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ハズレJob【英雄】で異世界無双〜ゲームでは初心者向けのJobが、異世界ではチートでした〜  作者: INGing
1章 VR→R、ゲームの中によく似た世界
20/22

安酒は酒じゃない、貴女の笑顔が報酬です

ブックマークありがとうございます。

 ――バンっ!


 報酬を貰い終え、そろそろ宿に帰ろうかと言う頃。

 ギルドの入り口が、激しい音をたてて開かれた。

 そこから現れたのは……肩口から激しい出血をし、それを抑えながら苦悶の表情を浮かべた――。



「クリス!!」



 ――であった。

 それにいち早く気付いたヒデオは、名を叫び慌てて駆け寄る。



「クリスさん! 誰か、担架を!」



 次に先程までヒデオの対応をしていた受付嬢が気付き、他の職員へと担架を要請する。



「いい……大丈夫、医務室までは歩けるから」



 それを軽く首を振って制止するクリス、そのままよろよろと階段の方へと歩いて行った。

 以前、ギルドの施設の説明を割愛したが――軽く、ここらでしておく。


 1階については前述の通りだが、2階には食堂や売店……それに医務室や図書室など、様々な施設がある。

 怪我人を態々2階まで運ぶのは、何かと不便だと言う意見もあるが。

 これらの施設の内、医務室が出来たのはつい最近――つまり、一番新しい施設で場所が2階しか無かったのだ。


 本来、冒険者は”全て”自己責任と言うルールがあり……怪我をしようが、最悪死んでしまおうがギルド側に一切の責は無い。

 冒険者が怪我をした場合は、自分の【スキル】で治すか聖職者に【治癒】してもらうか【回復薬】を使うかのいずれかだ。

 しかし、低ランクの冒険者はそれらを行う技能や金銭が無く……あまりの死亡率の高さに「簡易的にでも治療施設を用意すべき」と言う、後輩想いの【高ランク冒険者】の意見を汲み取って設置された。


 ――と、いうのがAWOの公式設定。



「クリス、大丈夫か?」



 足取りの覚束無いクリスに寄り添い、そっと肩を貸すヒデオ。



「あり、がとう。また借りができるわ、ね」

「この程度、貸しにも入らないさ。ほら、足元気をつけて」



 申し訳なさそうなクリスの言を、きっぱりと否定しておく。

 ただ肩を貸すぐらいなんてこと無い事だ、態々気にする方がおかしいとヒデオはクリスの足元に気を配った。



「悪い、わね」

「だから、悪くないっての」



 ヒデオはこう言った社交辞令じみたやり取りでも、態々返事を返す質だ。

 店員の「お待たせしました」に対して「待ってないよ」や、何かを頼まれた時の「すいませんが……」に対して「気にしないで」など。

 ヒデオに対して、言葉を受け取って欲しい場合には――。



「……ありがとう」

「うん」



 ――の、一言でいいのだ。


 クリスを医務室まで送り届け、ギルド内の食堂に腰をかけた。

 中まで一緒に……は、流石にプライバシーを侵害し過ぎる。

 そう思ったヒデオは、医務員に声だけ掛けて外で待つ事にしたのだ。


 AWOの時も含め、初めて利用するギルドの食堂。

 一番安い”果実酒の水割り”を頼み、医務室を注視しながらそれを飲む。



「……全然、果実”酒”って感じがしないな」



 それもそのはずで、果実酒の水割りと言うより”水を殺菌する目的で酒を混ぜた”というのがコレの正体だ。

 ヒデオがいた地球程、この世界の衛生状況はよろしく無い。

 生水を飲もうものなら、数日は下痢と嘔吐に苦しめられるだろう。

 つまり、これらは子供でも飲める飲料であり――この世界では、ジュースと変わらない物なのだ。

 お値段は大ジョッキで銅貨1枚、どこの食堂でも一番安価な物だ。



「まぁ、向こうでも別に酒が好きだった訳でも無いし……」



 別に良いんだけどね、等と一人ごちていると医務室の方でなにやら慌ただしく動いている医務員が見えた。



「何かあったんですか!?」



 クリスの身に何かあったのかと、心配になり話しかけた。

 見たところ、傷自体は深くなくスキルレベルⅠの【回復】でも充分治る物だった。

 ヒデオの見たては、そう間違って無く……。



「あ、え……傷自体は塞がったんですが、何故か苦しそうなままで……あ、ちょっと!」



 ヒデオの剣幕にしどろもどろになりながら、何とか答える医務員。

 その言葉を聞いて、慌てて医務室へと飛び込んだ。



「ヒ、デ……オ……」

「クリス……」



 医務室の簡易的なベットに横たわるクリス、その表情は歯を食いしばり――僅かに笑っているように見えた。



「これは……破傷風?」



 破傷風とは土壌に多く潜伏している破傷風菌が傷口等から入り、開口障害や痙笑――最悪は呼吸障害等を引き起こす物だ。

 当然、そうなってしまっては死に至る。


 本来は潜伏期間等がある為、今日傷を負って今日発症と言うのはあり得ない。

 地球の時に雑学として覚えた知識だが、それとは微妙に違う状況にヒデオは狼狽えた。

 しかし、他に心あたりのあるものが無かったので”異世界版破傷風”としてヒデオは記憶の中の情報を改めた。



「どういう風に治療したんだ?! 消毒は?!」

「え? しょうどく? でも、傷はグラスウルフによるものだから……グラスウルフは【毒】を持っていないし……それに、私は”アンチポイズン”は使えないし……」



 医務員が言ってる【毒】は、魔物のスキルである【毒】の事だろう。

 【魔法:異常】のスキルでも付与可能な物だが、その対処として【回復:異常】のスキルがある。

 そう言う物では無く、ヒデオが言っているのは傷口の菌を洗い流す”消毒”なのだが。

 どうやら”衛生”と言う観念自体がこの世界には無いのかもしれない、先程の”ジュース”も「何か、酒を入れたら飲んでも大丈夫だった」程度の物だったのだろう。



「くそ! 破傷風が”何”に属してるか分かんないと、どうしようも無いぞ!」



 スキル【回復:異常】は、他のスキルと同じく”唱えるだけ”で0からⅠにまでは上げられる。

 【回復:異常Ⅰ】のスキルで治せる物は、毒や火傷などだ。

 しかし、もし破傷風が”病気”扱いならば【回復:異常】の必要スキルレベルはⅨとなる。


 そう、ヒデオでは一生掛かっても治す事が出来ないのだ。

 だったら、自分のスキルレベルを上げている時間で誰か他に【回復】が使える人を探しに行ったほうがいい。


 ヒデオは、その”二者択一”に迫られていた。



「どうしたら……」



 苦しそうに呻くクリスを眼下に見据え、頭を抱えて悩むヒデオ。



「――待てよ、確かクリスって……」



 そこで一つの事を思い出した。


 この女性、クリスはAWOでは名前すら出てこないチュートリアル用の”NPC”だった。

 この世界では実際に生きている”人間”だが、確かにそうだった事を思い出す。


 そして……AWOには”PCプレイヤーキャラ”には使えず、”NPCノン・プレイヤーキャラ”だけに効果を発揮するスキルがあった。



「だったら……【索敵:鑑定Ⅴ】!!」



 それは【鑑定】のスキルである。

 名前・性別・年齢・ステータスなど、完全なる”個人情報”を閲覧する事が出来るスキル。

 魔物だろうがNPCだろうが、そこに区別は無い。


 唯一、PCにだけは個人情報保護の観点から効果を発揮しないのだが。


 予想通り、上手くスキルが発動し……クリスの個人情報プロフィールがそこに表れた。



――――――――――


Name:クリス・フォン・アインス=リード ♀


Age:18


Size:87・56・72


State:毒


Level:2


Exp:46/1000


HP:14/80

MP:63/200

Str:8+4

Vit:8+1

Int:20

Min:14

Dex:20

Agi:14

Luc:14



Skill:


【剣術】

強撃Ⅰ:14/200

【鎧術】

行軍Ⅳ:Complete/400



Equip:


【weapon】

Main:鉄の剣(Str+50%)

Sub:


【Armor】

Body:皮の鎧(Vit+20%、重量2)

Shield:



Title:

王族の中の変わり者


――――――――――



「よし、状態は毒だ! これなら治せる!」



 クリスのステータスを覗き、ヒデオは安堵の声で叫ぶ。

 途中、色々と見えてはいけない物があった気はするが……それはスルーする。



「クリス、もうちょっとだけ頑張れ! オレが絶対に治してやるから!」

「あ……うぅ、あ……」



 クリスの状態は刻一刻と悪くなる、既に体は弓なりに仰け反り呼吸も困難な様子だ。



「【回復:異常】……【回復:異常】……【回復:異常】……!」



 ヒデオはクリスの手を握り、スキルを延々と唱えだした。

 0からⅠに上げる為に必要な回数は、たった50回。


 その50回が、ヒデオには果てしなく遠い物に感じた。



「【回復:異常】……【回復:異常】……!!」



 クリスの身体が次第に痙攣しだし、もう後が無い様に思える。



「【回復:異常】……よし、レベルアップ! 【回復:異常Ⅰ】!!」



 ようやくスキルレベルが上がり、クリスの手を強く握ってスキルを使う。

 クリスの身体が淡く光を放ち、その光が収まった頃……先程までとはうってかわった、穏やかな表情で横たわるクリス。



「良かった、間に合った……」



 無事に毒を取り除けた事に、ほっと息を吐くヒデオ。



「ヒデ、オ……」

「ああ、まだ無理するなよ。毒は消えたけど、体力はまだ回復してないんだから」



 ゆっくりと顔を傾け、ヒデオを見つめるクリス。



「本当に、ごめんなさい……」

「だから……」



 謝罪をしようとするクリスに、いつもの様にツッコミを入れようとするヒデオ。

 しかしクリスは首を軽く動かし、それを制止した。



「助けてくれて、ありがとう……」



 そうお礼を言うクリスは、弱々しく――しかし、とても美しい笑顔だった。



「……うん、無事でよかった」



 その笑顔に軽くドキリとさせられたヒデオは”何よりの報酬だな”などと、少し照れながら答えたのだった。

上昇した数値は、横に↑○○と記入しておきます。

――――――――――


Name:原田 英雄


Age:18


Rank:4


Job:英雄


Level:4


Exp:0/1000


HP:3080/280(+2800)

MP:3064/280(+2800)↓2

Str:28(+280)

Vit:28(+280)+308

Int:28(+280)+154

Min:28(+280)

Dex:28(+280)+154

Agi:28(+280)

Luk:28(+280)



Skill:


【剣術】

強撃Ⅰ:0/100

連撃0:11/50

飛斬Ⅰ:0/100

【投擲】

武器0:0/50

防具0:0/50

道具0:0/50

【鎧術】

鉄壁Ⅶ:Complete/350

重化Ⅶ:Complete/350

行軍Ⅵ:170/350↑15

【盾術】

城壁0:0/50

挑発Ⅶ:Complete/350

盾撃Ⅶ:Complete/350

【弓術】

鷹眼Ⅶ:Complete/350

強弓Ⅶ:Complete/350

矢雨Ⅶ:Complete/350

【歩行】

隠密Ⅴ:290/300

縮地Ⅴ:290/300

空歩Ⅴ:290/300

【魔法】

単体0:0/50

範囲0:0/50

異常0:0/50

【魔力】

変換Ⅶ:Complete/350

譲渡0:0/50

減少0:0/50

【回復】

単体Ⅶ:Complete/350

範囲0:0/50

異常Ⅰ:1/100↑51

【結界】

物理0:0/50

魔法0:0/50

治癒0:0/50

【強化】

攻撃0:0/50

魔法0:0/50

付与0:0/50

【弱化】

防御0:0/50

耐性0:0/50

速度0:0/50

【武器】

精製0:0/50

制作0:0/50

強化0:0/50

鑑定0:0/50

解体0:0/50

修復0:0/50

【防具】

精製0:0/50

制作0:0/50

強化0:0/50

鑑定0:0/50

解体0:0/50

修復0:0/50

【道具】

精製0:0/50

制作0:0/50

強化0:0/50

鑑定0:0/50

解体0:0/50

修復0:0/50

【地図】

把握Ⅶ:Complete/350

拠点0:4/50

転移0:0/50

【索敵】

鑑定Ⅴ:260/300

体力Ⅴ:260/300

魔力Ⅴ:260/300



Equip:


【Weapon】

Main:木の弓(Dex+50%)

Sub:銅の指輪(Int+50%)


【Armor】

Body:鉄の半鎧(Vit+50%、重量5)

Shield:皮の小盾(Vit+50%、重量5)



Title:


 英雄の中の英雄

(成長速度倍化)

 転生神の加護

(ステータス+1000%)



Money:1,077,600w↓100

――――――――――

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