終わって始まり プロローグ
西暦2019年8月某日
婚約者に浮気をされていることが、同僚経由で発覚した。
元より、叔父の紹介で知り合った仲で、お互い事情があり婚約に至ったが、それほど強い愛情を抱いていたわけではない。
だけれども、幼い頃に失った家庭を再び築くチャンスだと思い、必死に頑張ってきていたんだが、無駄だったようだ。
俺の人生はろくでもないもんだ。
幼い頃に家族を亡くし、仕事は必死に頑張ったが報われず、婚約者には結婚前に浮気され、失意のまま夜の町を歩いていた。
そして、マンションから落ちてきた何かに頭を打たれ、死にかけている。
薄れる意識の中、せめてこんな運命を用意した神様を呪ってやろうと、恨み節を叫んでいたところに、なにやら声が聞こえてきた。
(そんなにアイツが憎いなら、アイツの死後に送ってあげようか?)
「…ゃ…な……よ」
そりゃいいな、頼むよと発したつもりの言葉は、血を失いすぎた為か、意図した音にはなってくれなかったが、声の主には届いたようで(了解)と聞こえた直後世界は暗転し、そこで俺の意識は途絶え…
新皇紀30660年8月
遥か未来へと生まれ変わった。
後に知ることとなるが、そこは魔法科学の進歩とそれに伴う悪魔との交流により、神殺しを実現した皇帝が興した数多の宇宙を治める大帝国。
そして、その神殺しを為した一人を初代に持つ貴族、ブルーク辺境伯家。
俺はその大貴族家の、嫡男として生まれ落ちることとなる。
(ほんとはここからマシになるとこだったんだけどね…)
転生前にうっすらと発された言葉は、魂を失った肉体には届かず、虚空に消えた。
※2019/10/13 主人公の生い立ちを加筆。年代について追記。転移後の世界について改稿。
※2019/08/14 04:38 誤字修正