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あなたがあなただったから。  作者: 小鹿志乃
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第三話 騒がしい朝


「私パン軽く焼いて、ソーセージ茹でるね〜」

「ありがとう」


カチャカチャと調理する音。

二人の母親は朝から元気な子供達のために朝食を用意し始める。

「テレビ見たーい!」

「あ、いいよー。リモコンそこなんだけど、やり方分かる?」

「分かるー。」

「ママー!」

「はいはい、何?」

しゅうくんと勇希がケンカしてる!」

「え?!どこどこ?」

卵を割っていた「三島 秋」は慌てて手を拭いて娘の真希の指差す方へ向かった。


「麻木 苗」の下の子供の柊と秋の下の子供の勇希は同じ2歳の男の子だ。

真希に言われて寝室を覗くとベッドの上で勇希のおもちゃを取り合い、押し合い引っ張り合いしている二人がいた。


「これぼくのー!」

「かーしーてー!!」


「あーもぅ。」

秋は問題のおもちゃを二人から取り上げた、

「勇希はいつでもこれで遊べるでしょ?少し柊くんに貸してあげたら?」

「いや!それぼくのだもん!」

「そうだけどね。柊くんのお家に行った時も勇希は柊くんのおもちゃ貸してもらって遊んだよね?楽しかったよね?」

「.......」

「後でちゃんと返してくれるから、どーぞ、できる?」

「わかったぁ!」

強い口調でへの字の口。

些か納得いかないようではあるが、秋から手渡されたおもちゃを勇希は柊に渡した。

「偉いね、もうすぐご飯だからね。おねぇちゃん達とあっちのお部屋にいてね。」

秋は勇希と柊の頭を軽くポンポンとして台所へ戻った。


「何だった?」

苗は秋が作り途中だったスクランブルエッグを作ってくれていた。

「おもちゃ取り合ってた。」

「ごめんねー、柊でしょ。」

「いやーどっちもどっちよ。」


「あ、お皿どれ使ったらいい?」

「今出すよ。というか、ほとんどやってもらっちゃったね、ありがとう。」

「昨日夕飯作ってもらったし、美味しいおつまみまで出してくれたんだから、これくらいはしないと。」

「いや、簡単なものだし....」


(昨日、昨日の夜。)


秋はドキっとした。

昨夜の事を苗は覚えてるだろうか、そりゃ覚えてるだろう。

朝一緒に起きたのだから、覚えてなかったらまず何で一緒に寝てたのか驚く所だ。

苗は和室で秋は子供達と寝室で寝る予定だったのだから。


秋は自分からキスしたくせに戸惑っていた。


(苗ちゃんが隣にいると緊張する、昨日の事を聞かれたら何て言えばいいのか...

気持ち悪く思われてるかな?でも苗ちゃんからもキスしてたし...

あれ?というか私苗ちゃんの事好きなの?

ん?好き?好きって??)


結婚して子供を産んで忙しく家事育児をする中夫とは仲は良いが、すっかりときめかなくなっていた秋は苗へのそれが恋なのか酔った悪ふざけなのか何なのかさえ自分でも分からなくなっていた。


「...ちゃん。秋ちゃん?」

「あ!何だっけ!お皿!だよね!これこれ!」

「まだお酒残ってる?」

「残ってない残ってない!てかそんな飲んでないしー...」


(じゃあ、アレは酔ってた訳じゃないって事?て思われたかな?!)

(ダメだ、余計なことばかり言って、余計なことばかり考えてる気がする!)


苗はさっさとワンプレートのお皿に子供達の分を取り分けてテーブルへと運んだ。

「はーい、ご飯だよー。テレビは後にして先食べようねぇー!」

「はーい!」

みんな、バタバタとテーブルに着くとそれぞれ好きな物から手をつけて全員ソーセージだけ先になくなった。

「みんな本当ソーセージ好きだねぇ」

苗は穏やかにその様子を見ている。


(何で。あんなに普通?子供達がいるから?)

秋は自分達の分を皿に取り、テーブルは子供4人でいっぱいなので、リヴィングのローテーブルに運んだ。


「じゃあ私達も食べようか」

「うん。」


(本当に細いなぁちゃんと食べてるみたいだけど、骨も細そう、てかパン好きだな苗ちゃん顔小さ、口小さ、唇の型いいなー、唇...)


「秋ちゃん。」

「あ!美味しいね!」

「秋ちゃん昨日のさ...」


「ママ〜ジュース零したぁ〜」

「はいはい!動かないでー!」

「.......」

(どうしよう、何を言われるんだろ、何て言おう?私どうしたいんだろ?)


秋は苗が言いかけたその続きを聞きたかったような真希がジュースを零して助かったような気持ちで慌ただしく布巾を取りに立った。


「あーあ、濡れてない?」

「大丈夫、ごめんなさい。」

「ん、気をつけてね。」

床に水たまりを作ったオレンジジュースを拭きながら秋は考えていた。


(今がもし独身なら同性でも気持ちを確認して、付き合う??ようになるのかな?でも結婚してて、子供もいて、これは浮気?不倫?旦那と別れる?ないない。遊び?遊びって何だ??)


「大丈夫?」

「ん?!」

見上げると苗がいた。

「大丈夫!床に零しただけだったし。」

「そう。」

「すぐ済むから、食べてて!」

「うん」


(私は苗ちゃんか好きなのかな?そんな事もわからないっ!でも、触りたい...話した方がいいのかな。昼過ぎには旦那が帰ってくるし...)


苗が昨夜の事で何かを言おうとしていたが、それを今一度自分から確かめる勇気はなかった、もし拒絶の言葉たったらと思うと胸がキリキリ痛むようだった。

では、受け入れてくれる言葉だったら?

それはどう転んでもハッピーエンドではない。


秋は一つだけ分かっていた、もう元には戻れない事を。







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