表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇帝の従える妻は元男の子?!  作者: アリス・world
第一章
7/49

初めての同行と変わり始める心情

少し長いです。

 「杏月よ。そろそろこの生活にも慣れてきただろうし、良ければ俺の仕事に同行でもしないか??」


 「あむ……あむ……ごくん……。は、はい!!僕でよければ!!それにお陰様で大分余裕も出てきましたし、どれもこれも照之様のお陰です!!本当に感謝で一杯です」


杏月は朝食をとっている時、照之は杏月に話を持ち掛ける。


杏月は食べていた手を止め口に入れていた食べ物を食べ終わると、照之の方を向き頷くと共に感謝を述べて更に話を続ける。





 「そ、それで……僕は何をしたらよろしいのですか??」


 「いや、書類や財布があるバックを持って傍にいてくれればよいぞ。特にはすることはないと思うがここにいても退屈だろ?どうだ??」


 「退屈は言い過ぎですよ!お邪魔にならないのでしたら是非!!それに照之様が何をしているのか、一度見たかったんですよね!!」


杏月の返答に満足気にうむうむと頷くと、爺やをすぐさま呼び寄せる。





 「爺よ。今日は杏月と俺で外を回ろうと思う。爺は、杏月の弟達の方を任せたぞ?」


 「はい、坊ちゃま。承知致しました。では本日のシュケジュールだけお伝え致します」


 「ああ、頼む」


 「はい、午前中は坊ちゃまのご友人の霧崎様との会談がご予定されております。午後の2時から神乃家の所有してる企業から大きい案件が浮上したので、そちらの検討をお願い致します」


 「はいよ。とりあえず食べたら車を頼む」


 「かしこまりました。わたくしの代わりに、他の運転手を派遣致します」


 「杏月よ。食べたら支度の方を頼むぞ」


 「はい、照之様」


一連の話を終えると、杏月に支度の準備を側に仕えるメイドに伝えた。














――――――――――――



時間は少し経ち、杏月は朝食を食べ終わり歯を磨いて顔を洗っていると、側に仕えているメイドに呼ばれる。





 「杏月様、お着替えのお時間でございます。さぁさぁ、こちらに」


 「分かりました」


メイドはそう言うと、杏月を着替えさせる為の部屋に案内する。


部屋に着くなり用意された服を見ると、杏月は疑問を発した。





 「あ、あのぅ……。僕は一応男なんですが……これは女性の下着ですよね??」


 「はい。照之様が女性になるのなら慣れた方がいいと、仰っておりましたのでこちらをご用意致しました」


 「は、はぁ……。でもこれは少し抵抗があると言いますか、別にこれを付けなくても……いいんじゃ…………」


 「そんな事はありません!!杏月様に是非とのことです。とてもお似合いになりますよ!!」


食い付くように迫り来るメイドが下着を持ちながら杏月に近付き、ハァハァと鼻息を荒らげながら至近距離まで迫る。



 はぁ……。僕のアイデンティティがぁ………。



杏月はしょぼくれていると、メイドは目を瞑りながら下着を履かせる。


下を着替えさせると、目を再び開きテキパキと杏月の支度を整えた。


杏月の綺麗な黒髪と瞳をより一層引き立てるであろう純白のワンピースドレスを身に纏う。


その衣類は黒髪とナチュラルなメイクで一層美しさを引き立たせ、杏月の身体を見計らったようにピッタリと合わせられた寸法の服は、杏月の体にジャストフィットする。


純白のワンピースドレスは、腕や肩は少し透けていて白い花柄の細かな刺繍が入っていた。


メイドの趣味で淡いピンク色の下着を履いた杏月は、どこからみても可愛い美少女の姿だった。


支度をしたメイドは、杏月のその美しさに思わず赤面してしまう破壊力。


着替えが終わると、メイドは照之が愛用していたブランドバックを持ち、玄関で待っている照之の元に向かうメイドと杏月。


照之は玄関で待っていた。


逸早く着替えを済まし、杏月が来るのを暫し待つ。



 ふむ。杏月の奴は、どれほどのおなごになったのやら……。早く見てみたいものだな……。



思わずニヤニヤして待ち構えている照之は、暫らくして階段の方から降りてきた杏月の姿を目撃する。


照之は杏月を見るや、一瞬で見惚れてしまった。


メイドに手を引かれ降りてくる姿は、まさに女神ではないだろうか??と錯覚する程の出で立ち。


杏月の周りは不思議と淡く煌めき、それはまるで妖精が喜んでいるかのような不思議な現象。




普段から顔立ちは整っており、化粧をしたのか??と疑問に思うほどのナチュラルメイク。


唇は僅かにピンク色に染まっており、更に艶めかしい黒髪は普段と違う髪型になっていた。


ガーリーハーフアップの髪型は、三つ編みが後ろ側で結ばれた髪には、白いリボンが組み込まれロングヘアの毛先はくるりと少し巻いていた。


そして一層杏月の華奢な身体を引き立てる、刺繍の入った白い純白のワンピースドレス。


僅かに肌が生地から覗く姿に、興奮を覚えてそして魅了された照之は、只々唖然とするしかなかった。


優雅に降りてくる杏月に、気付けば視線は釘付けになっていた。


幼い姿には似つかわしくない雰囲気や降りてくる姿は、1人の女性と言われてしまえば誰しもが素直に頷くであろう、杏月の麗しい姿。


メイドは照之の近くに杏月を近付かせ腕を組ませ、照之と繋がっていない方の腕にバックを持たせると、後ろに下がる。


照之は杏月の面妖なき美しさに赤面して、照れてしまっていると、メイドはその姿を見てはクスクスと小さく肩を震わせて笑っていた。



 美しい……。これほど美しいとは。階段を降りる姿はまさに、この地に君臨した女神のようだ……。



照之は、頬がだらしなくなるのを堪え、杏月をエスコートする。


傍から見れば王子が王妃をエスコートをして、そんな王子に優しく微笑みかける王妃の姿は、まるで絵画から飛び出したような絵図は、とても絵になると思わせるほど様になっていた。


運転手がドアを開け2人が乗り込む時、杏月を見るや否や、杏月の小さき微笑みに石化したように微動だにしなくなるも、直ぐに我に返った運転手は慌てて車のドアを静かに閉めた。
















――――――――――――




車で1時間ほど車を転がし、高速道路を走っていると、目的地の所で車は高速を下りる。


目的地に行く道中、杏月は真剣な表情とはまた違い、ふんわりとした表情を覗かせながら照之に問い掛ける。





 「あの、照之様??僕の恰好、おかしくはないでしょうか??」


杏月は似合っているか分からず照之に聞くと、照之は杏月がいない方を向き、外を眺めながら言う。





 「ああ、とても美しいぞ。見惚れてしまったほどに……美しく可愛いぞ」


 「はい……。ありがとうございます」


照之は照れ隠しにそっぽを向いていると、杏月は身体を寄せ照之の腕に頭を預け、身体を委ねる。


杏月の表情は面妖で妖艶な姿に変貌した。


流し目でどこを見てるかわからない瞳、照之はふと杏月に目線を落とすと、直ぐに杏月の色香に誘われた。



 なんだ……その表情は!?おなごになってないというのに、もうここまで片鱗をうかがわせるとは、おなご以上におなごになってやがる。まったく……そなたは、どれだけ可愛くなるのだ。



照之は内心そんな事を思っていると、杏月の色気のある表情に惹き込まれ、杏月の肩を抱き寄せて密着する。





 「そうだ、杏月。これからゆく所なんだが、俺の同級生で御曹司の屋敷なんだ。杏月は俺の後ろでバックを持って側にいてくれたらそれでいいからな??」


照之にそう言われると、杏月は直ぐに返事をする。





 「は、はい!!粗相のないように気をつけます!」


 「うむ、そうしてくれ」


会話を終えると、杏月は寄り添うように照之に密着して座っていた。








車は目的地に着くと、運転手は車を降りてドアを開ける。





 「照之様、御到着でございます。どうぞ、行ってらっしゃいませ」


照之は運転手に「ご苦労」と労いの言葉を添えて先に出ると、杏月が出る時に手を差し出してリードする。


杏月が車から無事に降り、照之の斜め後ろに立って一緒に玄関に向かうと、入り口に執事が立って待っていた。





 「ほっほっほっ。お待ちしておりました照之様。……失礼ですが後ろの姫君は??」


執事は照之に挨拶をすると、後ろに真面目な顔を浮かべて凛としていた杏月を見て、つい尋ねてしまった。





 「ああ、この子は俺の側室候補の姫君だ。今日は俺と同行するとの事で参上した次第。それと、もうアイツはいるのか??」


その堂々たる姿や振る舞いで話している照之に、杏月は真面目な顔をして動向を観察していた。





 「おお……。これほどの美しい御方を御傍に置かれるとは、流石ですな照之様。それでは、霧崎様がお待ちですので御案内致します」


執事もまた杏月の美貌に魅了されていた。


照之と喋っているものの、自然と意識や視線が横に目が向いてしまい、執事は慌ててその魅力を遮るように2人を部屋に案内する。


執事は案内しながらも先程の凛とした表情が脳裏に刻まれた、彩られた姿や髪や瞳に執事は一瞬で心を奪われた。


豪邸の中を少し歩くと、ある部屋に立ち止まり執事は扉をノックする。





 「霧崎様。照之様がいらっしゃいました」


 「ああ、セバスチャン。いいぜ!開けてくれ」


 「ハッ!!」と言うなり執事は、ドア開け「どうぞ」とドアの脇に立つ。


霧崎はまたくだらない話でもしようかと思い、会談する日になると喋りたくてうずうずしていると、照之の後ろに控える姫君に意識を取られる。





 「よう!照之、久しぶりだな……ッ!!」


霧崎は照之に挨拶すると、一緒に入ってくる姫君の姿に呆気を取らた。


茶髪で遊んでそうな見た目の美男子こと霧崎は、意外にもラフな服装で過ごしていた。


女遊びで有名な霧崎でも、杏月の魅力的な佇まいにあっという間にチャームされてしまった。





 「照之よ……。そちらの美しい女の子は誰だい??」


 「ああ、こやつは俺の側室候補の姫君。杏月だ!!」


霧崎は、ハッと振り向く。


霧崎は照之のいきなりの紹介にびっくりさせていた。


照之は今まで女っ気がなく女性に今まで興味がないと噂された男が、隣にいる絶世の美少女である杏月の肩に腕を回し、紹介する姿に霧崎は驚かされた。





 「杏月。紹介する、こいつは俺が務めている学園の友人である霧崎だ。こんなちゃらんぽらんなチャラ男だが、一応名高い御曹司をやっていてな。挨拶してやってくれ」


 「はい、照之様。僕は照之様の御傍でお仕えしています、杏月と申します。特にどうとかは分かりませんが……その、よろしくお願い致します」


照之の合図に杏月は、解釈して簡単な紹介をすると、頭を下げる。


霧崎は杏月の姿に既に魅了され、只々驚愕して沈黙する。


先程まで凛とした真面目な表情から一転、杏月は小さく微笑む姿に霧崎の男心をくすぶった。





 「美しい……。て、照之よ……!この子、可愛い過ぎないか??」


霧崎は思っていたことを、そのまま口に出した。





 「ふふふっ。やっぱりお前もそう思うか??面妖な美しさだろう??だが、こやつは俺のだぞ??」


霧崎の女に対しての欲望を何となく察した照之は、()かさず先手を打つ。





 「あ……ああ。でも俺はこの子と結婚したい!!女遊びは止めるから頼む……!!い、いくら出せば譲ってくれる??なあ、頼むよ!!!!」


照之は霧崎がいつもと違う動揺ぷりに驚愕した。


女遊びをモットーに、欲しい物は必ず財で従わせてきたそんな男が、自ら頭を下げて杏月を欲しがる姿に、杏月の存在がどれ程特別なのかと照之は悟った。





 「ダメだ!!いくら霧崎でも杏月は渡さん。こやつは俺の妻となるのだからな……!!霧崎、お前にはやらんぞ?もし変な事をすれば分かるな??」


照之は杏月を離すまいと抱き寄せ、杏月の唇にキスをして霧崎に見せつけた。


杏月は唐突にキスをされ、(あまつさ)え口を蹂躙されたことにびっくりする。


先程の凛とした表情が一転して頬を染め、腰を砕き照之に寄り掛かると、色っぽい姿を覗かせ始める。


霧崎は目の前で恋をした姫君を、照之は躊躇なくキスをする姿にもやもやだけが募る。


とろーんとした杏月の嬌艶(きょうえん)な雰囲気に、照之の体は電撃が落ちたかのような衝撃がこだまする。





 「わ……わかったから殺気を出すな。もちろん強制ではない、必ず俺の魅力でこの子を俺のモノにしてみせる!!」


バチバチと2人が火花を散らしてる中、杏月はぐでっと照之に寄り掛かる。



 どうしてだろう……。男なのにキスされて抵抗もしないまま受け入れるなんて…………。照之様とキスしても何にも抵抗ないってことは……!?僕は、ホントにおかしくなっちゃった!?はあっううぅ……どうしよ。



杏月の心は、乙女心のような感情が芽生えかけていた。


性転換をする以前に、杏月は既に乙女より乙女過ぎる程の表情を浮かべ、男を自然と惚れさせるその美貌は、より一層と妖艶さを増す。





 「まあ、なんだ……。それはさて置き、取り敢えず座ろうぜ……?」


杏月の姿に耐え兼ね、霧崎は座るように言うと、照之も頷き座る。





 「ああ。取り敢えず先に、お前が言ってたビジネスの方から話すか??」


 「そうだな。先日な俺の会社が新たに新商品の開発を始めたんだ。でもな今回は上手くいくか分からねえから、参考までに照之に聞きたかったんだ」


2人は話し始めるも、霧崎は何故杏月がソファーに座らないのかと疑問に思いながら、座る様に促した。


杏月は照之の隣に座ると、華奢な身体でビジネスバックを抱える姿に、照之は少し離れていた杏月を傍に寄せた。


照之のその行為に霧崎は、気付けば嫉妬の眼差しを照之に向けていた。





 「おいおい。そんなに怒るなよ??そんなんじゃ女にモテねぇーぞ??」


クックックツと照之は楽しそうに笑いながら霧崎を見ると、霧崎も負けじと応戦する。





 「はっ!!俺だってたくさん女を抱いてんだからなー」


 「うん、屑なのは知ってる」


 「ぶふっ!?ひ、ひでぇ!?」


 「でも、ホントの事だろ??それに我は、杏月がいれば十分だしな」


 「ぶふっ!?それだよ、それ!!その態度が気に入らねぇ!!」


いがみ合う2人に杏月は思わずふふっと笑みが零れ、「仲がいいですね!」と言うとにこやかになる杏月に、照之と霧崎はドキッとさせ黙り込んでしまった。






それからは暫くしてビジネスの話や学園に行けていなかった照之に、学園の状況を霧崎から聞き、たわいもない話をしていると、あっという間に移動の時刻になっていた。





 「そろそろ時間か。話はこの辺にして、お開きにするか」


 「ああ、そうだな。今日も楽しかったよ、ありがとな。学園は大体変わらないかなー、だが……杏月ちゃんを学園に連れてくると、多分大変な事になると思うから気を付けろよ?」


 「忠告痛み入る。だが、それは大丈夫だ!この俺がこんな良いおなごを離すわけなかろう??」


照之は杏月を抱き寄せ首筋にキスを施すと、杏月は為す術なく「ひゃ……ッ!?」と声を漏らすと、霧崎は血走った眼光で見ていた。





 「貴様ッ!!軽々しく杏月ちゃんに触れてるんじゃねぇぞ!!」


 「ふっ、貴様は嫉妬でもしているのか??それに貴様だって、おなごとしていただろう??どんな女も落とす霧崎が、杏月だけは落とせないとな。なあ、杏月よ。そなたは俺の側に居てくれるだろう??」


血走りながら嫉妬している霧崎に、照之はドヤ顔で答えて杏月に同意を求めた。





 「……はい。僕は、貴方様の物でございます……」


うるうる目の上目遣いで、照之を見つめる姿に霧崎はドギマギしてしまう。


照之は勝ち誇ったように満足気にして、杏月を引き連れて部屋を出た。


霧崎は上目遣いで照之に(すが)る杏月の姿を目にしてた。


儚い思いとは裏腹に杏月にまた魅了されながら、イケメンフェイスは(ことごと)く崩れて悔しがる。


杏月に魅了された霧崎は、為す術もなくソファーに横たわる。


何度も何度も先程の色っぽい表情や凛とした表情が、交互に霧崎の脳内をちらつかせた。


霧崎が悶絶して苦しんでいる中、照之達はそそくさと車に乗って次の目的地に向かっていた。





 「先程は、済まなかったな。アイツは直ぐに人の女でも気に入ると、横取りする奴でな。御曹司としては、優秀なんだがな……。女遊びが余りにも酷くてな、俺もついムキになってしまった」


照之は、バツが悪そうに言う。





 「いえ、僕は照之様に救われた身です。それに……こんな優しい御方を、裏切る行為など僕に出来るとお思いですか……??それにこんなにも想われていたなんて、恥ずかしいですが……僕は嬉しかったです……!!」


そう言うと、うるうる目で訴えてくる杏月の姿に、理性が爆発しかけた照之。


男だと分かっていても、一つ一つの仕草や声色に自然と(いとお)しさを懐き、独占欲が自然と湧くのを感じた照之。


杏月は、照之の腕にギュッと抱き付くと、えへへと笑顔を向けた。


照之はもう性別などどうでもよいという感じで、杏月の頬を無意識に手を添えた。


杏月は抵抗することなく真っ直ぐな瞳で見つめると、照之は少し蕩けた表情の杏月に我慢出来なくなり、杏月におもわずキスをした。


最初はビクッとした杏月だったが、受け入れるように照之の抱擁を返して、それに応じた。


唇が何度か触れ合った後、何度も混ざり合う唾液の音が車内に小さく響く。


ディープキスをし終わると、杏月は腰が抜けてしまい照之に身体を預けていた。



 やってしまった……!男とキスしてしまった……。杏月はまだ男なのに何故だぁ!!こんなにも甘い口溶け、男なのにおなごのようなこの反応……!!面妖すぎてかなわん!!!!それに途中から抱き締めてきたぁぁぁぁ。可愛過ぎる……。そなたは何故美しく、そして誰の心も射止めてしまうのか……。



ぐったりして照之に(もた)れ掛かっている杏月の姿を横目にそう考えていると、自然と自尊心が崩れてしまいそうになった。


杏月の肩に手を伸ばす、杏月が動く度に杏月の髪がゆらゆら揺れると、シャンプーのいい香りが鼻腔を刺激する。


杏月もまた動揺仕切っていた、自分自身がここまで抵抗なくキスをしてしまうことに。



 はぁ……。照之様にキスされてしまいました……。何故でしょう……?それに……どうして僕はこんなにも、ドキドキしてるんだろう……。



いつの間にか(まぶた)が重くとろんとした杏月に、照之の手が幼い身体を優しく包み込む。


グッたりしてる杏月は抵抗する力もなく、ただ照之の意のままに寄り添っていた。


杏月の頭が照之の胸の中にコツンと近付くと、照之は頬が緩み束の間の時間を堪能している中、それでも車は目的地に向かう。


















――――――――――――




車は街の中心街を走り始めると、より一層人気は増す。


一際目立つ大きなビルの前に、照之達を乗せた車が停車する。





 「お待たせ致しました」


運転手はそう言いドアを開けると、照之は先に降りる。


杏月をリードするもドアの段差に(つまず)いた杏月に、照之はすぐさま抱き寄せる。


運転手はドアを開けながら主人とその付き人を見るや、運転手の身体全体がゾワゾワっとした。


不快な鳥肌ではなく、杏月の美しさ、その色っぽさに魂を震わせた。


杏月が出てくる姿はとても色っぽく艶姿、少し髪が乱れているがそれがまた男の欲望や性欲を掻き立てる。


運転手は平然を装い、直ぐに車に乗り込むと、ビルの中に車を通す。





 「よ、よし!でわ、行こうではないか!!」


 「はい、照之様……!」


杏月の色気を含んだ声色に、照之の脳は簡単に侵食させる。


グッと堪えた照之は、ビルの中に入ると杏月も一緒に行動する。


都内でもひときわ立つ高層ビルは、照之が所有する企業の1つ。


ゾロゾロと多くの人が働いている中、直ぐに視線を感じた杏月はついつい照之の服の袖を反射的に握ってしまう。


杏月は内心ビクつきながらも、照之の側にいる以上は見っともない姿は晒させないと、奮闘していた。


直ぐに服の袖を離す杏月、緊張して真面目な表情を浮かべるもそのあどけない姿を覗かせる。


杏月を目撃した従業員は、杏月を一目見るとその場で足を停めるほどの存在感。


2人がエレベーターに乗り込むと、照之に向かって従業員が挨拶を交わす。





 「あっ、社長じゃないですか!?お久しぶりっス!!」


 「社長!!お見えになってたんですね!!」


口々に照之に挨拶する従業員に、照之は笑顔で挨拶に答えていく。





 「皆、久しいな!!仕事の調子はどうだい??」


 「はい。お陰様で今のプロジェクトもうまく行きそうです!!」


 「はははっ、ならよかった!素晴らしい従業員達を持てて俺も嬉しく思うぞ!!精進してくれ」


照之の笑顔で話す姿に、その場に乗り合わせた従業員は楽しそうにしていると、その場の空気がガラッと変わり明るくなる光景に終始杏月は無言で見ていると、近くに乗り合わせた男の人が杏月について照之に尋ねた。





 「しゃ……社長!!そちらの綺麗な女性の方はどのような……??」


 「ああ、こやつは俺の側で仕える側近みたいなモノだ。たまに見かける時もあるかも知れないから、その時は優しくやってくれ」


 「はい!!社長も罪におけませんね!こんな可愛い方が側にいてくれるなんて、羨ましい限りです」


その場の従業員が満場一致で「うんうん」と頷いていると、照之はそうだろうという満足げな顔をしていると、直ぐにエレベーターは目的の階に向かった。


エレベーターは目的の階まで上がると、ベルが鳴りエレベーターは止まる。


照之がエレベーターから出ると、杏月も続いて付いて行き「失礼します」と小さく微笑み解釈すると、エレベーターに一緒に乗っていた男女は、赤面して撃沈してしまう。


2人は大きい会議室に入ると、既に席は全て埋まっており、照之が来るのを待っていた幹部達。





 「皆、ご苦労。それで大きいプロジェクトと聞いたが、それも君達のような有能な幹部がいてくれるから取れたものだろう。俺は嬉しく思う、感謝する」


照之は会議室に入るなり幹部を労い軽く頭を下げると、幹部は直ちに立ち一同綺麗なお辞儀を深々と丁寧に行った。





 「今日は付き人も一緒に首席するのでな、席を1つ頼む」


 「はい。お待ち下さいませ」


照之がそう言うと、サッと社長が座るであろう豪華な椅子の隣に、キャスター付きの座り心地が良さそうな椅子が置かれた。


照之はドアから1番離れた席に向かうと、杏月もいそいそと遅れないように同行する。


真面目で凛とした表情をして照之の跡に付いて行く杏月に、その場に居合わせた幹部の男女共に目を取られた。


まだ火照る身体が収まらない杏月は、凛とした表情とは裏腹に異様なまでの色っぽさを醸し出す杏月に、その場の誰もが杏月に視線を移していた。


杏月は震える足を堪え、(つまづ)かないようにゆっくり歩く事に務める。


照之は席に付き、杏月も隣の席に腰を落とすと、照之は早速喋り始める。





 「再度言う、皆の者ご苦労である。今日は幹部一同、忙しい中集まってくれて感謝する」


照之は席に立つと一例して座る、その周りの幹部も即時立ちあがり、照之よりも深く一例して再び席に着く。


杏月はその見事な光景におお……!と、感心しながら真面目な表情で照之や幹部達を観察していた。





 「本日、社長自ら足を運んで頂き、誠に感謝致します!!本日の要件と言いますと、大きいプロジェクトが入ったので、お耳に入れて頂くと共に相談したいと思いましてお呼びさせて頂きました!!」


スーツをビシッと決め、照之の近くに座っていた30代ぐらいの男性が大きく、張りのある声でそう言う。





 「うむ、今回のはかなり大きいと聞く。先ずは良い案件を持ってきてくれた事、感謝する。是非内容を簡単に噛み砕いてくれて構わないから聞かせてくれ」


 「はい。こちらのプロジェクトなんですが、小型都市開発のご依頼でした。全て神乃グールプがするならば資金を増やすと、相手の方は仰っておりました。プロジェクトの現段階では、お互いにある程度までの話し合いは既に終わらせています。それで、ご依頼のお客様は何と三門(みかど)グールプの会長様からの直々のご指名を頂きました!!いつもお世話になっている神乃グールプの社長を信用しての事と、仰って満足そうになさってました。と言う事で、依頼報酬は大まかに7千億円程でごさいます。もちろん神乃グールプが全て行った場合、1兆5千億円は確実に利益になるようになさって下さるようです。この案件、ありえない程の破格と思われます」


男はそう言い終わると、照之は深く考える様子に杏月は思った。



 照之様はお仕事だとこんなに凛々しいお姿に変貌するんですね……。部下の方にも優しくしていて……なら僕に何ができるのかな……?助けてもらったんだし、人生かけてでも御恩を返さないといけないよね……!



杏月は心の中でそう思い、照之の逞しい姿にただ視線を向けて、その行く末を見届ける。



 くっ……!!杏月よ、そなたの熱い視線を感じるぞ!!良いぞぉぉぉお!!何だかやる気が満ち溢れてくる。それに、これ程の案件だと他の案件を疎かになってしまう可能性もあるし、後で父上(ちちうえ)に相談するか。




考えが纏まり、照之は口を開く。





 「いい案件だが、下準備はしておけ??もちろん三門グールプの会長とは、後日直接話し合ってくる。今存在する案件を片っ端から綺麗に終わらせること。もちろん手は抜かずにな??よろしく頼むぞ」


照之が言い終わると、一斉に立ち上がり一例し再び席に座る。


照之はその後淡々と現在状況、収支、支出、依頼内容など重要な話を一通り聞くと、後で纏めて重要書類を出すようにと求め、会議が終わると照之は言う。





 「よし、会議もこの辺にするか。みなの者、頼んだぞ!!そうそう。後ここにいる杏月と言う者がたまに出入りすると思うからもし困ったりしていたら助けてやって欲しい。杏月、挨拶だけ頼む」


 「はい、照之様。私は杏月と申します。以後出入りをする事もあると思いますが、その時は是非よろしくお願い致します」


杏月は席から立ち一例してから挨拶を済ますと、微笑んでまた座る姿に周りにいた者は不意打ちをつかれたかの様な(つら)をする。



 クククッ……。コヤツら、杏月の美しさに言葉も出ぬか!!よし……さて、行くか。



その豆鉄砲を食らった鳩のようにびっくりしている一同に、照之は内心笑い転げている照之は、ふぅと一息いれ杏月に話し掛ける。





 「うむ。杏月、そろそろ帰ろうか」


 「はい、照之様!」


照之が杏月に帰宅を促すと、直ぐに立ちその場を去る。


杏月も照之が席を立ち去るのを確認して一緒に付いて行く。


杏月はバックを持って会議室を出る際に、会釈して小さく微笑み杏月は出て行くと、静まり返った部屋は異様な雰囲気になっていた。


















――――――――――――



帰り道の午後4時頃。


会議から出た後、30分程照之と杏月はビルの中を散歩をしてから車に戻ると、杏月は大きく疲れたように呟く。





 「照之様~疲れました……。いつもあんな凄いことしてたんですね!!僕、ビックリしちゃいましたよ?それに、あんなにかっこいいお姿……誰でも惚れちゃいますよ」


杏月は苦笑いを零しながら言うと、照之も口を開く。





 「まあな。でもあのビルにも美人や令嬢が多いが、そなたの魅力には到底叶わんさ。緊張もしただろう??少し帰るまで時間もあるし、寝るとよいぞ!」


照之は杏月の頭をぽんぽんとしてそう口にすると、杏月は直ぐに照之に身を預けて直ぐ寝付いてしまった。



 可愛いのぅ……色々疲れたろ、ご苦労だったな杏月。……ありがとな。



相変わらずの寝顔の可愛さに照之は、頬をツンツンしてから肩を抱き寄せ労う。


それからのこと、そのまま寝てしまった杏月は照之にお姫様抱っこされた姿で部屋に戻り、直ぐにメイドが寝巻き用ローブに着替えさせる。


化粧を落とし着替えたワンピースドレスは、洗濯する為にメイドが持っていく。


その日霧崎グールプの御曹司と神乃グールプの企業のビル内で、照之の隣にいた絶世の美女を見たと噂で持ち切りになり、男女問わずその美しさにみな一瞬で射止められてしまった。

「杏月が可愛い!!」

「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」


と思った方は是非、好評価をお願いします。



評価、ブックマーク、感想などして頂けると、物凄くモチベーションも上がりますので良かったら応援よろしくお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ