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「もう少しだけ、こうしていても良いか?」
抱き締める腕を少しだけ緩め、リリアーナの顔を覗き込む様にして確認する。
すっかり忘れていたが、餌付けも膝に乗せるのもダメだとダニエルに言われていたのだ。
それに加えて抱き締めてしまってもいる。
今更感はあるが、もしリリアーナが嫌がる様なら直ぐに解放して謝罪しよう。
でももし。了承してくれたなら、少しは彼女も私を受け入れてくれたのだと思っても、いいだろうか……?
リリアーナの返事を、緊張しながら待つ。
彼女は少し考える様にして、そして頰を赤く染めながらも、小さく頷いてくれた。
私は喜びを隠す事もせず、ギュッと彼女を抱き締めた。
……どれ程の時間をそうしていたのか。
私はまた抱き締める腕を少し緩め、腕の中の彼女の顔を覗き込む。
ずっと、愛称で呼びたいと思っていた。
ずっと、愛称で呼ばれたいと思っていた。
なかなか言い出すタイミングが無かったのだが、今がその時なのではないか。
「リリと、呼んでもいいだろうか」
「え?ええ、構いません」
「では、リリは私をウィルと呼んでくれ」
「……」
リリアーナは視線を泳がせ、そして恥ずかしそうに
「今まで通りウィリアム様ではいけませんか?」
などと言うので、即却下してやった。
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最近のリリアーナがお気に入りの場所は、西側にある奥庭の小さな四阿である。
もともと人があまり立ち寄ることの無い場所だが、リリアーナがいる間は穏やかな時間を過ごせる様にと、護衛やお付きの者以外の使用人達は出来るだけそこを避ける様にしていた。
週末の今日は、近衛騎士達の訓練を早々に切り上げ、昼食を一緒にと誘いに来たのだが。
彼女は本を読んでいるうちに、ついウトウトと眠ってしまった様である。
私は彼女の横へと腰を下ろし、起こさぬ様ゆっくり頭を膝に乗せ、彼女愛用のひざ掛けをそっと掛けてやる。
膝に掛かる幸せな重みに、思わず笑みを浮かべる。
少し離れた所から見守る護衛たちやお付きの者が、それを吃驚した顔で見ていた事など、私は知らない。
気持ち良さそうに寝息を立てているリリアーナ。
頭を撫でていると、彼女の瞼がゆっくりと開いていく。
「起こしてしまったか?」
「す、済みません」
リリアーナは慌てて起き上がり、膝から彼女の重みが消えるのを、少しだけ残念に思った。
「そろそろ昼時だから、一緒にどうかと思って誘いに来たんだが」
「はい。それでしたら、こちらで一緒にランチにしませんか?」
リリアーナがそう言うのならば、偶には外で食べるのもいいだろう。
直ぐに準備をさせ、二人でのんびりとランチを楽しんだ。




