受け入れ
何があったんでしょう・・・
昨日更新した1日の最多PVが本日22時の段階でもう更新され、758となっています。スカウターの故障か?
累計も5500を超えました、原因がわからずあたふたしていますが、なんにせよ、アクセス有難うございます。楽しんでいただけますように。
夢を見た。
前世の母親の夢だ。ここ数年、おぼろげにしか思い出せなかったのに、不思議とはっきりと顔が見える。
我が家は平凡な家庭だったと思う。両親と、姉と、俺の4人家族。
普通の食生活、たまに程々に贅沢な食事、程々に遊興に金を使い、よく家族4人で過ごしていた。
だが、俺が小学生に上がった日。両親と姉は交通事故で死んだ。
母は、かばうように俺を覆いかぶさって死んでいたそうだ。
そんな母の胸に抱かれ、穏やかな吐息を聞いている。
会話は何もない。でも、とても、とても心地良い。
母は恨んでいただろうなと、長らく考えていたが、今はじめて違うと断言できる。
俺を守った事を、誇りに思ってくれてる。
そうだと、わかる。
「どうか、幸せに。」
覚醒の最中、聞こえた声は、誰の声だったか。
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目が覚めると、俺の手を握り微笑んでいるチルがいた。
昨日、取り乱したことを思い出してしまい、少し気恥ずかしい。
「おはよ、トーヤ。」
穏やかな声。
「おはよう、チル。昨日は有難う。お陰で、少し整理がついたよ。」
「ううん、私こそありがとう。」
お礼を返された事が理解できない。その困惑が伝わったのだろうか、チルが言葉を続ける。
「んっとね・・・つらいこと、心の中のこと、人に言うのって難しいとおもうの。それでも、トーヤがしっかり教えてくれて、嬉しかった。だから、ありがとう。つらかったり、なやんだりした時は、何でも言ってね?」
そうか、俺は今世でもこんなに想ってくれる存在が居るんだ。
この巡り合わせにたどり着けた幸運を思うと、不幸続きだった前世も悪くなかった、そう、思えてしまう。
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管制室に移動すると、ロヴィがこちらを見ている。
様子をうかがっているようだけど、なんだろう。
「おはよう、ロヴィ。」
「・・・おはよう御座います、トシヤ様。お加減は如何でしょうか。」
ああ、泣いてるの聞こえちゃったのかな。さっきの様子は、心配してくれてたのか。
「心配かけちゃったね、ごめん。もう大丈夫だよ。」
目の光が強くなる。驚いてるのかな・・・?
「大変ご立派で御座います、トシヤ様。・・・貴方はこれからも様々な苦難、困難に相見える事となりましょう。しかし、それと同じように貴方を慕う者もまた、現れ、貴方の力と成るでしょう。どうか、お一人で抱え込まぬよう。皆の助力を受け入れるのも、領主の勤めで御座います。」
元気づけようとしてくれている。それがひどく嬉しい。
どうも、やはり、人間関係に恵まれているなあ。人間は俺しか居ないが、それは些細な事に思える。
せめて、お礼くらいしっかり伝えよう。
「ありがとう、ロヴィ。俺は何もできないから、色々頼らせてもらうよ。」
「ご謙遜を・・・ですが、私がお役に立てるのでしたらそれだけで報われます。是非に。」
コホンと咳払いをして話を続ける。
ちょいちょい人間臭い仕草をするなあ。
「さて、トシヤ様、目的地までは後50時間程要します。お食事や湯浴みのご用意はございますので、ご希望が有ればお申し付け下さい。飲食が不要とは伺っておりますが、美味を味わう事も、心的負荷の解消に繋がりますぞ。」
食事か、まだVRで食べただけだから、食べてみようかな。
いや、しかし。
「うん、せっかくだし後でいただくよ、ただ、もう少し砲台の練習をしておきたいんだ、いいかな。」
「それは構いませぬが・・・そうですな、それでは、ご要望が有りましたらいつでもお声掛け下さい。」
少しずつ、戦うこと、命を奪うことへの心構えをしておきたい。
その一歩目が、ゲームで敵船を撃つことってのは少し情けない気がするが・・・
俺が悩んでいることに気づいたのか、チルが後頭部に抱きついてくる。
・・・そうだな、少しずつでもやっていこう。
「トーヤご飯食べるのなら、お腹空くようにしておくね!」
・・・そういうのもあるのか。
「うん、お願いするよ。えっと、どれくらいで食べたくなりそう?」
「3時間くらいかなあ、ロヴィ爺!おねがいね。」
「ロヴィじいですか、まあ、そうですな。爺ではございますからなあ。」
いじけた・・・?目の光が弱くなっている。
俺の視線に気づいたロヴィが慌てて続ける。
「いえ、畏まりました。3時間後にご用意させていただきます。トーヤ様はお嫌いなものはございませんかな。」
「特に無いよ。でも、えっと、食材とか大丈夫なの。」
3万年前の食材だと、熟成しすぎて土になってそうだ。
「ハハハ、ご心配されるのは当然ですな。ですが、ご安心下さい。下層が農場区画でして、そこで栽培した素材を調理してご提供致します。」
農場を3万年維持したのか・・・気が遠くなる話だ。
その努力に報いたい。なるだけ、食べてあげたくなる。
「すごいね、あとで見に行っていい?」
「それは構いませんが・・・工場のようなものでして、楽しめるような物は特にございませんよ?」
いや、宇宙船内で自給自足出来る農場ってだけで興味津々だけど、時代の差からくる価値観の相違か。
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砲台の練習後に食べた料理はなんというか、普通に美味かった。
牛肉の味がする、キッチリ長方形になっている肉のステーキなんて初めてだったけど。
成形してるのかな。
デザートで出てきた、梨に似た果物も、やはり四角い。
この調子だと、サラダや付け合せの野菜も元は四角いのかもしれない。農場で見てみよう。
まあ、見た目が変わっていようと、食事の文化に大差はないようでよかった。
VR食事会のときは虹色の肉とか、見た目が常時変形してるよくわからないものとかあったしなあ。
その後、浴室についてこようとするチルをなんとか説得し、一人、風呂で疲れを癒やした。
・・・肉体的な疲労は感じてないんだけど。
それでも、なにかが癒えた気がする。
風呂の間離れていた反動なのか、寝付くまで、チルは俺の手を握って離してくれなかった。
反応、感想を下さる方々に感謝しております。
ただ、お礼のレスポンスでネタバレしてしまいそうで、文字で返答する勇気がございません。
お許しください!




