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「私持病の腰痛が悪化した為に登城出来ませんわ」
リリアーナは部屋でお気に入りのソファーへ腰を下ろし、モリーの淹れたお茶を優雅に頂きながら、ニッコリとそう宣言した。
腰痛の持病があるなど誰も聞いた事がないのだが。
そして、どう見ても元気一杯である。
オリバーは額に手をあてながら
「馬鹿な事を言っていないで、さっさと支度しなさい。恨むならば己の食欲と行動を恨みなさい」
と言えばリリアーナは。
「いいえ、モリーも申しておりましたが、周りの御令嬢方の盛り方は異常でしたから、きっと地味にしていた私が逆の意味で目立ってしまったんですわ。だから、私の自業自得ではありません!」
プイっと横を向いて膨れている。
その姿は沢山のヒマワリの種を頬張っているリスの如くとても愛らしかったのだが、今この状況ではそんな事を言っていられる場合ではないのだ。
「モリー、頼んだぞ」
オリバーはモリーに丸投げすると、モリーは綺麗にお辞儀をし
「畏まりました」
と手をワキワキさせながらとても和やかにリリアーナへと近付いて行く。
「ちょっ、モリー?あなた私の味方では無かったんですの?その手は何?やめっっ、来ないでっっ、ニャァァァァアア……」
オリバーは既にリリアーナの部屋を出ている。
リリアーナの叫びは虚しく響くのだった。
◇◇◇
王城のとある一室にて。
リリアーナを挟む様にしてオリバーとジアンナが、そしてテーブルを挟んだ反対側には国王様と王妃様が腰を下ろしている。
氷の王子様は同席していない模様。
顔には出さずとも、元凶である本人がおられない事に、リリアーナの苛立ちはどんどんと膨らんでいく。
「ウィリアムは仕事が片付き次第こちらに来る事になっておる。それまでにリリアーナ嬢の話を色々と聞かせて貰えぬだろうか」
国王様側とヴィリアーズ家側の温度差がかなり感じられる程に、国王様と王妃様はニコニコとご機嫌であり、ヴィリアーズ家は複雑そうな表情をしている。
国王様の言葉の言外に「親戚になるのだし」という様な意味が含まれておられるのが分かる。
色々と言われても一体何を言ったらいいのか、余計な事を言ってしまいそうで言葉の出て来ないリリアーナに代わり、オリバーが仕方なく口を開く。