皇帝陛下のお悩み
照之は悩んでいた、杏月が来て2ヶ月が経った。
杏月がますます可愛くなっていくのを見ると、照之は行事や神乃家のやっているビジネスの重要資料も一向に手が付かない状態になっていた。
「なぁー、爺よ……」
書斎の机にぐでっとなりながら、爺やに語り掛ける。
「はい、なんでしょうか。坊ちゃま」
「最近、ますます杏月の奴、美しくなっておらぬか~??」
「左様でございますね。杏月様は、益々麗しゅう姫君になられております……。それに2ヶ月程で大体のメイドや従者達とも仲良くなり、最近では杏月様専用の親衛隊も着々に増えておりますぞ!」
「何なのだろうか爺よ。アヤツの魅力なのか分からんが……ほっとく事が出来ない複雑な気持ちにならぬか~??」
「分かりますとも!!わたくしにもたまに話しかけて頂くとき時も、あの麗しゅう瞳や笑顔にわたくしも年甲斐もなく、ノックアウトでございます」
「だよなぁ~。これでホントに女になったら、他の成功者や貴族が黙ってなさそうだなぁ……。はははっ……はぁ―――」
「ふぉっふぉっふぉっ。杏月様の魅力を他の者達に知られたら一大事でございますね。坊ちゃま」
照之は大きい溜息をつく、2ヶ月前までは痣だらけだった身体は前より程よい肉付きになり、それなりに立派な美少女に成り変わり、照之の理性はおかしくなりそうになっていた。
貴族の行事や財閥管理や会議に出席し、余り杏月とは話が出来る時間が取れなかった照之は、杏月の変化ぷりに度肝を抜く。
そんな悩みを抱えているともつゆ知らず、隣の部屋からメイドと杏月とその弟達が楽しそうに話していた。
「なあ、姉ちゃん。傷の方は治ってきたかー??」
「うん、こちらにいるメイドさんにエステティシャンの方。それにプロのお抱えのお医者さんがホントに良くして頂いて、痛みも少しずつだけど減ってるよ!!」
ともきは杏月の事を心配して尋ねると、思いのほか良い方向に向かっていたのでホッと胸を撫で下ろし、杏月をギュッと抱き締める。
杏月はともきに微笑みを浮かべながら「ありがとぉ」と言いながら抱き締め返し、ともきの胸に顔を埋める。
杏月の仕草にともきは顔を真っ赤にしていると、ともきはメイド達にからかわれる。
「もっ、弟思いな杏月様だこと!!絶対にともき様は、杏月様の事好きよ??」
「ええ、そうですね……。普段から年の離れていない唯一の姉弟なんですもの……!!それにこれほど美しい男の娘っ子に、惚れない人などいませんの!」
「間違いないです。ここの屋敷にいる使用人一同、杏月様の事好きですし、ともき様の気持ち痛いほど分かります!!」
「ちょっと……メイドさん、それは酷いですよ!!分かってて言ってますよね??べ……別に好きとそなんじゃ……」
メイド達は杏月の弟を構っていると、ともきは顔を染めどもりながら否定していると、ゆうじとみずきが杏月の両腕に飛び付く。
「いいもーん!!お兄ちゃんが嫌いでも、僕はおねぇーちゃんの事……だーいすき!!」
三男のゆうじがそう言うと、メイドはキャッキャッとその場ではしゃぐ。
「ぼくもだもん!!!!おねぇたんのこと、しゅきぃ……!!だれにもわたさないもん!!」
四男のみずきがぷくーと膨れながら杏月を独占しようとしている姿に、周りにいるメイド達はキュン死にする手前だったが、杏月の照れながらゆうじとみずきをギュッと抱き寄せて、「僕もみんなの事だーい好きだよぉ!!」と透き通る声とそう言うと、満面の笑みを浮かべた。
杏月は天使を超えた何かか!?と錯覚させる程の破壊力に、部屋にいる周囲のメイドはもちろんの事、弟達も顔を真っ赤にして顔を下に伏せるのであった。
にぎやかな声は隣の照之の部屋にまで届き、大声や叫びが聞こえる。
「爺よ……。あれは、なんだね……」
「そ、そうですね……坊ちゃま。あれは女子会というものに等しいかもしれません。あのままでしたら弟様が杏月様を手放さないかもしれませぬぞ!!ですが、坊ちゃま。杏月様ともしもの事があった時、弟様達に認めて貰えなくなるかもしれませぬぞ!!」
爺やは冗談めいた事を口にする。
「爺よ……いくら何でもそりゃないだろ。俺はこれでも、皇帝陛下してるんだよ??」
「ふぉっふぉっふぉっ、存じております。ですが悩んでしまうのは同意せざるを得ない事です。坊ちゃま」
「爺にこれだけ言わすとわ……。アヤツはホントに、凄いおなごだな!」
「はい、坊ちゃま。杏月様が来てから、わたくしも杏月様とお話しするのが密かな楽しみで、日課になりつつあります」
「確かにこの屋敷も、大分賑やかになったよな。そうは思わぬか、爺よ?」
「はい」と爺やは言うと、にぱっーと笑顔になる。
照之は更に今後が心配になってしまい、その日の仕事は、全然手に負えなかった。
――――――――――――
深夜12時頃。
照之の部屋のドアから、ノック音が響く。
「照之様、起きてらっしゃいますか??」
可愛らしい声がドアの向こう側から聞こえると、照之は直ぐに作業を中断し、ドアの方に向かった。
「どうした、杏月??」
照之はドアを開け、杏月を迎え入れてそう言う。
「照之様……。はい、少しお話をしたいと思いまして……!」
「そうか。なら今日は、ベッドにでも座って、話そうではないか」
「はい!」
照之が向かい入れ杏月は誘われるがまま照之の腕を掴まれると、杏月は離そうとはせずに照之の意のままに従い、ベッドに向かう。
「それで、話とは、何だ??」
「はい!えーっとですね、もう2ヶ月の月日が経ちました。弟達にも爺やさんがとても良くして貰っていていること、本当に感謝しております。皆さんとても親切にしてくださいます。だからこそ僕は、心から照之様に感謝申し上げたいと思い、部屋に来ました」
杏月は座っていたベッドから離れ、床にへり下った。
下に伏せると照之の足の甲にキスをすると、頭を下げるこの一連の行為に、照之は疑問に思った。
「お、おい。それはなんだ??何をしている……?」
「はい、お父さんから教わった事です。底辺の人間は、目上の人や位の高い方には感謝する時、足の甲にキスをすると教わりました」
「なるほど……。だがな?そんな事、そなたはしなくてもよいのだぞ……??」
「な……なぜでしょうか??」
一連の流れに杏月は少し不安な表情を浮かばせ、曇らせる。
その姿に照之は思わず杏月の身体を手繰り寄せ、抱き締めた。
「よい…よいのだ。俺はそんな悲しい姿をしてまで言われたくはない!!もし感謝をするならもっと普通でいいのだ、分かったな??」
照之は頭を撫でながらそうに言うと、今までそうして生きてきたのかと思うだけで、照之の心は疼いてしまう。
「は……はい。照之様……」
杏月から甘い声とは裏腹に、ブルブルと緊張してしまい、身体を震えあがらせてしまった。
な……なんて、奴だ!!この甘い声で言われる囁きは……!そんな声を出されたら、誰だってイチコロだろ……。これは本当に本格的に、心配になってきた……。
照之は杏月のその姿をついつい独占欲を掻き立ててしまう程心配していたら、杏月は照之の体をギュッと抱き付きながら、口を開く。
「照之様……。僕の背中を……見て頂けませんか??その、自分じゃ中々見れないので」
そういうと照之から離れ後ろに向くと、照之の前で服を脱ぎだす。
照之は杏月の背中を見ると、痣は少し良くなっていることが目に見えて分かり、安堵する。
自分のお抱えの医者やエステなどで磨き抜かれた身体は、以前とは比べ程よい肉付きで、綺麗なくびれが出来始めていた。
痣や傷が以前より主張してないのを確認して、杏月の背中に触れた照之。
「ひゃっ……!?んんっ……。い、いきなり触らないで下さい。びっくりしてしまいます」
「あ……ああ。すまない……」
照之がいきなり杏月の背中を触ると、杏月は変な声を出してしまい内心ひやひやする照之は、直ぐに謝罪し背中を全体的に優しく撫でた。
傷はまだ完全には治っておらず、少し凸凹しているがそれほど違和感が無くなっていた。
照之は黙々と触り呆けてしまい、杏月のサラサラでスベスベの肌の感触が照之の指先に伝わる。
かすかなボディソープの香り、シャンプーやリンスの品のある香りが鼻先を掠める。
ずーっと、撫でていたいと思っていると、杏月は後ろを振り向くと、色っぽい流し目が照之を捉える。
「すまないな、とてもよい肌触りだったから……。つ、ついな。永遠に触っていたいくらいだぞ!!はは、ははは……」
照之は笑いながら目を逸らすと、杏月ははだけている姿のまま正面を向く。
「照之様がお望みであるのなら、触って頂いて構いません……。照之様が……。そ、その……僕達を救ってくれたから今があるんですよ?本当に、ありがとうございます」
杏月は服がはだけているにも関わらず、照之の胸にひらりと身体を預け頭をぐりぐりと照之の胸元に頭を預け、可愛らしい仕草をする。
その姿に照之も爆発した。
愛くるしい姿に心を奪われながら杏月を抱き寄せ、サラサラな黒髪を撫でおろし顔を近付け杏月の甘美な匂いを堪能する。
全てが計算したかのような艶やかさに、照之は杏月の手の平で転がされるような感覚に陥る。
杏月の全てが照之の生き甲斐になり、杏月の存在は、何時しか安住の地と化していた。
杏月は何も言わず、ただ幼い体を照之にぴっとりと密着させる。
2人だけの空間であり、そう、ゆうなれば、2人だけの共有する親密のひと時、というのがしっくりくる程の、濃密な時間。
「杏月……。そなたは実に、卑怯だ!」
「そんなことないですよ……。照之様……」
2人はいつも以上に、小さく甘ーく耳に囁き合った。
照之は初めてのドキドキに戸惑っていると、普段から弟達のお母さんとしてやっていたこともあり、杏月に自然と主導権を握っていた。
「いつも、お仕事お疲れ様です……照之さまぁ。たまにはこうゆう息抜きも、いいかもしれませんね……?」
杏月は照之の身体を再び抱き締め、無意識に離したくないとばかりに自然と腕に力が入る。
杏月は照之の顔を下から見上げていた。
「お……おう。そうだな、こ、こうゆうのも2人の時だけだからな……??」
杏月に視線を落とすと、うるうると滲ませた瞳に照之は思わず絶句する。
照之の全身は、物凄い速さで心身共に、訳の分からない熱量が増していくのを感じた。
「はい、仰せのままに。てるゆき……さまぁ……!」
杏月が恥ずかしそうに言った瞬間、体中が癒され、温かい気持ちに包まれるのがわかった。
なんという包容力だ!!と照之さえ圧倒させる妖気のような、異常なまでの興奮を覚えさせられた。
照之はまた一つ悩みが増えたと思いつつも、杏月と薄暗い部屋の中、長く抱き合い身体を密着させ、お互いに見つめ合っていた瞳は、更に身体の熱さが増す中、心臓の鼓動は自然と加速する。
額を合わせ、瞳が当たってしまうのではないかと思うぐらいに、熱を持つ顔をくっ付け、照之は割れ物を扱うように優しく髪を撫で下ろす。
「杏月が可愛い!!」
「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」
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