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皇帝の従える妻は元男の子?!  作者: アリス・world
第三章
44/49

準備

休日のデートから数日が経ち、杏月はいつもより早く目を覚ましていた。


みずきは杏月に抱きついて離さんとする寝姿に、杏月は優しく微笑み、みずきを起こさないように頭を優しく撫でる。


弟達を起こさないように部屋を後にすると、杏月はメイドと廊下で鉢合わせる。





 「おはようございます。杏月様」


 「はい!おはようございます」


 「随分とお早いようで」


 「つい、目が覚めてしまったのでその辺でもと思いまして」


えへへと杏月は恥ずかしそうに笑っていると、メイドは杏月の手を取り案内する。





 「でしたら、我々の部屋にいらして下さいませ。皆、杏月様を心よりお待ちしておりますよ!!」


メイドは嬉しそうに杏月の手を引くと、杏月もそれに連れられ部屋に向かう。


少しすると、杏月とメイド達の女性専用の特別部屋に着くと、



 「さぁさぁ、杏月様」



メイドは扉を開けると、身支度を済ませたメイド達が一息入れていた。


杏月が入ったのが分かるや、皆杏月に駆け寄ると、1人ずつハグをすると満足した様子で朝の挨拶を交わした。





 「杏月様、おはよ〜〜」


 「おはようございます」


 「杏月様、おはようございます」


 「おはようございます、杏月様〜」


と皆ハグをするごとに、挨拶を交わし杏月もまた「おはようございます」と笑顔で応える。


メイドは杏月を椅子に座らせ、暖かい紅茶とクッキーを盛ると杏月に差し出す。





 「紅茶でございます。身体が温まりますから、是非召し上がって下さいね」


 「何から何までありがとうございます。いただきます」


杏月は机に置かれた紅茶を飲みふへぇっとしていると、隣に座っていたメイドが杏月を見つめていた。





 「ふふっ。杏月様ったら、可愛い 」


メイドはそう言うと、椅子を近づけ杏月に寄り添ってベッタリしていた。


杏月もゾクッとドキッとするも、太刀打ち出来きないと知っている為、メイドの好きにしてもらい紅茶に添えられたクッキーに手を伸ばし口に放り込むのであった。












ーーーーーーーーーーーー






それから時は進み、メイドにもみくちゃにされた杏月は頬を紅色に染めてベッドでぐったりしていた。


隣にベッタリくっ付いていたメイドに杏月は何となく尋ねていた。





 「あの……メイドの方々は、恋人とかいないのですか??」


 「すんすん……。ふぇ??んー、恋人ですかぁー、いる人はいると思いますけど殆どの人はいないと思いますよ」


 「そうなんですね」


 「はい。それに、今は杏月様もいらっしゃいますし特には気にしないかもしれませんねー。少なくともここの部屋にいる皆は特に……」


 「でもでも、照之様が好きって人はいないんですか??」


 「んー、どうでしょ……。そう思う人もいるとは思いますが、少し前までの照之様は少し近寄り難い方でしたし。確かに、色々助けて頂いた方もメイドの中にはいるので少なからずは好意を抱くんじゃないんでしょかね〜。それに今の照之様は、杏月様と出会ってから少し接し易くはなりましたね」


くっつき虫になっていたメイドは再び杏月の身体に顔を付けると、杏月の匂いを嗅いで満喫していた。


そんなメイドも時間が経つと、心做しか艶々した肌艶になり杏月にハグとキスをせがみ、してもらった順から持ち場に向かって行った。


専属メイドも最後にしてもらった後、杏月を食堂に連れていく。


食堂に着くと、ともき達が眠たそうに食事を黙々と摂っていた。





 「皆、おはよぉ」


杏月は弟達に微笑み挨拶すると、ともき、ゆうじ、みずきと挨拶を交わした。





 「杏月ねぇ、おはよう」


 「おはよう、姉さん」


 「おねぇたん、おはよぉ!!」


みずきは食べていた手を止め椅子から降りると杏月にめがけてタックルをかます。


勢い良く抱き着くと、杏月も「あらあら」と母性溢れる姿を見せ、みずきの頭を撫でてから口を開いた。





 「こらこら。ご飯中ははしゃいじゃダメでしょ??」


 「ごめんなしゃい……。でもおきたらおねぇたんがいなかったんだもん!!」


みずきは杏月の胸でうるうると瞳を濡らして言うと、杏月もしゃがんでみずきを抱き締めて言う。





 「ごめんねみずき。お姉ちゃん早く起きちゃったから少し散歩してたの。よしよし、さぁ、ご飯をいただきましょ??」


杏月は優しい微笑んでみずきを諭すと、みずきも頷き席に戻る。


杏月も席に着くや「いただきます」と手を合わせ、朝食に手を付けた。


杏月はスープやパンを摘み、美味しさに感化されていると照之が朧気な眼で欠伸を零し現れた。





 「皆、おはよう」


 「おはようございます。照之様」


 「おはよーございます」


 「おはようございます」


 「おにいたんおはよぉ!!」


挨拶を交わすと照之も席に着き食事を摂る。


食事も終え、着替えが済むと2人は学園に向かう。


冬になってから杏月は黒のタイツを身に付けるようになり、そのスラッとした美脚につい車の中に一緒にいた照之も見てしまう程であった。


照之は隙を見せる杏月に、つい美脚をひとなですると杏月はビクッとするや、身体を強ばらせた。





 「きゃっ!?い、今触りましたよね??」


杏月はジト目で照之を見ていると、



 「すまんすまん……。つい美脚過ぎて触りたくなってな……はははっ、ビックリさせてすまなかった」


 「もう……きゅ、急にはビックリします……。意外に敏感なんですよ??それに擽ったいので一声掛けてから触れて下さいませ」


 「あ、ああ……。触るのはいいのだな」


くくくっと笑っている照之に、杏月は傍に近付くと、



 「もう……照之様ったら、笑わないで下さい!!分かりましたか??」



照之は笑っているのも束の間、杏月が顔を寄せ頬を膨らせて怒っている姿に照之は胸きゅんしてしまう。


良い香りが漂う中、照之は杏月の頬に手を添えると戸惑う杏月に微笑み一言。





 「大好きだ」


照之はそう言うと、触れ合う優しいキスを施す。


不意打ちを食らう杏月は見事に赤面してしまい、更に照之は濃密なキスで杏月の舌を蹂躙する。


ふにゃっとなった杏月に抱き寄せ束の間の幸せな時を噛み締める。


普段から多忙な照之にとって、杏月と2人でいられる時間は限られていた。


そんな些細な時間も大事にし、気持ちを伝える照之に杏月も受け入れ幸せなひとときを大切にした。


照之の肩に寄りかかっていると、杏月は口を開く。





 「ねぇ。照之様」


 「ん??どうした」


照之は杏月の呼びかけに身体を少し向け、視線を落とすと、うっとり顔の杏月が照之を見つめてこう言った。





 「私も……。大好きです」


杏月は恥ずかしそうに照れていると、照之はいつもの如くあっという間に杏月の虜にされてしまう。


暫く沈黙のままだったが、2人とも胸を熱くさせ、学園に着く間の一時を満喫した。












ーーーーーーーーーーーー






学園に着いた2人は玄関に続く大通りを進んでいた。


照之と杏月が通ると皆がすれ違いざまに挨拶を交わす事もしばしば起こる。


多くの視線を一点に集める2人は、仲睦まじい様子で会話をしていた。





 「そうだ杏月!!」


 「はい、どうしましたか??」


 「年越しは実家に顔を出そうと思うのだが、杏月達も来るだろう??」


 「もちろんです。照之様がいいと言うのであればぜひ!!」


 「うむ。我の母君が杏月に会いたいと仰ってたのでな」


 「そうなんですか!?」


 「そうなのだ。かなり溺愛しておってな、できたら母君と話をしてやってはくれまいか??」


 「はい、もちろんです!!」


杏月は了承すると照之は満足気な表情を浮かべた。


それから教室に着くやクラスの人と挨拶を交わし席に着く。





 「沙霧様、愛里菜様。おはようございます」


杏月は席に着くと前の沙霧と愛里菜に挨拶する。





 「杏月ちゃんおはよー」


 「杏月さん、おはよう」


2人も振り返って挨拶を交わすと照之にも2人は「おはよー」っと挨拶すると、沙霧と愛里菜はホームルームが始まるまで杏月とお喋りするのであった。





 「そうだ、沙霧さん。さっきの続きなんだけど、皆で鍋パーなんてどうだ??私の家族はさ、忙しい時が多いからって家族との時間が取れるようにって皆で鍋物をする事が多いんだ。それに、冬と言ったら鍋だし……どうだろうか??」


 「鍋パー、いいよね。私は鍋料理好きだからいいよ、杏月ちゃんはどう?鍋料理好き??」


 「もちろん好きですよ!!鍋料理美味しいですよね」


 「なら決まり!!アリシアさんにも後で聞くから、年を越す前に1回はしたいね」


愛里菜は嬉しいにそう言うと、杏月も沙霧もその姿を暖かく見守りたわいのない話をするのであった。















ーーーーーーーーーーーー





時は少し遡り、早朝のリビングで声を荒らげる人物がいた。





 「理久斗(りくと)!!それは本当なのか!?」


 「…………はい、それは本当です。父さん……我々も潮時なのかもしれません」


声を荒げた男は荒木(あらき) 理久斗(りくと)の父親である。


昨晩の出来事を荒木は父親に報告していた。





 「ば、馬鹿な……。あの神乃グループ相手にあの政治家は手を出そうとゆうのか……」


理久斗の父親は絶望感に打ちのめされていた。


そんな中でも理久斗は言う。





 「今までもそうです。我々はあの政治家無しじゃここまで事業を拡大にはできませんでした。この業界は政界がかなり濃密に絡んでいます」


 「……ああ、それは分かってる。今までの私達の所業は目に余る行為とはいえ、私達は成り上がって来たんだ!!そ、それでも……」


 「なら!!……今度は真っ当な商売をすれば良いんですよ!!まだ資産が有る内に資金を物に変えるんです!その間に私は覚悟を決め、荒木家の繁栄の為この身を犠牲にしてでもあの人の思い通りにはさせません!!!!」


理久斗は父親の瞳を真っ直ぐに真剣な面持ちで言葉を発した。


覚悟をした理久斗の姿に父親は俯いた、高校生とまだ幼い息子を自分の私利私欲の為に悪事を働かせてしまったのだと今更気付き、そして少しでも後悔してしまった事に。





 「わかった……。先ずは資産を隠す為に私は行動する」


 「はい。私は資産の移動が終了した後……あの方の依頼を達成させてみせましょう」


 「……ああ」


 「父さん、また終わり次第言って下さい。それまで私は見つからない様に下準備に入ります」


父親は頷くと神妙な面持ちで早朝のリビングを後にした。



それからその日の晩。


理久斗は自室で装備を揃え準備していた。


液体の眠り薬、皮膚を守る上下の鎖帷子、特殊な偵察ドローン、サバイバルナイフ、ハンドガンとマガジンを念入りに準備する。


理久斗は中学生の頃から誘拐、殺人にたけていた。


それも全てあの男によって理久斗の人生は大きく狂わされ、誘拐、殺人の術を多く叩き込まれた。


それでも理久斗は血で争うのは好まない為、最小限で物事を達成させる様に努力した。





 「最悪を常に想定し、最善を尽くす……。私も最後の生を家族と共に……!!」


理久斗は手入れを終えるとクローゼットの中に隠し倉庫に仕舞い込む。


物を片付けて何も無かった状態にしリビングに向かうと、母親が楽しそうに料理をしていた。


いつもの風景を見れなくなる事が、こんなにも寂しいのかと思うだけで理久斗の心は締め付けられる。


そんな想いも殺し、理久斗は母親に近付くと、



 「……母さん。今日の晩御飯はなに??」


 「あら、理久斗。今日はね煮込みハンバーグよ」


 「そっか!!美味しそうな匂いだから、早くご飯が食べたいな!!」


理久斗は笑顔でそう言うと、母親もドヤ顔で言う。





 「ふふっ、お母さんが作る煮込みハンバーグはお店にも負けないんだから!!それなのに、あの人たら今日は遅くなるなんて言うのよ??酷いと思わない??」


 「ハハッ、きっと忙しんだよ!こんな美味しそうなのに勿体無いね~」


 「ねっ~、もう少しで出来るから冬弥(とうや)を呼んで来てくれるかしら??」


 「うん。わかったよ!」


理久斗は頷くと、弟である冬弥の部屋に向かう。


階段を上り、階段近くの部屋に着くとノックして部屋に入る。





 「冬弥~入るよ。晩御飯が出来たみたいだよ」


冬弥はベットの上で新型の携帯ゲームをしながら「ん~~」と言う姿に、理久斗は苦笑いを零し、ゲームを取り上げる。





 「はい、終わり~」


 「ちよっと!!兄ちゃん、今いい所なのに~~~」


 「ごめんって、ハハッ。冬弥……話がある」


 「な、なんだよ~??どうしたの、そんな真剣な顔して??」


 「なぁ、お兄ちゃんと約束してくれないか??」


 「ん??約束ってまた都会に買い物でも行くんのー??」


 「うんん、そうじゃないんだ。1つ約束して欲しいなって思ってさ」


 「だから何を??」


 「もしもの事があったら必ずお母さんを守るって、もしも困ってる事があったら助けてやって欲しんだ」


 「なんだ、そんなことか!!当たり前だよ、あんな優しいお母さんが困ってたら助けるのが僕らの役目だよ!!」


冬弥の返答に安心した理久斗。





 「さぁ、今日はめっちゃ美味しい煮込みハンバーグだってさ!!早く行かないと冬弥の分も食べちゃおっかなぁ~~~」


理久斗は冬弥を脅かす様に言うと、冬弥は慌てたように部屋を出て一目散にリビングに向かった。


そんな中、理久斗は冬弥の部屋をサッと一回り眺め、懐から1つの通帳を取り出す。


冬弥宛の口座と暗証番号が紙が添えられていた。



1億あるし、このぐらいなら母さんと何とか食いつなげるだろう……。ごめんな冬弥。お兄ちゃんがしてやれるのはこのくらいだ、後は母さんを頼む……。



理久斗は冬弥しか知らないアニメグッツの隠し場所に分かりやすい場所に置くのだった。


それから理久斗はリビングに戻ると、冬弥がソファーでテレビを見ながら寛いでいた。


そんな姿を目をやり、母親の方を見るとタイミング良く目と目が合ってしまいつい微笑んでしまう理久斗は暫し家族団欒を満喫するのだった。













ーーーーーーーーーーーー




数日が過ぎた頃、理久斗は学園に赴いていた。


一般の生徒に紛れ、目立たない様に身を潜み、ベンチで座って友人と会話していた。





 「それでさ、休みの日にハワイ行ってきたんだよね~」


 「そうなんだ!短い期間で良く行けたね、私ならもう少し休みが多い方がいいかな」


 「はははっ、理久斗ならそう言うと思ったよ。はいこれ、ハワイのお土産」


 「いつも悪いね」


 「いいって。おれっちのママが良く海外連れて行くからそのついでだよ」


 「はははっ、君のお母さんは海外がお好きだね!」


ベンチで少し休んで話をしていると、ターゲットの2人が大通りを歩いて来るのが分かるや、理久斗の友人も2人に気付くと口を開いた。





 「あっ!!あの2人が来た!!」


その瞬間空気が一変し、理久斗の友人は目を輝かせて言う。





 「あぁ……杏月さん、相変わらず美しい」


 「そ、そうだな…………」


友人の問いについ対象者としてもその美しさに自然と視線を向けてしまい、不覚にもドキッとしてしまう出来事に理久斗は毎回慣れないと思いながらターゲットを観察する。


対象者の小柄の少女に目を移すと、照之と会話をして時には微笑んでる姿に理久斗は確信する。


照之が溺愛している姿は一目瞭然。


そんなヤバい人の女とも言える人物をどうに攫うかを自身の脳をフル回転させ考える。


理久斗はどのルートで、いつ何処でどの瞬間で誘拐するのかをタイミングとその場の状況を見極めようとしている。


変に出れば、杏月の警備体制が跳ね上がると思う理久斗は、今暫く父親の連絡が来るまで身を潜め、計画の日に向けて着々と準備を整え、杏月の行動を毎日ノートに記す理久斗であった。

「杏月が可愛い!!」

「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」


と思った方は是非評価をお願いします。


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