ダニエル・マーティン
氷の王子様 8の頃のお話です
俺はダニエル・マーティン。
何を隠そう、近衛騎士団団長の息子だ。
そしてこの国の第一王子ウィリアムの幼馴染み兼片腕兼親友である。
気が付けば『氷の王子』なんて呼ばれるウィルのフォローをするのは、いつも俺の役目だった。
子供の頃から愛想のない奴で、身分や容姿に擦り寄ってくる者に対して、嫌悪感を隠す事なく今に至っている訳で。
俺?俺は誰よりもウィルの信用を得ていると自負している。
ある日、ウィルが国王様から次期国王としてパーティーを主催する様申しつけられたらしい。
上流貴族達との繋がりは大切だしな。
それは理解した。
だがな、フォローでなくて諸々の手配全てが俺の仕事になっているのは何故だっ⁈
婚約者のドレスや宝石などの手配だけは、ちゃっかり自分でしてやがる。
え〜と、これって、信用されてるから任されてるんだよな?
面倒だから全部押し付けたとかでは無いよな?
……ちょっと自信が無くなってきた。
そしてパーティーまで二週間を切った頃。
「ウィル、彼女とダンスするんだろう?練習はどうするんだ?講師の手配でもするか?」
ウィリアムはもうずっとダンスなど踊ってはいなかったし、練習などもずっとしていないのを知っている。
多少は体が覚えてはいるだろうが、このままだと恥をかくのは目に見えている。
ウィルだけなら自業自得でいいが、婚約者まで恥をかくのは気の毒だ。
そんな訳で練習させる事にしたんだが。
こいつは大の女嫌いで、講師といえども女と踊るのは嫌だとぬかしやがった。
我儘も大概にしろと言いたい。
じゃあ練習はどうするんだと言えば、ウィリアムはとんでも無い事を口にしたのだ。
「お前が相手をすればいい」
と……。
女と踊るのは絶対にしないし、今更ダンスの練習をするなど他の者に知られたく無いんだと。
まあ、他の者っていうのは、婚約者にカッコ悪いところを知られたく無いって事なんだろうが。
俺なら他にバレる事が無いし、女と踊らずに済むのなら我慢するとの事らしいが。
「アホかぁぁぁああ‼︎俺が我慢出来んわ‼︎」
何が悲しくて、ムサイ男二人が密着して踊らにゃならんのだ!
しかもソレ、俺が女性パートって決まってんじゃねぇか‼︎
ふざけるなぁぁぁああ‼︎
……などという叫びも虚しく、もう大丈夫だと言えるレベルになるまで、散々練習を重ねる事となった。
そして俺は、女性パートを完・璧・に、踊りこなせる様になっていた。
そんな無駄な能力いらねぇわ‼︎




