準備と本音
三門と夕食の約束をした当日、照之は夕食の食事に向かう前に杏月専属のメイドを呼びつけ、話していた。
「照之様、どうなさいましたか??」
「うむ。呼び出してすまぬのだが……おなごという者は、どんなプレゼントを貰ったら嬉しいのだろうか?」
照之は眉を顰み悩んでいる姿に、杏月の専属メイドは何かを察したように手をポンと叩き納得する。
「そうですね。女性はやはりアクセサリーや財布にバックなどが主にお好きですかね。杏月様は可愛いお姿ですが、一応男児でございます。ならばネックレスや手に付けるアクセサリーなどはいかがでしょうか??抵抗もそれほどないかもしれませんよ!!」
「そうだな、無難にその辺が良いのかもしれんな!なら俺自体アクセサリーなんかは良く知るわけではないからな。杏月の専属メイドであるそなたに頼もう。杏月に見合った美しいアクセサリーを買ってきてくれないか??もちろん、この話はあくまで他言無用で頼むぞ」
「かしこまりました、照之様。杏月様の魅力を最大限に引き出すことができる物を、探して参りますね!!」
照之はメイドにそう頼み事をすると、メイドは元気良く言葉を返す。
ふぅ……。後は三門殿と食事か、よし!行くか。
一息着くと三門との約束の場所に向かう為、正装に着替える。
身嗜みを整え、姿鏡で確認した後、屋敷を出た。
――――――――――――
照之が不在中、杏月は四男と遊んでいた。
少しぶかぶかのパーカー姿の杏月は胡座をかくと、みずきは杏月の胡坐の上にちょこんと座り、絶賛杏月とゲーム中であった。
シューティングゲームをしてる中、杏月はみずきに聞く。
「ねぇ、みずき……?」
「なあに~、おねぇたん?」
「みずきはさ、もしもだよ?もしも……お兄ちゃんがお姉ちゃんになっちゃったらどうする??」
「んん~でもおねぇたんはおねぇたんだし……。あいおねぇたんがもっとかわいくなるの??」
「そうかもしれないね……。もし本当にお姉ちゃんになるんだったら、可愛いのがいいなぁ~」
あはははと杏月は複雑な気持ちで苦笑いしていると、みずきが杏月の方に勢いよく振り向くと言う。
「ぼくは、うれしいよ??もしほんとにおねぇたんになるなら、ぼくとおねぇたんはけっこんできるんだもんね!!」
みずきの無邪気に悪気が一切無いキラキラした純粋な瞳を浮かべて、杏月に期待の眼差しを向けていた。
結婚というワードに、杏月は内心ビックリした。
「みずき??どこで結婚って覚えたの……?でもね姉弟では結婚出来ないんだよ??」
「えー!?なんでーー!!」
杏月の言葉にみずきは驚愕に染まる。
目をうるうるさせながら泣きそうになっていたみずきの姿に、杏月はみずきの頭を優しく撫でながら言う。
「でもね、お姉ちゃんになっても僕達は家族なんだよぉ??ずっと一緒にいようと思えば、いられるんだよ!だから安心して??」
杏月は可愛らしいみずきの頭を、わしゃわしゃと頭を乱暴に掻き乱し、頭を撫でてギュッとみずきを抱き寄せる。
みずきもえへへと満々の笑みを浮かべると、杏月を抱き締めた。
2人の姿を目の当たりにしたともきとゆうじは、驚愕の新事実にお互いに顔を見合わせ、ドアの隙間から覗いていたのだった。
――――――――――――
夕方、指定の時間になる前に、照之は和食の高級料亭の前にいた。
その料亭は富豪などもよく使われ、上級者が御用達なその場所はどのセレブ達の間でも有名な和食料亭だった。
照之は風流な暖簾をくぐり中に入り予約した神乃だと口にすると、従業員はすぐに照之をVIP専用個室に案内する。
VIP部屋は畳になっており、壁は和を感じさせる落ち着いた色合い。
襖や障子で構成されており、掛け軸がまたいい味を出していた。
中心には、高級旅館で使われているような大きいテーブル、腰掛け椅子は2つ用意されていた。
靴を脱ぎ中に入ると、照之は奥の席に座る。
胡座をかき一息入れその部屋をざっと眺めてうむうむと頷き、用意されたおしぼりで手を拭き手を清めた。
「失礼致します。こちらお茶は、最高級の茶葉を使用しております。香りもとても良く、味わい深い逸品でございます。御注文の際はこちらのブザーでお呼び下さいませ」
従業員は一声いれ、襖を開ける。
中に入るとお茶が入っている湯呑とメニュー表を静かに置き、頭を下げその場を後にする。
何がよいかな~~。久しぶりに最上級のフルコースでも良いかもしれぬな!!量はあるもののどれも絶品だが、やはりこれだな。
メニュー表を見てどれにするか決めていると、従業員は扉の前で一声入れると襖が開く。
髭をたっぷりと蓄え、歳相応に見えない筋肉質の体は浴衣姿に包まれている爺さんが立っていた。
爺さんが中に入ると、従業員は直ぐに襖を閉じる。
「カッカッカッ!!待たせたな照之殿」
「はははっ!さっき来た所だ源氏殿」
楽しそうに笑う三門と呼ばれる爺さんはそう言うと、席に向かいながら照之に挨拶する。
三門グループの頂点に君臨地している三門 源氏は、年齢を感じさせない鍛え抜かれた体に大きな眼光を持ち、自慢の白ひげを顎から下に長く生やす。
髭を撫でながら三門は、照之に話し掛ける。
「それで照之殿、要件は例のプロジェクトについてであろう??」
三門の放った低い声が照之に問いかける。
「そうです。今回、何故こんな良い案件を提示して下さったのか気になり、呼び出した次第だ」
「そうかそうか。なら先に食事を注文しようではないか!!」
クッハッハッハと高笑いする源氏に、照之もずっしりと構えてそれに同意する。
「俺はこの最上級のフルコースとやらを頂こう。源氏殿はどれになさる??」
「うむ、我も照之殿と同じ物でよいぞ!!」
源氏はそう言うと、照之は呼び出しブザーを押す。
少し待つと従業員が一声かけ、襖を開け中に入る。
「この最上級の和・フルコースを2つ頂こう」
「はい、ありがとうございます。では御注文のご確認です、最上級の和・フルコースをお2つでお間違えないでしょうか??」
「ああ、問題ない」
従業員が頼んだメニューを復唱し頭を下げその場を後にする、照之は従業員が行ったのを確認し話を再開させる。
「それでだな源氏殿。今回の案件何故ウチのグループを直々にご指名頂いたのか、理由を聞かせてはくれまいか??」
「その事か!!儂ももう70じゃ。まだ不安も残る孫が社長に就任していても、今回の件は規模や手間がちぃとばかり掛かるのでな。それなら儂が信頼する照之殿に頼もうと思った次第じゃ!」
「なるほど、確かに小型都市開発は中途半端にしてしまう業者は多いからな。変な業者を頼むなら経歴があり信用できる神乃家に頼んだと……。流石、源氏殿だ」
照之は厚く信頼してくれている源氏に照之は笑い問い掛けると、源氏も「そうじゃろ!!」と頷きカッカッカッと笑い始めた。
「それにじゃ、照之殿は皇帝陛下を務めながらひと財産を築き上げた男よう。そんな有能な照之殿は中々頭も回る。どの者達より照之殿の方が最も信頼におけると思ったのでな」
「ハハッ。それは買い被り過ぎだぞ源氏殿??俺も所詮は餓鬼であり、ただ運が良かった。それだけの事だ」
「それも実力のうちじゃ……。それに貴族のトップに君臨する神乃家でも照之殿が一番話しやすいのじゃ。この老いぼれには、お主の家族とはちぃとばかり荷が重いのでな」
「確かに、俺もそう思う。あの家は余り好きではないのだ……。まあ兎も角、良い話が出来て嬉しいぞ源氏殿!!」
ホッとし照之は源氏にそう語ると、源氏もカッカッカッ!!と高笑いしてその案件は落ち着いた。
少したわいのない世間をしていると、従業員の一声が入り扉が開く。
手ぶらな従業員は扉を開けると、後ろに控えていた従業員が両手一杯の大きめなお盆を持って入ってくる。
「お待たせ致しました。こちら、最上級の和・フルコースでございます。こちらは海の幸刺身の盛り合わせ、煮物、旬の焼き魚、天ぷらの盛り合わせ、茶碗蒸し、旬の幸のお茶漬け、最上ランクの和牛の盛り合わせ、つみれのお吸い物、寿司そしてデザートでございます。」
従業員は一つ一つ説明して、更に話す。
「こちら和を感じさせるフルコースで、最大限のおもてなしをさせて頂きます。どれも最高級の品々を一流の料理人が腕に縒りを掛けて、作らさせて頂きました。お召し上がり下さいませ」
従業員は全て説明し終わり頭を下げ部屋を出ると、照之は出された料理を見ていた。
「源氏殿……これは食べがいがありますな!!」
「カッカッカッ!!さよう、これほど良い部位や品々を惜しげも無く使っているとは、美味そうじゃ」
2人はそれぞれ綺麗に装飾された品々を目で楽しみ、黙々と食べ始める。
フルコースを堪能していると、源氏が唐突に話しを始めた。
「そうゆえば照之殿。最近とても美しい姫君といたとかで、儂の会社でも話題になっておったぞ??」
照之はその言葉に食べ物を喉につまらせたように咳き込む。
「ぐふっ?!かはっ……かふ……あ、危なかった。源氏殿、危うく死にかけたぞ……?それに唐突過ぎるぞ??」
咳き込む照之は直ぐにお茶を口にして難を逃れ、源氏の不意打ちに驚かされる。
「まあ確かに、その噂されている姫君は俺の側近だ。もうそっちまで話が行ったのか??ちぃと速過ぎじゃないか、源氏殿よ……??」
「ハッハッハ……。それほどインパクトがあったと伺っておる。儂の会社の部下がその時に目にして言っておってな?そしたら儂の孫も話を聞くと嫁に欲しいとほざく始末でな」
源氏の高笑いしながらの爆弾発言に、照之は絶句する。
「それで源氏殿はどうされたいのだ??」
「うむ!!是非、儂の孫に嫁いで欲しいのだが……どうじゃろうか??」
「だが……それは出来ぬ話だ源氏殿。何せ俺が目を付けたおなごだぞ??そんなおなごを簡単に手放す訳なかろうが!」
「そうじゃな。照之殿が言うのだからそれほど美しいのだろうな。とは言え、死ぬ前に一度見てみたいものだな!!」
高笑いする老人がいる一方で、乾ききった笑いを浮かべる少年がいた。
――――――――――――
時は過ぎ、源氏との食事を無事終わると帰宅した。
夜9時頃、照之は自室のキングサイズのベッドに横たわり、静寂な部屋の天井を眺めながら考えていた。
はぁ……。杏月の姿にみな魅了されてしまっていた。杏月の事を想うと、何故こんなにも悩んでしまうのだろうか…………。
照之は杏月が違う所に行ってしまうのではないかと、自然に思ってしまった。
その悩み事は、まだ15歳の青春真っ盛りの高校生の姿を覘かせ、自問自答する。
そう考えていると、扉をノックするのが聞こえると、杏月の専属メイドが入ってきた。
「お休み中、失礼します。照之様、本日宝石店に出向いた時、とても良い品があったので照之様にご相談と思いまして」
「ああ、気にするな。続けよ」
「はい。1つはシンプルに雫型が1つぶら下がっていてネックレスです。鎖はプラチナでございます」
メイドはネックレスの写真を照之に見せる。
「もう1つはこちらです。レースのような細かな細工が施されているネックレスでございます。非常に美しかったので検討の1つにどうかと思いまして。それに見て下さい?前側はダイヤモンドが小さいのが外に有り、中心にかけて粒が大きくなっています。美しい姫に成られる御方にはとてもお似合いかと。いかがでしょうか??」
メイドは説明を聞きながら、宝石の説明用紙を見て考える。
杏月の美しさならシンプルよりこっちの芸術的と思えるネックレスだが……。どうせだ、この2つを買って男の姿にはシンプルの物。おなごになった時はこっちをプレゼントしようか。
照之は頭の中で整理して納得すると、言葉に出す。
「そうだな。どうせなら、この2つを両方とも買ってきてくれ」
「かしこまりました。ダイヤモンドとピンクカラーの宝石は、最上級の物を御用意致します。それでよろしいでしょうか??」
「おう、任せる。いつ頃出来るのかだけ聞いておこう」
「はい。お店にお聞きしたところ、早くて1週間弱とのことでした」
「そうか、苦労かける。でわ、頼むぞ??後、杏月を俺の部屋に呼んでおいてくれないか?」
「承知致しました」
話を終えると、メイドは照之の部屋を出て杏月を呼びに向かう。
照之は資料をその辺に置き、ベッドに再び体を預けた。
1週間か……。たまには杏月と2人でデートでもするか。先ずはネックレスが届き次第休みを入れて、明日にでも杏月と弟達を連れて皆で買い物でも行くか。
そう考えていたら照之は、指を弾き爺やを呼ぶ。
「爺よ、いるか??」
「坊ちゃま、何でしょうか?」
「明日は杏月とその弟達を連れてデパートにでも行こうと思うのだが、爺も来てくれないか??」
「もちろんでございます。お久しぶりに羽を休ませることも大事ですぞ、坊ちゃま!!それに杏月様と一緒に行けるとは、爺如きでございますが恐悦至極ございます」
「ははは……。爺にそれほど好印象とは、まっこと恐ろしいな!!杏月の魅力にみな惹かれてしまってな。困ったものだな……そうは思わんか爺よ?」
爺やは直ぐに察してフォローする。
「坊ちゃま。爺如きが言うのもなんですが、杏月様を迎え入れてから行動を観察していると、杏月様はお1人の時や爺の前でいつも坊ちゃまのことを気にしてらっしゃいました。爺は思うのです!どれほどの人に迫られたとしても、杏月様は絶対に坊ちゃまを裏切るような真似はしないと思います」
「そうなのか……。俺は今まで恋愛をするくらいなら金を稼いでいた方が楽しかったし、楽だった。でもここ最近になって、杏月の事を思うとな?胸が締め付けられ、身体の奥底が苦しいんだ」
照之のいつもは絶対に見せない姿、か細く震える声に喚起された爺やは、ハンカチを二枚取り出して照之に手渡すと、爺やも涙を拭う。
爺やは思った、これほどまでに照之に影響を与えた女性に感服していた。
様々な美しい美女や美少女を相手にしても一向に靡かなかった照之が、年相応の反応に内心ホッと安心する爺や。
「坊ちゃま!杏月様が女性に成られた際は、神乃家が所有するプライベートビーチに行かれてはいかがでしょうか??」
爺やの言葉に、照之は涙をハンカチで拭き言葉を発する。
「そうだな!もう一杯稼いだのだし、たまには遊び呆けるのもよいのかもしれぬな!!」
「はい、坊ちゃま。後の事は幹部達がうまくやりますので安心下さいませ」
照之はハンカチを爺に返し「下がってよい」というと、シュッとその場所から姿を眩ました。
少し呆けていると、今度は扉の方からノック音が聞こえた後、可愛らしい声が扉の前から聞こえてくる。
「照之様??お呼びとの事で参りました。杏月です」
「ああ、入ってくれ」
照之はベッドから起き上がりそう声を掛けると、杏月は「失礼します」と言い中に入る。
ラフな格好にパーカー姿の杏月を目にした照之、その姿は幼くあどけない雰囲気をより一層と醸し出す。
「照之様、どうしたんですか??」
「ああ。明日の事なんだが、杏月と弟達で一緒にデパートに行かないかと思ってな……行かないか??」
「いいですよ!!最近まで屋敷に篭りぱなしだったので、是非行きたいです!!」
満面の笑みを零す何時もの杏月の姿に、照之の瞳から雫が零れ落ちた。
「あれ……照之……さま??ど、どうしたんですか!?」
杏月は照之が急に涙を流す姿に、あわあわと挙動不審になっていた。
杏月はパーカーのポケットからハンカチを出し、直ぐにベッドに座り込んでいる照之の近くに寄ると、涙を拭く。
照之は何故涙が出たのかそれを理解するのに時間が掛かっていると、杏月に涙を拭かれていた。
「杏月……。すまないな、こんな情けない姿を見せてしまって……」
「大丈夫ですよ?照之様……何かあったのですか??」
杏月は照之の涙を拭き取りお腹辺りに頭を寄せると、よしよしと撫でられた照之はいつもと違い震える声で呟いた。
照之は今まで凛として堂々たる姿をしていたが、杏月に頭を撫でられている照之は、青春を謳歌し始める少年のようにあどけなく情けない声を漏らすと、杏月は嫌がる事なく聞き入れる。
「杏月よ……。そなたがここに来てから色んな人に好かれてきたと思う。今回もそうだ!もうそなたに申し込まれている縁談は20件を優に超える。そう思うとな……杏月が俺の側を離れてしまうのではないかと、不安になってしまうのだ……」
照之から吐き出された、初めての弱音。
「でもな?俺にも許嫁も候補は一杯いるのだ。だが、そなたを想うと、この胸が苦しくなって仕方ないのだ……。杏月を欲する人間は今後も出るであろう……だから俺は杏月が離れてしまうのではと何度も考える度に、この胸の心は締め付けて苦しくなるのだ」
照之は杏月の柔らかなお腹ですすり泣き始めると、杏月は照之の頭を優しく撫で目を閉じながら語り始める。
「良かったです……。照之様はいつも凛々しいお姿でしたね?でもこうやって僕の為に泣いてくださって、とっても嬉しいです。ですが、照之様に助けられた時からこの身も心も全て照之様にお渡しする覚悟なんですよ……??最近も忙しく切磋琢磨なさっていた照之様を拝見した時、照之様の為に何ができるかな??って考えたり、爺やさんにも相談したりもしていたんですよ??」
杏月は照之の密着する体を剥がすと、しゃがんでから照之の目を真っ直ぐ見つめて再び話し掛ける。
「分かってますか??僕はもし照之様の許嫁と結婚しようとも、他の女性でもその結果を受け入れるつもりです。照之様が幸せになって下さるのなら……それが一番です!!そして、照之様の幸せは僕の願いでもあるんです」
寂しそうにはにかみながら言う杏月をただただ見つめる照之、これほど自分の事を心配して大事にしてくれているのだと思った時、杏月の全てが尊く想えた。
照之は何時の間にか、大事な存在から放たれた寂しげな色を含んだ笑みに、耐えきれず照之は言う。
「馬鹿者……!!俺はそなたの事を想っておるのだ。誰でもなく、純にこの俺を心配してくれて、大事にしてくれる杏月を誰が……!!誰が、嫌いになろうか!!」
「で、ですが……」
「うるさいのだ……。俺が惚れているのは杏月、そなただけだ!!もう直ぐ正式におなごになってしまうが、俺が学園を卒業した暁には、その……」
照之はいざ大事な言葉に詰まってしまうも深く深呼吸して話の続きを話す。
「そのだな……。色々誘いはあるかもしれないがな?俺自身、学園を卒業したら杏月……そなたと結婚したいと思っておる」
照之の言葉に何時の間にか、性別を感じさせない程の乙女顔になっていた杏月。
「あの……えーと……。ぼ、僕なんかで、よろしいのでしょうか……??」
杏月はどもり戸惑いながらも尋ねると、照之は即答した。
「もちろんだ!!そなただからなのだぞ?そなたを見ている内に魅了され、その母性溢れる姿、自愛に満ちたその優しさ、杏月の仕草や笑顔が全て好きになってしまったのだ!!!!俺には……そなたしかおらんのだ……」
照之は涙を流していた目元は少し赤く、苦笑いを浮かべるも照れ笑う。
杏月はその瞬間、物凄い勢いで照之に抱き付くと、ベッドに押し倒した。
「僕もです!!最初は性別が変わってしまうのは、不安でしか無かったです。でも照之様と過ごしているうちにそ、その……可笑しいのは分かってます!!でも、最近思うんです。性別の弊害なんか気にならないくらい、胸の此処が苦して、どうしょうもないくらいドキドキしてしまうんです……。こんなにドキドキにさせたんですから……責任取って下さいね!!」
照之の上に跨って涙目で訴えるその幼き杏月に、照之は指で杏月の目尻に溜まる涙を拭き「当たり前だ!!!!」と言うと強く抱き締める。
抱き締め見つめ合うと、2人の鼓動はより早くなる。
ドキドキで今にも襲いたくなってしまう可愛らしい杏月に、照之は微笑みで答えるとクルンと回転して杏月を下に誘導する。
華奢な杏月は軽々と体勢を変えられると、照之に押し倒される図に変貌する。
杏月はもじもじと可愛い仕草をしていると、照之はその愛らしい姿に目が離せない。
「杏月……。相変わらずそなたは妖艶だな。俺は初めて本音を吐き、初めて恋をした。杏月、好きだ……!!」
「はい……照之様。僕も……好きです……!」
照之はゆっくり顔を近付けると、杏月は両手を広げて照之を歓迎して迎え入れた。
深く意識が溶けてしまいそうになる杏月のフェロモンに、照之の鼻腔を誘い誘惑する。
杏月の端正な顔立ちは、うっとりと蕩けさせる表情に変貌すると、照之は杏月の唇に優しく触れてフレンチキスをする。
何度か確かめ合うようなキスを終えて次はディープキスに移った時、2人の脳髄を快楽と言う名に引き込むほどの溶け合う口溶け。
最高の快楽に近い感覚に照之は舌を激しく絡めた、杏月の計り知れない魅力は照之をただ1人の雄として機能させるほどに。
暗い部屋に響くリップ音、そのリップ音は時に激しく時に優しく波を打つように静な部屋に轟く。
2人が初めて受け入れ、本音を漏らし、熱い接吻を繰り返す。
杏月の頬は紅に染まり、うっとりとした表情で至近距離にいた照之を見つめた、潤んだ瞳は熱量が増し2人は紅潮の中お互いに微笑む。
「てる……ゆき……しゃま…………」
「…………あい」
呂律が回っていない杏月は甘い声で照之を呼ぶと、照之の胸にぐりぐりと頭を押し付け無邪気な笑顔を浮かべる。
その無邪気な笑顔は、普段と段違いの色気を兼ね備えた破壊力。
杏月に覆い被さる照之は耳朶を甘噛みして耳元で囁いた。
「杏月……。そなたは俺の物だ!!」
「はい……。照之様の物です……!」
耳を真っ赤にした杏月はつぶらな瞳で訴える、照之も決して視線を外さない。
静かな夜の中、杏月と照之は眠気が来るまでお互いを密着させたまま、キスの音は未だ鳴り止まない。
「杏月が可愛い!!」
「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」
と思った方は是非、好評価をお願いします。
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