悪魔と対話
目が覚めると俺の体は緑色の液体に沈んでいた。
不思議と焦りはなく、だが、頭に妙な感覚がある。
脳みそを直接弄られている・・・?でも心地いいような・・・安堵感もある・・・
思考に、霧がかかっているように考えがまとまらない。
不安にはなるが、力を入れても体はピクリとも動かず、そうやってあれこれささやかな抵抗を試みているうちに、また意識が途絶えた。
それからどれくらいたったのだろうか。
うっすらと思考がもどって来る。
いつのまにやら液体からは解放されたようで、今は柔らかな椅子に座って居るようだ。
まだ霞がかった意識のなか、目を開けるとそこには、スーツに身を包んだ悪魔が立っていた。
悪魔と確信を抱いたのは、羊の様な角と三対の翼を持ち、真っ青な皮膚に残虐な笑みを貼り付けていたからだ。
その悪魔が大仰に手を広げ、言葉を発する。
「お誕生おめでとうございまス、トーヤ様!」
再び意識を取り戻したのはいいが、目の前に立つ存在にどう反応すればいいのかわからず、言葉を発せずにいると、悪魔は穏やかな声色で言葉を続ける。
「あァ、前世返りなされてしまいましたカ。困惑は有るかと存じますガ、先ずはご自身が何者か思考してみていただけますカ。」
「あ、ああ・・・俺は会社員・・・?の・・・いや、違う・・・トーヤ、ブルーク?・・・なんだ、この記憶は・・・」
「希に生誕時に前世より記憶を持ち越すことがあるのですヨ。いずれ統合され違和感は無くなりますのでご安心下さイ。」
取り敢えず、いきなりとって食われることはなさそうだ・・・
そう考え少しずつ落ち着きを取り戻したのはいいが、今度は記憶に違和感が有ることに気づく。
父親、母親、家系、魔法、世界の在り方、何もかもが自分の常識と違う知識が頭にある。
整理しようにも、頭に刻まれた情報が余りの膨大さ過ぎてフリーズしていると、
「前世返りを起こしているにも関わらズ、これ程落ち着かれているとワ!トーヤ様は将来大物になりますナ!」
などと悪魔が思考を遮り話してくるので、寝起きの頭を総動員しなんとか気になっていることを口にする。
「・・・その語尾を高音にするのって癖なのか。」
「おおウ!ご不快でしたら申し訳なイ!私、再創造の際に管理者にそう定められてしまったものデ。」
「そうか、何か悪意があるわけではないならいいよ。というより、ごめんな、生まれついたものに対して。」
「いエ!いエ!いエ!管理者の奴メが定めたことなド、悪意を感じる方が自然でございまス!ささ、まずは落ち着かれる為にも寝台へとお送りしますのデ、そちらでお休みくださイ!」
悪魔がそう言ってすぐに、うっすらとした光に包まれたかと思うと、体は柔らかなものにつつまれ横になっていた。
「こちらがトーヤ様の寝室でございまス!今はお休みいただキ、お目覚めになりましたらご両親の元に参りましょウ!」
そう言うと悪魔は、うっすらと黒く輝いたあと霧のように消えた。
謎の存在との対面からくる緊張から解放され、情報の洪水に翻弄されていた精神は、あっさりと意識を手放してしまった。
※2019/10/13 記述内容を一部修正。
※2019/08/14 05:50 誤字修正