クリスの涙目、武器屋のジト目
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冒険者証が出来るまでの間、ヒデオはクリスに連れられて武器屋へと向かった。
崩れてしまった武器を新調するついでに、案内しておこうという腹積もりだ。
「ここが、この街で唯一の武器屋よ」
ギルドから歩いて5分程、小さな街に相応しい小ぢんまりとした建物が見えた。
剣と杖が交差した紋様の丸看板が店前に掲げられていて、一見して武器屋だと言うのは分かる。
「小さい店だけど、本店が王都にある大店なのよ。この付近の魔物相手なら充分な武器が揃っているから、なんの心配もいらないわ」
特に何も言って無いのだが、クリスは武器屋のフォローをしだした。
先程まで”不良店”だの”粗悪品”だの言い喚いていたから、なにやら罪悪感でも覚えているのだろうか。
自己満足が済んだのか扉を開いて中へと入る、ヒデオもその後に続いた。
「らっしゃーい」
中に入ると、カウンターに肘をついた女性店員が気怠げな声で迎えてくれた。
一言発した後は中空に視線を向けている様子を見ると、丁寧な接客をするつもりは一切無いようだ。
「じゃあ、私は代わりの武器を買ってくるから。その間は好きにしてて」
クリスは近くにあった剣を手に取り、店員の元へと向かった。
吟味はしないのか、と商品棚に目を向ける。
「……なるほど、これならどれを買っても一緒か」
AWOでの武器は大きく分けて2種類、戦士系の『物理武器』と魔法使い系の『発動媒体』だ。
そこからさらにJob別に、使用制限が掛かっていく。
【戦士:重装】なら大型の装備が可能とか、逆に【魔法使い:攻撃】なら小型の装備しか出来ないなど。
詳しい説明はまたの機会にするが、AWOの武器は全8種。
防具も同じく8種で、こちらは使用制限が無い。
しかし代わりに重量というパラメータがあり、ステータスの敏捷値にペナルティがかかってしまう。
種類が少ない代わりにそのような多様性が有って、AWOではみんな試行錯誤を繰り返して楽しんでいた。
話がそれた。
ヒデオが店を見渡した限り、どうやらレアリティが1の物ばかりのようだった。
使用制限に掛からない限り、どれを選んでも大した性能の差は無さそうだ。
「お待たせ! 随分と熱心に武器を見てるけど、何か掘り出し物でもあったかな?」
「いや、どうやらどれも同じようなのばかりだ。もちろん、質が悪いと言う意味じゃ無いけどな」
むしろ全体的に安定した物ばかりで、質が良い方だと思う。
「うぅ……あんまり、虐めないでよ」
「いや、そんなつもりじゃ無かったんだけど……」
どうやら、クリスに対する嫌味のように聞こえたようだ。
「そ、そういえば……そろそろ冒険者証も出来上がった頃、かな」
涙目になって頬を膨らませたクリスに、少し狼狽えてしまうヒデオ。
更には、先程までこちらへ視線を向けすらしなかった女性店員が二人ををジト目で見つめている。
かなり気不味くなり、強引に話を変えてそそくさと武器屋から退出する事にした。
クリスはこのあと、グラスラビット狩りに戻るつもりのようだ。
「それじゃあ私はもう行くわ、また会ったらよろしくね……って、この街にいる限り会う事も多いと思うけど」
武器屋を出てクリスと分かれ、ヒデオは冒険者ギルドへと戻った。
冒険者ギルドで証を貰う事により、メニューの【ステータス】が開放されるようになる。
受付から離れ、邪魔にならなさそうな場所でステータスを確認しておく。