表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇帝の従える妻は元男の子?!  作者: アリス・world
第三章
46/49

決行と逃走

準備期間が終了し、暫しの放浪タイムを楽しんでいた時、理久斗の父親から電話が入った。





 「もしもし」


 「準備は完了した。家族もわからない所に身も隠した。それでだが……お前は本当にこのままでいいのか??」


理久斗の父親は、まだ納得いかない様子が電話越しからも分かってしまう程の口振りに、理久斗は少し笑いが零れるも話を続けた。





 「ああ。もう俺は何人も殺めてしまった。母さん達の住む世界は居心地がいいけど、俺には少し眩し過ぎるよ……」


 「…………そうか。なあ理久斗……お前は母さん達と一緒に過ごしたいか??」


 「何を今更。もちろん過ごしたいけど、あの政治家には、同情は通用しない。弱者は食われる、それを言ったのは父さん……貴方ではないか。多分この任務が終われば俺は殺されるだろう、だがそれでいい。母さんや冬弥が平穏に過ごせるなら……。このぐらいの犠牲で済むなら、俺は本望だ」


 「…………」


 「父さん、最後の約束をしてくれないか??」


 「……どうした理久斗」


 「母さん達を頼んだよ。じゃなきゃ死んだ時、枕元に出てきてやるんだからな」


理久斗ははっと笑って通話を終了する。


理久斗は家族が居なくなった家を一通り見て周り最終確認を行う。


様々な感情が渦巻く中、理久斗は自室に戻り最後の仕上げを施し、明日に備えた。




翌日、理久斗は装備を整え、いざゆかんと外に出ると、知らない男達が自宅の周辺に身を隠して待機していた。


理久斗は、腰に刺した拳銃を手に取ろうとした瞬間、前にいた男は慌てて声を出す。





 「ま、待て。俺は間正様の部下だ。そ、そんな物騒な物を出すな」


 「そうでしたか」


 「ああ。それでどうにして学園を混乱させればいいんだ??」


 「あなた方は清掃員として各地にバラけて欲しい。丁度月に数回清掃員が入る日だ、先ずは清掃員を奪取する。その後、各地人員は学園内を混乱させてくれ。行動開始時刻は1(ヒト)6(ロク)、3(サン)0(マル)だ。ターゲットの女を奪取する間は死ぬ気で学園を混乱させろ。もし失敗したら皆の首は無くなるだろう、そして人質は犯すな、そして殺すなよ??じゃないと一瞬でその頭が吹き飛ぶぞ」


理久斗の言葉に数十人の男は静かに頷き各地移動を開始した。




それから時間は刻一刻と過ぎ去る。


理久斗はボロを出さないように静かに学園生活に溶け込み、唯一の友人である友と最後の会話をしていた。





 「理久斗〜今日は朗報である!!おれっちの大好きなゲームが続編の制作発表されてめっちゃ嬉しかったぞ〜」


 「ふふっ。潤君、君は本当にゲームが好きだね」


 「う、うん……。もちろんさ。ゲームは楽しいもん、最高の文化だよ」


 「あっ……そうそう、そのゲームなんだけどね。はい、これ。たまたま手に入れてね、関係者と出資者の歓迎パーティーの招待状を貰ってね、僕は用があって行けないんだ。良かったどうだい??」


 「えっ!?こ、これは……中々手に入らない招待状ではないか理久斗氏!!しかもかなりレアなパーティーの招待状だね。ほ、ホントにいいのかい??」


潤は興奮気味にあたふたしていると、理久斗は頷き、呟く。





 「もちろん。僕が持ってても宝の持ち腐れだからね」


理久斗は、ハハハッと笑って友人との会話に花を咲かしているのであった。














ーーーーーーーーーーーー






時は経ち、午後4時20分頃。


理久斗は予定通り、杏月を手紙で呼び出す事に成功した。


杏月が来るや、理久斗はその容姿に不意にもドキッとさせてしまった。


容姿端麗、小柄で整ったサラサラな黒髪を微風が優しく掻き立てる。


杏月は、着くや口を開いた。





 「あ、あの……。この手紙は貴方で間違いないでしょうか??」


 「は、はい。間違いありません」


 「そうでしたか……」


 「ええ、ですがその表情を見れば分かります」


理久斗は苦笑いをして、杏月の困り顔を指摘する。





 「す、すいません。私には、大切な人達がいるのでこうゆうのは答えられません……」


 「だと思いました。でしたら、少しここの庭を散策でもしませんか??」


 「は、はい。そのぐらいなら!」


2人は学園の告白スポットの当たりを散策すると、理久斗は言う。





 「それにしても、杏月さんは顔に出やすいんですね」


理久斗少し笑ってしまうと、杏月が恥ずかしそうにして抗議する。





 「そ、そんなに顔に出てました?!お、おかしいですね……表情に出てないと思ったのに……」


杏月が恥ずかしそうにそっぽ向いてしまうと、理久斗はその愛くるしさについ意地悪をしてしまった。


散策をしてるのも束の間、遂に実行の時。


決行の時間に回った瞬間、学園中が悲鳴に変わった。


学園に清掃員として潜り込んだ間正の部下が武装して何人か人質を取っていた。


学園に数十人の大人が7人ごとにグループに分け、各部屋に配備され多くの生徒や先生は、清掃員が立てこもった方に意識が集中していた。


杏月も学園で起こった騒動にソワソワしていると、理久斗は静に杏月の背後に回り、耳打ちして杏月の口元にハンカチで被せた。





 「杏月さん。すいません……」


 「えっ?!…………」


口元に覆われたハンカチを吸ってしまった杏月は、少しして崩れ落ちる様に眠りに落ちたのを確認して、理久斗は傍に置いた変装着を取りに行き身に着けた。


騒動で学園の中の方に意識が向いてる中、理久斗は周囲を警戒しながら杏月をお姫様だっこして学園を後にした。




理久斗が学園から上手く逃げ切り、数分後に照之のスマホに神乃家所属特殊部隊から伝達が入った。





 「どうした」


 「緊急事態の為、こちらに連絡致しました。杏月様が先程、連れ去られました…………。只今、GPSを追っております。直ぐに居場所は割り出せますのでご安心下さいませ」


 「はぁ……。またか、だが今の我は非常に苛立ちで一杯である」


 「は、はい。屋敷にいたメイド隊も慌ててヘリに駆け込んで先に行ってしまいました。もしも銃撃戦になった時は、発砲の許可を」


 「ああ。後始末は任せろ。だがな……もしも杏月に何かあろうものなら、我はこの世界を許さん」


 「…………。我々一同、杏月を慕っております。我々の大切な主でございます」


 「ああ。また主犯格が分かり次第連絡しろ」


 「了解致しました」


通話を切った照之は、自身の目の前の壁を殴り付けていた。


分厚い板のパネルが簡単に穴が開き、拳からは血が滲み出ていた。


一呼吸置いた瞬間、隣にはどこからともなく現れた爺やが立っていた。





 「坊ちゃま……。お手が、だ、大事なお手でございますよ??その手は、杏月様を抱き留める時に必ず必要になります。ご乱心なさらず、冷静になるのですぞ」


どこからともなく現れた爺やが、血が滲み出ている照之の手を取り、一時的に応急処置を行った。


照之も爺やの言葉に「うむ、そうだな」っと言うと、爺やは引き続き報告する。





 「それで坊ちゃま、情報担当の者から早速情報を受け取りました」


 「随分早いな」


 「それはもちろんでございます。杏月様が攫われたと伝達された時、神乃グループが一斉に動き、各地のカメラやありとあらゆる情報を求める為、ハッキング致しました」


 「皆、杏月を慕っているのだな」


 「もちろんでございます。わたくしも年甲斐もなく元ヒットマンの名に懸けて、参る所存ですぞ!!」


 「はははっ、久しぶりに聞いたな。爺よ、それに良い顔つきだ。本職に戻ったみたいにな」


 「フォッフォッフォッ。年甲斐もなく、わたくしも憤怒しております」


 「流石我の右腕だな。それで、誰が黒幕なのだ??」


 「はい、情報によりますと、政界が絡んでいるそうです」


 「そうか……。ならそれ程時間は掛からなそうだな。後で政界の在り方を正さなければならないな」


 「左様でございます。これを機に政界に進出も良いかもしれませんぞ!!」


 「馬鹿を言え、高校生がなれぬものか。それに今の神乃グループの全体の数を分かってて言っておるのか??」


 「存じております。日本だけで2000万人強の従業員に海外で数億規模の従業員でございますよね」


 「そうだ、だが間違えは正さなければならぬ……。それに海外の者の動きも少し気になるしな」


 「はっ。そちらの動向もしっかり確認しておりますので安心して下さいませ」


 「ああ、任せる。それで学園の方は制圧完了か??」


 「はい、無抵抗の者は生かして捕まえましたが、何人か女子生徒を強姦しそうになっていたので特殊部隊が排除致しました」


 「良し、後は生徒の安否に強姦にあった者にはすぐさま女性カウンセラーを付けてやれ。さぁ、準備も整った、杏月を迎いにゆこうぞ!!!!」


照之の発言に爺やは深く一礼すると、共に学園の校庭に止まったヘリでその場を後にするのだった。














――――――――――――




それから時は少し巻き戻り、学園から出る事に成功した理久斗は、間正が指定した目的地を目指した。


その道中、力なく抱えられてる少女を見つめていた。


軽々しく持ち上がってしまい、思ったより華奢な杏月に儚さを抱いてしまう程、その眠る姿もまた美しかった。


理久斗は、学園から少し離れた所に車を止めていた。


普通はまだ18歳も満たない人が車の運転を行ってはならないが、間正のバックもあり運転する技術などは持ち合わせていた。


近くの空き家の車庫の中には、武器、弾薬がワゴン車に多く積まれており、如何なる状況でも最悪の事態を想定していた理久斗は、防弾使用のワゴン車、パンクしても数百キロ走るタイヤを付けており、遂にこの車を動かす時が来たのだと察した。


杏月の状態も気を使いながら、そっとフラットになっている後部座席に横たわって寝かした。





 「ごめんな、杏月さん」


理久斗は、そう言うと眠り姫の頭を優しく撫で、薄い布団を掛けて分からない様にカモフラージュする。


すぐさま運転席の肘掛けに弾薬が詰まったマガジン数個、アサルトライフル本体とマガジンが何十個があるか再確認した。


理久斗は確認が終わると直ぐに車を出し学園から遠ざかって行くのであった。




それから1時間が過ぎた頃、理久斗は高速道路に乗りパーキングエリアで束の間の休憩をしていた。


少し目を瞑りまったりと休憩していると、



 「動くな。動いたら殺す」


理久斗は徐に言葉を放つと、杏月は朧げな瞳で上半身を起き上がらせた。


杏月は、拳銃を向けられてしまい、緊張と同時に恐怖で少し足が竦んで腰が抜けてしまった。


朧げな瞳から不安で少し潤んだ瞳が理久斗を捉えていた。





 「そ、そんな顔しないで下さい。別に逃げようとしなければ何も致しませんよ」


理久斗は先程とは裏腹に優しい声色で呟くと、杏月もまた少し震える声で言葉を紡いだ。





 「ど……どうして、どうして、こんなこと……するんですか??」


 「んー、それを話すのは少し難しいかな……。まあ、強いて言えば、あんな政治家に見つかってしまったのが運の尽きさ」


 「それは……どうゆうことなんですか??」


 「杏月さん、君は質問が多過ぎると思うんだけど。まあいいさ、俺はもう少ししたら殺されてしまうのだから」


理久斗はそう言うと、少し悲しい表情を浮かべて何かを思い出す様に再び目を閉じた。


その姿に杏月は、



 「理久斗さん、何か事情でもあるのでしょ??良かったらお話してくださいませ。どうせ私なんか逃げる事も叶わないのですから」


その言葉に理久斗は思わず振り返り杏月を見てしまった。


そこには、先程怯えていた者とは思えない程、優しく美しい表情を浮かべた杏月が微笑んでいた。


理久斗は杏月の微笑みに、自身の母の姿が重ね合わさってしまい、観念したように苦笑いを零した。





 「はははっ、肝が座っているみたいだね。不本意だが、君を母の姿を重ねてしまった。まだ時間はある。明日の深夜の受け渡しになるし、それまで時間もあるし、少し話をしようか」


理久斗は後部座席に移り、今までの出来事を話した。


人を暗殺した事、父親の仕事を成功させる為に政治家の捨て駒になった事、そして大切な家族を。


理久斗は、知らず知らずのうちに今までの事を杏月に話していた。





 「それに俺は捨て駒、父さんの会社を成功させる為に俺は政治家の犬になったのも事実。多くの人を殺め、任務なら暗殺も厭わない。昔は貧乏で死に物狂いで暗殺部隊に入隊したのは小学生の頃だったな」


 「そんな小さい時から……。でも、それを話していいのですか??」


 「ああ、構わないさ。極秘事項だが俺はもう処される身、今更1つ2つ話しても変わんねーさ。はははっ」


 「そうなんですね……」


 「そうさ、それに君を好む政治家が依頼してきたんだ。俺は神乃グループに関わるのはよせと思ったんだがな、欲に支配されていてな、溺れるのは怖いものだね」



 「欲は程よくがいいかもしれませんね!!それに実は私も貧乏だったんですよ」


杏月が苦笑いを零し意外な言葉を口にする事に、理久斗は内心ビックリしていた。





 「じゃあ何故杏月さんはあの学園に……??それに何故神乃家のあの人と一緒にいるのか少し疑問に思っていたんですよね」


 「ふふっ、それなら皆さんも思ってると思います。照之様はとても凄い御方です。そんな方が何故か私みたいな一般人がいるかと言いますと、実の所……私の実の父が借金をたくさんしてその肩代わりする代わりにお金の為私を売ったんです。そんな時現れたのが照之様でした」


 「まあ、裏ではまだ人身売買もされる所も多くあるし、この国もどの国も闇が深いな」


 「怖い世の中ですよね……。それでしたら理久斗さんの家族のお話を聞かせて頂けますか??」


 「そうだね、物騒な話よりはいいね」


 「はい!!」


 「俺自体、父親は余り好きではないんだ。強いて言えば母親と弟の為にこの汚れ仕事をしていたのもあるかな。それに母親や弟をいい道具にされるなら……この俺の命1つで賄えるなら本望さ」


 「……。その気持ち、わかります」


杏月の言葉に鋭い眼光で理久斗は杏月を睨み付けた。





 「今、分かるって言ったのか……??君に何が分かるんだ……??小学生の頃から家族が殺されるのではないか……犯され続け嬲り殺されるのではないかって不安に駆られる思いをどう分かるって言うんだ!!!!」


近くに座っていた理久斗は杏月の胸倉を掴み、怒りの余り震える手を杏月は静かに理久斗の手を取り言う。





 「わかります。その苦しさも、辛さも……」


 「何故そう言い切れる!!!!」


 「さっき少しお話しましたね、私の父の話を。私にも大切な弟がいます。それに母を亡くしてから狂ったように暴力を振るうようになってしまった父に、私は弟を傷つけない代わりに私自身を父に差し出し、満足するまでストレスの捌け口として日々痛めつけられていました。理久斗さんもまた自分の犠牲で大切な家族が守れるならっと思い、今までこらえてきたんでしょ??」


杏月の言葉に理久斗は絶句するしかなった。


理久斗自体、杏月の事は可憐で美しいとは思っていたものの、どうせ金持ちに贔屓されて権力や財で力を振るっていると思いきや、実際はそうではなかった事に。


いつも間にか真剣な表情で杏月が理久斗を真っ直ぐ見て言う。


その顔を見た途端、胸倉を掴んでいた手はいつの間にか緩み、放していた。





 「わかって頂けました??実はこう見えて少し前まで体中痣だらけだったんですよ」


杏月は小さく笑っていると、



 「すまなかった。これも全て俺のエゴ……。悪人を裁くのは抵抗は無かった……だが、一般人を葬る時は少なからずその者の家族を想った。こんな俺がそんな事を言う権利もないけどね」


 「かもしれませんが……。だけど、まだ間に合うと思うんです」


 「ん??なんでそう思うんだい??」


 「あの方は、困った人を助けて下さるお人。その理久斗さんに命令している人をどうにかすれば死ななくても済むかもしれません……」


 「はははっ、気持ちはありがたいがそれは止めておくよ。それに君は優し過ぎる……。ちょっと飲み物を買って来るよ」


理久斗は杏月の頭を優しく撫でると、理久斗は外鍵をして買い物に行くのだった。




静まり返った車内は、とても静かで、車の行き来する音、人の暫しの会話だけが入って来るだけだった。


武器箱に少し寄りかかり、これからどうなってしまうのかと不安が募る中、杏月は疲れ果てた身体を休ませ意識をそっと手放した。




それから10分程経ってから理久斗が帰って来ると、杏月の可愛らしい寝息を立てていた。


理久斗は運転席す座ると、ミラー越しで杏月の姿を眺めながら考えていた。



俺はあの政治家のやり方が嫌いだ。もしこの任務を遂行すれば、エージェントを送ってくるはず……。それなら一花咲かせるのもいいのかもしれないな。



理久斗はそう思うと、徐に助手席のシートの裏から他の武器を漁っているのだった。

「杏月が可愛い!!」

「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」

と思った方は是非評価をお願いします。


評価、ブックマーク、して頂けたらモチベーションも上がりとっても喜びます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ