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【書籍化&コミカライズ】小動物系令嬢は氷の王子に溺愛される  作者: 翡翠
第四章 リリアーナ、王子様を意識する
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「見たところ、何処も悪い所はございません」



キリッとしたお婆さん医師のエマさんが使用人に連れられて、この部屋へ到着したのが20分程前。

このエマ医師は、もう何十年もずっと王城で働いていらっしゃるそうで、ウィリアム殿下が産まれる時に取り上げたのもエマ医師だそうです。

女嫌い?なウィリアム殿下もお母様である王妃様と、生まれる前から彼を見てきたエマ医師には頭が上がらないそう。

だからか、私の側から離れようとしないウィリアム殿下を一喝したのだ。

他の誰かだったら、そんな事は許されないだろう。



「診察の邪魔だと言っておろうが!分かったらさっさと出てけ!」



彼を部屋から追い出し、そして問診と診察の結果、当然何もないと診断されたのだけれど。

ウィリアム殿下が「そんなはずはない」と言って聞かないのだ。

ただ、デザートをお断りしただけですのに。

そんなに心配されるなんて、私どれだけ食いしん坊だと思われているんでしょう?

……もう十分過ぎる程に色々な方に心配とご迷惑をお掛けしてしまっておりますが、更にこれ以上の心配とご迷惑をお掛けする訳にもいかず。

仕方なく白状する事に致します。



「あのですね、デザートをお断りしたのはですね、その、少しだけですけれど、ふ、太ってしまって。

それで今朝制服のボタンが、弾け飛んでしまいまして……。

侍女のモリーとエイデンに、デザートの過剰摂取禁止を言い渡されましたので、それで……」



最後の方はゴニョゴニョといった感じにしか聞こえない程の音量になってしまいましたが、それを聞いてウィリアム殿下は安堵の溜息を吐かれました。



「具合が悪いのではないのだな?」



正直『何故もっと早く言わない』等と怒られると思っていましたので、彼の言葉に驚きを隠せません。



「あの、怒らないんですか?」



恐る恐る聞けば、



「リリアーナに何も無ければそれでいい」



そう言ってヒョイと持ち上げられ、膝の上に横抱きの状態で乗せられて。

(リリアーナ)の顔を彼の胸に押し付ける様にしてキツく、けれども大切に抱き締めながら、小さく一言呟かれました。



「良かった……」



そんなウィリアム殿下の様子を見て、



「全く、大の大人が大騒ぎして情けないねぇ。

けど、大事に出来る子が出来た様で良かったよ。

……何かあればまた呼びに来なさい」



エマ医師は呆れた様にそう言って、後ろ手に手を振りながら部屋を出て行かれました。



ダンス以外で異性の方にこれ程までに密着するのは初めての事。(イアン兄様とエイデンを除く)

少々恥ずかしい気持ちはあるけれど、先程の『リリアーナに何も無ければそれでいい』と言われた台詞がとても嬉しく感じていて。

不思議と抱き締められている事が、決して不快ではないのだ。

寧ろ、安心感を覚える事に戸惑うリリアーナ。



考えてみれば、餌付けの様な事をされた時も、膝の上に乗せられて髪を結ぶ様言われた時も。

とても恥ずかしくはあったけれど、不快に感じた事はなかった。

少なくとも私は、(ウィリアム様)を不快に思ってはいないという事よね?

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