ホセ・ザヴァンニ アレを義姉(予定)とは認めない2
それからもちょくちょく王宮内であのちんまい女を見かけるようにようになった。
本格的に王太子妃教育が始まったのだろう。
意外にも講師達の評価は中々に良いらしい。
うっかり口を滑らせて『王太子妃になどなってしまったら、色々面倒……』などと言ってハッと口をつぐむ姿に、あまり頭は良くなさそうだなと思ったものだが、本当に意外である。
とはいえ、王族との婚約を簡単になかったことになど出来るはずもなし。
いい加減諦めたから渋々ながらも王太子妃教育を受けているのだろうと思ったのだがーー。
◇◇◇
「あら、ホセ殿下。ごきげんよう」
王宮の廊下でバッタリと出会してしまった。
「今日も王太子妃教育か」
「ええ、これからダンスのレッスンがありますの」
「ふぅん。てことは、婚約解消は諦めたのか」
鼻でフッと笑ってやれば、ちんまい女は淑女の皮を脱ぎ捨てて、ムッとした表情を浮かべて噛み付いてきた。
「まだ諦めてはおりませんわ。これからですのよ!」
……呆れた。コイツ、まだ諦めてなかったのか。
「へぇ。婚約解消に向けて何か対策でも立てているワケ?」
「うぐっ。そ、それは……秘密ですわ!」
そう言いながら、今度は悔しそうな表情を浮かべる。
何ていうか、本当にもう、いい加減諦めればいいのに。
呆れを通り越して、何だか面白くさえ思えてくる。
「ま、頑張って? お・義・姉・さ・ま?」
肩にポンと手を置いてわざと耳元でそう言えば、耳を手で押えて口をパクパクと開閉している。
そんな姿を横目に見ながら自然と上がる口角をそのままに、後ろ手に手を振りながらその場を後にした。
普通の令嬢達と違って中々に面白いやつではあるけどな。
だがしかし。
アイツが俺の義姉(予定)だと、まだ認めたわけじゃないからな。
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翡翠




