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王城の庭園は庭師達によって常に完璧な姿を見せ、訪れる者達の目をいつでも楽しませてくれる。
王妃様も時々その庭園でお茶会を開かれたりするのだが、リリアーナはそちらの庭園よりも西側にある奥庭によく足を運んだ。
庭園は薔薇を中心にした大輪の花が見事に咲き誇り、一方西側の奥庭は可愛らしい小花が咲き誇っているが、庭園に比べるととても地味な印象だ。
そこにはあまり人が立ち寄らない、真っ白で小さくて可愛らしい四阿があり、穏やかな時間を過ごすにはピッタリな場所として、お気に入りの場所である。
今日もその四阿で、ハーブティーとお菓子を頂きながら、まったりとした時間を楽しむ。
正に至福の時間である。
リリアーナの為に用意されるお菓子は、ウィリアムが彼女の為に「カロリーを出来るだけ抑えながらも美味しいものを」とパティシエに特別に作らせたものである。
実はパティシエ達に迷惑ではと、ウィリアムに内緒でコッソリと無理に作らなくても量を減らしてもらえればと伝えに行った事もあった。
だが当のパティシエ達は、新しいテーマにやり甲斐を感じているらしく。
日々、リリアーナの為の(ローカロリーな)お菓子作りに励んでいる。
リリアーナが王太子妃教育の為に王城へ通うようになって二ヶ月が過ぎると、毎日の移動が大変だという理由で、王城内に彼女の部屋を用意し、そこから学園に通えば良いという話が持ち上がったのである。
お父様やイアン兄様、特にエイデンは反対したが、王妃様の強い意向で決定した。
そんな訳で、リリアーナは今、王城で生活しているのである。
毎日顔を合わせていた家族に会えないのは少し寂しいが、移動の時間が減った事でかなり楽が出来る様になった。
(家族には全く会えない訳では無いので)今はこの王城での生活を楽しんでいる。
そして週末の今日は学園も王太子妃教育もお休みであり、お気に入りの本を数冊持って、この四阿に来ているのだ。
本を読んでいるうちに、ついウトウトと眠ってしまっていた様である。
どれくらいの間眠ってしまっていたのだろうか。
目を覚ますと何故か仰向けになっていた。
愛用のひざ掛けが、風邪をひかない様にとしっかりと掛けられている。
何よりいつの間にかウィリアム殿下がそこにいて、膝枕をされていたのだ。
そしてご機嫌に口角を上げて、リリアーナの顔を覗き込みながら、頭をずっと撫でていた様だ。
「起こしてしまったか?」
「す、すみません」
慌てて起き上がると、ウィリアムは少しだけ残念そうな顔をしていた。
「そろそろ昼時だから、一緒にどうかと思って誘いに来たんだが」
「はい。それでしたら、こちらで一緒にランチにしませんか?」
今日は天気も良いし、風も穏やかでとても気持ち良くて眠ってしまったのだけれど。
外で食べるランチはきっと更に美味しく感じるだろう。
ウィリアムは四阿でのランチに快諾すると直ぐにこちらに準備をさせ、テーブルの上には美味しそうな料理が並べられていく。
使用人達は少し離れた所に待機しており、リリアーナはウィリアムと二人で、色々な話をしながらのんびりとランチを楽しんだのである。




