゃうの!」


ブラックホールって大質量ってだけで実際は天体だと思ってたんだけど・・・穴があるんだなあ。


「干渉可能距離に到達しました。トラッカー、転移状態へ移行。次元干渉機構起動。接続。成功。航路拡張、保持。安定、120%維持。反転炉保・・・」


ロヴィによる転移シークエンスの読み上げの間、気を張ってモニタを睨んでいたおかげか、視界のすみが光ったことに気づく。


攻撃か?確証はない。考える暇はない、防壁を展開する。


直後、ズン・・・と鈍い衝撃音が響き、船体が揺れる。


「トーヤナイス!ううー、隠蔽してたみたいね、宙族かなあ。」


「保護機構中断、緊急転移。衝撃に備えて下さい!」


「合わせるね!トーヤは船全体に防壁をおねがい!」


ガガガガガと、船体が削られるような音とともに小刻みに揺れる。

視界が黒く、白く、目まぐるしく切り替わっていく。チルに言われた通り、必死に防壁を船全体に展開する。



数秒後、揺れが収まると、視界に豊かな自然が飛び込んできた。緑の山々、澄んだ川、流れる先に海も見える。


「転移成功。次元干渉機構終了。外壁損傷5%。損害制御。航行可能と判断。トシヤ様。お見事でした。」


転移は成功なのか、地獄らしくないところにいるんだけど。


「よかった、防御はできてたんだね。ここが地獄?」


「はい、上層3区。ショーキ領で御座います。チル様、撹乱有難うございます。」


「どういたしましてー!これで虫食い穴は、暫く使えないよ!隠蔽終わるね!」


予想してた地獄との違いに戸惑っていたけど、追っ手の事まで考えてなかったなあ。仲間が優秀で本当に有り難い。


「しかし、威嚇だったのでしょうが、衝撃で機能のいくつかに損害が出てしまいましたなあ、トシヤ様の防壁で守って頂いてこれとは、世代の差による性能差が大きいようですなあ。」


そりゃあ、3万年違うんじゃなあ・・・しかし、損害か。


「それって、大丈夫なの。」


「ご安心下さい。一度点検せねば転移は危険ですが、通常航行であれば支障はございません。」


取り敢えずは大丈夫ってことか。盟邦なら修理もできるだろう。


落ち着くと、モニタに映る景色を眺める余裕も出てくる。

山、川、森、海、なんというか、綺麗だけど前世で見た風景とあまり差は感じないな。人の過ごした様な痕跡が見えないのは気になるけど。・・・いや、遠くに城が見えるな。首里城みたいな赤い城だ。


「あの城が目的地?」


「左様でございます。まもなく通信が届くと思われますので、応対は私が行いますが、一応、心構えをお願いいたします。」


心構えか。取り敢えずゴーグルを外して、身だしなみを確認してみる。問題はないかな。

管制室のディスプレイ郡から見えている景色は、やはり地球と大差がない。ここ数日、異空間やら宇宙やらで風変わりな景色ばかり見ていたから、懐かしい気持ちになっていると、管制室に女性の声が響いた。


「こんにちは、トラッカー号。こちらは辺獄3区ショーキ領、航空管制オペレーターです。領空内へのアクセスに伴い、航路と目的の送付をお願いします。」


普通の女性の声だ。いろいろと地獄っぽさを感じない。


「承知しました。航路データを送付します。目的についてはショーキ様の盟友のご子息の保護の為で御座います。」


「盟友の・・・?承知しました。着艦許可については上長経由で上に相談致します。修正航路を送付しましたので

指定空域にて空中待機をお願いいたします。」


ロヴィが承知しましたと答え、通信が途絶える。


「なんか、思ったよりあっさりしてたね。」


「以前訪れた地ですからなあ。記録も残っていたようで安心しました。これならばショーキ殿に問題なく伝わることでしょう。」


名前を伝えなくてよかったのか気になって訪ねたが、貴種は基本的には通信等で名乗らないそうだ。


理解しがたいけど、「察せないだろうから名乗ってやった」といった上から目線な発言に聞こえてしまうらしい。変な礼儀作法だなあ。というか、今みたいな緊急事態なんて察せるわけないと思うんだけどなあ。


・・・なんて事を考えていた事がフラグになったのだろうか、目の前の空間に少しひびが入る。


「随分と久しいなロヴィ。それがブルークのところの世継ぎか。」



そういいながら、厳つい顔に立派すぎる顎髭という組み合わせのおっさんが現れた。


気に入って頂けたり、続きに興味を持っていただけたら評価やブックマーク頂けると幸いです。


どうぞよろしくお願いいたします。

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