思い出話と新しい魔法
投稿開始より一ヶ月経過しました。今日の時点で7000近いPVいただいていまして、当初考えていたよりかなり見て頂けていて有り難い限りです。
少しは慣れてきて、ペースも上がってきたとは思っていますので、恐らく1部は後一ヶ月で書ききれるんじゃないかなと。
仕事が平和であることを祈るばかりです。(忙しくなるフラグ)
うーん、コームに疑われるような事もしてないし、それに、俺への態度も良かったような。
「コームの俺への態度は悪くなかったよ。ただ、よくわからない事までべた褒めだったなあ。落ち着いてるー、とか、俺なら悪い領主にならないーとか。」
ハァ、とため息をこぼしつつロヴィが答える。
「まったくあ奴め、変わっておらんなあ。・・・そうですなあ、トシヤ様は観察されていたのです。高過ぎる魔力を持ったが故ですな。貴族家の者は、使用人に対して尊大な態度をとるのが当たり前、と考えている方が多う御座いますから。態度や知識、魔法の使用など、生まれたてとしては有り得ぬ行動を取らぬか確認していたのですよ。」
「でも、何のために?」
「場合によっては、トシヤ様をお隠しになるよう進言するつもりだったのでしょう。あ奴、あんな外見はしておりますが、臆病者でしてな。少しでも疑念があれば、晴らさねば落ち着いていられぬのです。」
悪魔としか思えないようなイカつい見た目してる割に、繊細なんだなあ。しかし、隠すってのは何かの隠喩かな。
「隠すってどういう意味なの。」
「そうですなあ、幽閉か殺害か、ですかな。殺害にまで至るのはよほどの事ですが。」
ええ、せっかく転生出来たのにそんなお先まっくらな。
そんな俺の不安に気づいたのだろう、ロヴィが穏やかな口調で補足する。
「ご安心下さい、トシヤ様がブルーク家に害をもたらす者で無い事は、僭越ながら私が説明させていただきます。戻りましたら、呼びつけてやりましょう。」
「わたしも一緒に言うね!トーヤはわるいこじゃないって!」
「助かるよ、ありがとう。」
二人の説得で上手くいくといいなあ。最悪の場合は、ビームぶっぱなしながら逃げるか・・・?そう考えると、一応、魔法の練習もしておきたいな。
しかし、コームのあれは演技だったんだなあ。でもまあ、考えてみたら当たり前なのかも。ビームで異空間ぶっ飛ばすような子供が生まれて、それが転生者ってわかってるなら警戒もするよな。
その後は、ロヴィから、コームの昔の話を聞いた。
知り合った当時から、臆病なのは変わらず、慎重すぎて、まずは行動するぞって考えの初代とは、よく意見をぶつけ合っていたそうだ。
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「すっかり話し込んでしまいましたな。お付き合い頂きありがとうございます。」
「いや、俺も面白い話が聞けてよかったよ。」
「そうね!帰ったらコームにいろいろ言ってやるんだから!」
・・・また、顔を掴まれて涙目に成るチルの姿が想像できる。
「うん、まあ、程々にね。・・・それと、移動の間に魔法の練習ってできないかな。万一に備えて、ちょっとでも覚えて置きたいんだ。」
「トシヤ様は勤勉でいらっしゃいますなあ。」
「出来るけど、守りや治癒がメインになっちゃうね。あぶない系はトーヤパパに申請を通さないと覚えれないの。今思うと、たまたま練習用ビームの申請を通しておいてよかったあ。」
練習用だったんだあれ。空間消し飛んだんだけど・・・いや、忘れよう。うん、忘れよう。
ええと、守りの魔法か。覚えておいて損はないだろう。
「私は船の管理がメインですので、お伝え出来ることは余り御座いませんが、こちらをお受け取りいただけますかな。」
そう言うと、目の前に赤い宝石がはまった指輪が出てくる。
「魔道士は予備の発動体を持っておくのが基本でしてな。魔力の底上げにもなりますし、いえ、トシヤ様程ですと余り差はございませんな。ですが、よろしければ万一に備えてお持ち下さい。現代の魔道士は発動体を肉体に埋め込んでいるとの事ですので、使うことは余り無いと思いますが。」
「ありがとう。発動体ってのは杖ってことだよね。」
「そうよー!うーん、私が壊れるって領主くらいのひとと戦わないと無いかなあ。でもそうね!一応右手につけておくといいよ!」
「右手ね、わかった。」
邪魔にならないのは薬指だろうか。右手なら薬指でも誤解を招くことはないだろうし。いや、そもそも結婚指輪って概念あるのかな。少し大きいな、俺の指には合わないかも、と思っていると、指輪から、少し力を吸い上げられるような感覚がしたあと、指と同じサイズに縮んだ。こうなるのか。
「それと、魔法だけど、登録してくれればとりあえずは使えるよ!先ずは防御隔壁覚えてみる?」
「チルが出してくれてた奴だね。覚えてみるよ。」
「それでしたら、運動場へどうぞ。殺傷能力のない砲をご用意しておりますので、そちらで練習されるのがよろしいかと。」
殺傷能力はない、でもダメージは有るってオチはないよな。
「・・・痛くない?」
「ご安心下さい。被弾した場合は、被弾箇所がわかるようになっておりますが、痛覚は感じません。」
ならいいか、痛いのは嫌だしなあ。
砲はビームだった。当たると得体のしれない感覚が走る。痛くはないけど、慣れない感覚だ。
防御隔壁の魔法は、「隔壁」で登録した。「壁」、でもよかったんだけど、味気なさすぎるとチルの抗議が有り却下された。隔壁は使い勝手がいい。思念で指定した先に、魔力の壁を作るだけの魔法だけど、父のビームくらいじゃなければ突破されないそうだ。
いざというときのために使い慣れておこう。
結局その日は、空腹がピークを迎えるまで、防御の練習に費やした。
空腹を切っておいたほうがいいかと悩んだが、美味しい晩ごはんの前にその選択肢は消し飛ばされた。
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