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三日後、婚約を確定する為の場が設けられた。
私がというより、国王と王妃が乗り気である為、直ぐに手続き的なものは終了するだろう。
予定外の仕事が入った為に少し遅れてしまったが、指定された応接室へと向かうと。
両親の間にちょこんと座っている彼女の顔は、若干引き攣っている様に見える。
隠し事が出来ないタイプなのだろう。
ある意味御令嬢らしくないというか、今迄私の周りに居なかったタイプの人間の様に思う。
国王が何を血迷ったのか
「後は若い者同士で話をした方がいいだろう?
ウィリアム、リリアーナ嬢をお前の部屋へ案内してやるといい」
気がきくだろう?とでも言いたげな顔をしている。
ちっ、また余計なことを。
二人きりとか、勘弁してくれ。
話す様な事は何もないというのに。
きっと彼女も困っている事だろうと、断りの言葉を口に出そうとした時。
この彼女も何をトチ狂ったのか
「それではウィリアム様、御案内お願い出来ますでしょうか?」
と、和やかに笑顔で言いだした。
さっきまで微妙な顔をしていた癖に、一体何を考えている?
……どうせまた、ろくでもない事でも考えているのだろう。女はいつもそうだ。
私は盛大な溜息を吐き出してから
「ついて来い」
と、部屋を後にした。
ついいつもの調子で歩いて来てしまったが、パタパタと小走りしながら着いてきている様なので、そのままでもいいだろう。
女の歩幅に合わせて歩くなど、時間も掛かって面倒臭いからな。
部屋に到着して扉を開けるが、なかなか中に入ろうとしない。
顎で中に入る様に示せば、ムッとした表情で「失礼致します」と足を踏み入れる。
……何か怒らせる様な事をしたか?
普段近衛騎士団の仲間と過ごしているせいか、女の扱いはよく分からん。
スタスタとソファーへと向かい腰掛けると、彼女もトテトテといった感じで反対側のソファーへ「失礼します」と言って腰掛けた。
使用人が茶と菓子の準備をして部屋を出て行く。
目の前の彼女はティーカップを手に取り、喉を潤すと徐ろに聞いてくる。
「一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
確りと彼女を見据えれば、キッと視線を強めながら吠えてくる。
「何故私を選ばれたのでしょう。
ウィリアム様のお言葉は『私がいい』では無く『コレでいい』でした。
つまり私で無くても良かったという事ではないのですか?」
「まあ、そうなるな」
悪びれずに肯定する。
ここで何故か彼女は嬉しそうな顔をしたのだ。
「では、私には身に余るお話ですので、他の方にして頂きますよう、お願い致します」
「無理だな」
本当は無理では無かったのだが。
嬉しそうな顔の彼女に何故だか無性に腹が立ち、否定していた。
「何故ですの?私で無くてもよろしいのですよね?」
「お前は御令嬢達の中で一番ギラついていなかったからな。
どうやら私よりも料理の方に興味があった様だが」
尤もらしい言い訳をしながら、見合いの席での彼女を思い出し、思わず笑っていた。




