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気持ち良さそうに眠っている所を起こすのは気が引けるが、ダニエルが来たら起こす様に言われていたのだからと、体を揺すってみる。
「ウィリアム様?ダニエル様が迎えに来られましたよ?」
ウィリアムはパチっと目を開け、膝から起き上がると「ん〜〜〜」と伸びをして、ご機嫌にリリアーナの頭を撫でた。
「リリのお陰で良く眠れた。ありがとう」
「それは良かったですわ」
自分の膝で熟睡出来たと言われて悪い気はしない。
「リリはまだここに居るのか?」
「そうですわね、もう少しだけここで本を読んでますわ。涼しくなる前には部屋に戻ります」
「じゃあ、リリの好きなハーブティーとお菓子の用意をする様に言っておく」
リリアーナ限定でとても気がきく様になったウィリアムに、「ありがとうございます」と言おうと口を開きかけた時。
「お菓子はまずいんじゃないの?またボタン飛んだら……」
ダニエルの口から思わず出てしまっただろう台詞をしっかりと耳にした。
ダニエルはしまったという顔をしながら慌てて口に手を当てたが、もう遅い。
「何故あなたがそれを知っておられますの?
……ねえ、ウィル?あなたにしか話していない事が、どうしてこのマッチョに知られているのでしょうね?
不思議ですわね?」
ウィリアム念願の『ウィル』呼びも、この様な状況では萌えるはずもなく。
ダニエルに至ってはマッチョ呼び。
二人はその場に正座をさせられ、リリアーナによって髪をレゲエの様に細かく三つ編みにされ、今日一日解く事を禁止されたのである。
乙女の秘密を無闇矢鱈に人に言うものではないと言う事を、身をもって体験した二人だが、リリアーナの怒りはまだ完全におさまった訳ではない。
「マッチョには机の角に小指をぶつける呪いを、ウィリアム様には常に靴の中に小石が入っている呪いを掛けて差し上げますわっ‼︎」
相変わらず彼女の呪いは地味に嫌な呪いである。
◇◇◇
夕食の席にて。
国王様以下、皆の視線がウィリアムの頭へと向けられている。
何故ウィリアムが細かい三つ編みヘアをしているのか、聞こうにも聞けない雰囲気の中、勇者なホセ殿下が声を掛けるが、
「ウィル、その頭……」
「何も聞かないでくれ」
「……そう」
これ以上は聞いたらいけないと、皆出来るだけウィリアムを見ない様に(見たら気になるので)、その日は静かな夕食となったのだった。
そしてそんな中、リリアーナは何事も無かったかの様に美味しい夕食を頂いているのでした。




