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メアリーとロゼリア

うーん。

思い描いてる映像を言語化できない。

もう超カッコよくなる予定だったのだが

 月が上りきった夜。頭上には大きな星が輝いていている。そんな時間に、少女と騎士と御者の三人が森の中を進んでいた。

 少女の名前はメアリー=ノア。このノア王国の王女であった。なぜ王女がこんな暗く闇討ちされそうなところにいたのか、それはお忍びでの視察に行く途中だったからだ。

 この森規模は大きけれども、何もない。ただ木が生い茂っているだけだ。魔物もいないし、何か危険な植物も生えていない。だからこそ冒険者も学者も、ここに積極的に寄り付くことはなかった。道はあるが、ほとんど使われることがないため、申し訳程度の整備しかされていない。

 整備もされていないために上からの光は差しこまない。森の中は暗闇だが、魔物もいないのだから、危険ではないはずだった。

 しかし、あと少しで抜けるというところで、いるはずのない魔物の群れに襲われていた。


「メアリー様!お逃げください!」

「でも……逃げ場……ない……」

「──!お手を!」


 その少女は、騎士風の女性に手を引かれて森の外へ。御者はもう死んでしまっていた。


「すまない、後で墓は作ろう!」


 死体に目をやり、謝りながらその場を去る。

 これだけいるということは、前回の視察が終わった直後に巣を作っていたのだろう。奥に行けば見つかるだけ、外に出るしか道はなかった。


「まさか、オークロードがいるとは……」


 オークロード。

 女性騎士が呟いたその言葉をメアリーはよく知っていた。確かオークの上位種……いや、それオークキングだったか。その上?いや、そういえばオークジェネェラルとかもいたはず。

 前言撤回。メアリーは、オークロードについてよく知らなかった。

 しかし、その危険度についてはよくわかっていた。それは、女性騎士が逃げ出しているのを見れば明らかだった。

 この女性騎士の名前はロゼリアという。王女であるメアリーの専属の騎士。専属なだけあってそれ相応の実力の持ち主だ。そんな彼女が、オークロードの存在を確認した途端。逃げの一手を迷わず選択したのだから。


「「「お"お"お"お"お"!!」」」


「──ちぃ、近い!」

「ロゼリア……」

「なんでしょう!」

「疲れた……」

「後にしてください!」


 ロゼリアは剣で枝葉を切り、無理やり道を作る。方向は外に出るための最短。整備されてない道を走ることに慣れてないメアリー。当然、彼女の体力の消耗は激しかった。

 目の前に光が射す。


「外か!」

「あっ……」


 ロゼリアの手が軽くなる。振り返るとメアリーが転んでいた。何かにつまづきでもしたか。


「メアリー様!早く立ってください」

「足……折れた……」

「いまは冗談を言っている場合ではありません!」

「……ほら……」


 その足は脛で少しだけありえない方向に曲がっていた。折れた直後であるためか、まだ肌は変色していなかった。


「……走れませんよね?」

「無理そう……」

「では失礼!」


 俗にいうお姫様抱っこ。剣は鞘に収めて両腕をメアリーのために使う。後ろに敵がある状態で護るべき対象を背負うことなどできない。そのため前で抱えたが、明らかに先ほどと比べて失速していた。

 月明かりに照らされながら、何もない平原を走る。動くものが彼女らしかいないこの夜中に、その行動は非常に目立っていた。魔物の声が近い。


「ギギ!」

「フッ!」


 両手は塞がって使えない。襲ってきた下っ端であろうオークの脳天を蹴りぬいて瞬殺。


「クソ!森をでても追ってくるか!」


 通常、魔物は縄張りの外にまで出て獲物をしつこく追うことはしない。なぜなら労力に見合わないからだ。大きくてもうすぐで倒せる手負いの獲物ならば追うこともあるだろう。

 しかし人間である彼女らを、スピードが落ちたことを確認した彼らはここぞとばかりに襲いかかっていた。20数体は殺している。なのに被害を考慮せずに向かってくるオーク。ロゼリアはいささか不自然さを感じながら走り続けた。

 スピードは出ないし両手も使えない。この状態でオークの追跡を切り抜けるのは極めて困難であった。

 そして追いつかれる魔物の頭数がだんだん増えていくことにロゼリアは気づいた。

 これ以上は距離は稼げない。ここいらの平原は所々に大きな岩が存在していた。ロゼリアはそれらの中でも大きめの石を見つけてそれめがけて一目散に走る。


「メアリー様」

「ロゼ……」

「なんでしょう」

「……任せた」

「──はい」


 岩の前にメアリーを下ろし、背を向ける。ロゼリアの眼前には何匹ものオーク。その行動は何処か統率が取れているように見えた。多種多様なオークがいる。奥の方に強そうな個体。これは、軍か。

 魔物は群れを成せども軍を作るなど聞いたことが無いが……。この中最も遠くにいるオークロードが頭だろうか。オークロードは最上位個体だが、所詮オーク。力はあれども知性は無いと研究でわかっている。もしや変異種か。


「……なれば、なおさら死ぬわけにはいくまい」


 オークロード変異種の存在の可能性、魔物の軍編成。これを伝えなければ、国は最悪滅びる。

 生きて、伝えねばならない。


「さあ、こい!」

「「「お"お"お"お"お"お"お"お"!!!」」」


 オークの叫び声が平原に響き渡った。




 ☆☆☆☆☆☆☆



「はっ、はっ、はぁ……はぁ、」

「ギッ」

「はぁ、あ"あ"あ"あ"あ"!!!」


 どのくらい経っただろうか。足元にはオークの死体が無数に転がっていた。それらが邪魔にならないよう蹴る。後ろにはメアリー様がいる。場所を変えるわけにはいかない。

 一斬りするごとに抵抗が増していく。滑りも悪い。刃に血が付き、欠けていった。


「ギ!」

「ギギィ!!」

「ぐっ……あああ!!」


 一閃。二匹纏めて真横に斬る。

 体力はもうほとんど残っていなかった。敵の攻撃を受ける頻度も高くなってきている。

 このままではまずい。しかし、周りを見渡しても未だ近づいてくる冒険者はいなかった。夜中なのだから、当然といえば当然だ。そしてここには取りに来るような資源が何もないとされている。

(助力は無し……か。これは、詰んだかもしれんな)

 いや、もともと詰んでいたのだ。ここまで統率のとれた魔物だとは思わなかった。盗賊を相手にするのとはわけが違う。

 恐怖という感情がない魔物は文字通り命を捨ててかかってくる。そしてそれが何匹もいる。増してやこちらには護るべき者がいる。


「だが!」


 負けるわけにはいかない。死ぬわけにはいかないのだ。私の背中には国民の命、メアリー様の命がかかっている。

 幸い、オークロードが自ら攻撃してこなかったからここまでもった。いや、それが幸いだったのかどうかわからないが。オークロードを倒せばこの統率が崩れるかもしれないが、今となってはもう無理だろう。今出てこられても倒せる自信がない。

 やはりここは逃げるしかないのだ。だれか一人でもきてくれたら、メアリー様を任せて、私は全力で殿を務められる。

 今は、まだ見ぬ誰かに期待するしかなかった。


「誰か……」


 だれか。


「誰か……!」


 誰か。


「誰か!」


 誰かいないのか。

 この状況で来てくれる、勇者のような。そんな、御都合主義的な、誰か。

 その時。フッと、月の明かりが消えた。雲にでも遮られたのなら話は空で終わりなのだが、その遮った何かが、人間だったのならば。


 ドン!と。


 上から何かが降ってきた。それは最初小さく蹲っていたが、少しすると立ち上がり愚痴をこぼす。


「いってー……膝……いった」


 空から人が降ってきたのだ。そんなあり得ない状況に、双方固まってしまう。だが、そんな緊張状態も、その男によって途絶えた。


「なあ」

「え、あ、あぁ」

「手貸そうか?」

「あ、いや、メアリー様を」

「メアリー様?」


 男はロゼリアの後ろに目をやる。そこには岩を背にしたメアリー。しかし、ロゼリアと向かい合うということは、メアリーを見るということは、魔物に背を向けるということだ。

 つまり。


「──!後ろだ!」


 当然、襲ってくる。

 視線を外している生物ほど格好な獲物はないのだ。空から降ってきたという不自然な出来事を綺麗さっぱり忘れ、目の前で無防備な姿を見せる獲物に狙いをつけた。オークは、優先順位をロゼリアから男に変更する。

 普通なら、そのままやられてしまうだろう。しかし、彼は普通ではなかった。


「ギギ!!」

「うるさいぞ」


 ボン!とオークが燃える。


「……は?」


 魔法、だろう。だがメアリーもロゼリアも火属性のご加護は持っていない。ということは、だ。目の前の男がやったということになるが。

 詠唱もなし、予備動作もなし。ロゼリアは、男が何をしたのか全くわからなかった。


「じゃあ、訓練ついでに」


 改めてオークに向かい合う男。その背中は、何故かすごく頼もしく見えた。


「人助けでもしますかね」


 ユグルド、魔法陣魔法での実戦訓練開始。

















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