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少し食べ過ぎてしまった様だ。

午後の仕事までにはまだ少し時間がある。



「ダニーが探しに来るまで、膝を貸してくれ」



ゴロンと横になりリリアーナの膝に頭を乗せた。



「さっきまでウィリアム様に膝をお借りしておりましたから、今度は私の番ですね」



リリアーナはふふっと笑顔で言いつつ、私の台詞が気になった様だ。



「……あの、ダニエル様が探しに来ると言う事は、何かお仕事があるのではないのですか?

ここでゆっくりしていて大丈夫ですの?」


「いいんだ。急ぎの仕事は終えているし、あとは私でなくても大丈夫な案件だけだからな。

……それよりも、いつまでウィリアムと呼ぶつもりだ?

私はそちらの方が気になるのだが?」



そう言って、リリアーナのゆるいウェーブのかかった髪を弄りながら、答えを待つ。

恥ずかしがってなかなか呼んではくれないのだが、そんな姿も可愛らしく思い、ついこうやってからかう様に言ってしまうのだ。

これは私が悪いのでは無い、可愛いリリアーナが悪いのだ。

リリアーナはプクッと頰を膨らませると、



「気が向いたら呼ぶかもしれませんわ」



プイと横を向き、読み途中であった本を手に取ると、ページを開き読みだした。

これ以上揶揄(からか)うのはマズイと、ゆっくりと目を瞑る。

こんな穏やかな時間を過ごすのは、どれくらいぶりだろうか。

そんな事を思いながら、眠りに落ちていった。






「ウィリアム様?ダニエル様が迎えに来られましたよ?」



リリアーナに揺すり起こされ、膝から起き上がると大きく伸びをして、リリアーナの頭を撫でた。

自分で言うのも何だが、私は人の気配や音に敏感だ。

ダニエルがここまで近付いても起きなかった事に、少し驚いている。



「リリのお陰で良く眠れた。ありがとう」


「それは良かったですわ」



嬉しそうに答えるリリアーナが可愛い。



「リリはまだここに居るのか?」


「そうですわね、もう少しだけここで本を読んでますわ。涼しくなる前には部屋に戻ります」


「じゃあ、リリの好きなハーブティーとお菓子の用意をする様に言っておく」



リリアーナに用意するのは、カロリー少なめでも美味しいお菓子だ。

王城(ここ)へ来て、美味しいものばかり食べ過ぎて太ったと気にしていたからな。

パティシエにリリアーナが気にせず食べられる様なものをと頼んだら、毎日試行錯誤しながらも、新しい種類の菓子を生み出している。

彼曰く、とてもやりがいがあるとの事。

その調子で頑張れと言っておいた。



リリアーナが何か言おうと口を開きかけたその時。



「お菓子はまずいんじゃないの?またボタン飛んだら……」



ダニエルが余計な事を口走る。

彼がしまったという顔をしながら慌てて口に手を当てたが、もう遅い。



「何故あなたがそれを知っておられますの?

……ねえ、ウィル?あなたにしか話していない事が、どうしてこのマッチョに知られているのでしょうね?

不思議ですわね?」



リリアーナの口角は上がっているが目が笑っていない笑顔でそう言われ。

ダニエルと並んでその場に正座をさせられ、何故かリリアーナによって細かい三つ編みヘアにされたのだ。

時間を掛けて編まれた大量の三つ編み。

リリアーナの口から「今日一日解く事を禁止」と言われ、ダニエルと二人、この恥ずかしい頭のまま過ごす羽目になったのだった。



仕事に戻っても誰も何も聞いてこない。

聞かれたらまだ言い訳が出来るのだが。

それどころか誰も目を合わそうとせず、肩が震えている者までいる。

……これから軽度の違反者への罰は、三つ編みの刑にする事にしよう。

きっと違反者が減ることだろう。

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