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ダニエル目線です
数日後、リリアーナ嬢とバッタリ遭遇。
「あら、ダニマッチョ様。ごきげんよう」
「いやいや、俺そんな名前じゃないですからね?」
「親しみを込めて『あだ名』を付けさせて頂きましたの」
「親しみでなくて憎しみを込められてる気がする」
目の前の彼女は可愛らしく笑いながらも、ジッと俺の口元?を見つめているのに気が付いた。
「俺の顔に何かついてますか?」
不思議に思い聞いてみる。
「い、いえ。何でもありませんわ。
……おかしいわね、お祈りが足りないのかしら」
後半の台詞も俺の耳は確りと拾っていたが、意味がよく分からない。
何を祈るって?
多分聞いた所で答えてはくれないだろうけどな。
そんな事より優しい幼馴染の俺は、未だリリアーナ嬢を誘い出す事に成功していないウィリアムの為に、一肌脱ぐとしますかね。
本当、俺って優しいよな。
「そうそう、珍しいお菓子を頂いたんで、後で殿下に持って行こうと思ってたんだけど、リリアーナ嬢も一緒にどうかな?」
「珍しいお菓子、ですか?」
殿下と聞いて警戒心を露わにしながらも、珍しいお菓子に心惹かれているって所かな。
ふむ、あともう一押しか。
「ウィルは全く食べない訳じゃないけど、そんなに甘いものが好きなわけではないからね。
リリアーナ嬢が一緒にいてくれると、俺も遠慮せずに心置き無く食べられるんだけどな〜」
少し迷う様な素振りを見せながらも、俺もいて殿下と二人きりでは無いという事もあってか、珍しいお菓子の誘惑に勝てなかったのだろう。
「分かりました。後程お伺い致しますわ」
こうして俺は、幼馴染の為にリリアーナ嬢を誘い出す事に成功した。
◇◇◇
「コレ、初めて口にしましたけれど、とても美味しいですわ」
「お気に召して頂けた様で何よりです」
ほんとこの御令嬢、幸せそうな顔してよく食うよなぁ。
結構な量あったと思ったけど、テーブルの上に残っているのはあと僅かだし。
マジで、この小さな体のどこに入っているのやら。
リリアーナ嬢が来る前にウィルにはあだ名以外にも一応釘さしておいたけど、しっかり見張っておかないとちょっと心配なんだよな。
普段は『氷の王子様』なウィルも、リリアーナ嬢が絡むと『暴走王子』になりやがる。
まあ、俺も自分の目で見るまでは信じられなかったけどな。
ウィルに全く自覚は無いみたいだが、女に執着を見せるのは初めての事だ。
裏を返せば、やっとそんな相手が見つかったんだ。
幼馴染としても、臣下としても、そこは応援するしか無いだろ?
……まあ、暫くはウィルの暴走を止めるストッパー役に徹する事になりそうだけどな。




