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皇帝の従える妻は元男の子?!  作者: アリス・world
第三章
43/49

ひとときの合間に忍び寄る影

遅れて申し訳ないです。リアルにお家騒動が少しありまして、心身共に疲れ切ってしまいまして、モチベーションが保てず申し訳ございません。

少しずつ書いていけたらと思います。

11月のとある休日。


肌寒い日が続き、本格的に冬を感じさせる季節になった頃、照之は布団に包まれ寝ているもメイドの呼びかけに照之の意識は覚醒させられた。






 「お坊ちゃま、朝でございます。朝食のご準備が出来ましたので起床してくださいませ」


メイドは照之にそう言うと、包まっていた布団を容赦なく引き剥がし照之を起こす。


照之は布団を剥がされるや、少し身震いをするもメイドに項垂れながら抗議した。






 「俺は眠たいんだ……。それに寒いし、当主に対して布団を無断で引き剥がすでないぞ?」


 「申し訳ございません。ですが、杏月様ももうお席に着いて朝食を召し上がられております。それにお坊ちゃま……。もう8時過ぎでございますよ??本日は杏月様とお2人でお出掛けと伺っておりましたが大丈夫なのでしょうか??」


メイドは不安そうに伺うと、照之はバッ!!っと起きるなり慌てて自室を出て食堂に向かった。


メイドは少し驚くも照之の慌てる様子につい笑いが込み上げながらもグッと抑え、メイドは照之が去ったベッドをベットメイキングし始めるのであった。


直ぐに照之は食堂に着くと、杏月がもぐもぐと可愛らしい姿で朝食を美味しそうにほうばっていた。






 「皆、おはよう!すまんな、少し寝過ぎたようだ」


照之が苦笑いを零すと、ともき達に朝の挨拶を交わす。


杏月も口に入っていた食べ物を空っぽにすると言葉を発した。






 「おはようございます!大丈夫ですよ、照之様はここ最近、多忙な毎日だと爺やさんにも聞いていたので……。それにお身体に障りますし、お出掛けはまたの日でも構いませんよ??」


杏月は柔らかい笑みを浮かべ、照之の身体の心配を真っ先にする。



杏月は変わらぬな。その優しさについ甘えてしまう……。だが、今日は出掛けようと約束の日!!いい日にせねばな。



照之はそう思いながら、口を開く。






 「ああ、心配など無用だ!!大舟に乗ったつもりで楽しむがよい」


照之はうむうむと頷いていると、杏月は少し嬉しそうに頷いて再び食事に意識を向け、美味しそうに頬張る杏月の姿を再度目に焼き付け、照之も朝食を取り始めるのだった。












ーーーーーーーーーーーーー












それから食事を済まし、身支度を済ませると照之と杏月は駅のデパ地下にいた。


派手に着飾らない落ち着いた服装の照之。


杏月も同様に落ち着いたラフな格好の服装は、普段とはまた違った雰囲気を醸し出す。






 「久しぶりにデパ地下??に来ました。何年ぶりでしょうか……それにしても人も多いですし、たくさん賑わっているんですね!!」


杏月はデパ地下を巡っているとそんな事を呟き、照之の握っていた手を握り締めながら微笑み、楽しそうに口にする。


その微笑ましい姿に照之も自然と笑みを零す。


少し店内を回っていると、2人は評判のいいアイスクリームの専門店に立ち寄り、アイスを買うと近くのベンチに座り食べ始めていると照之は先程の事について話し始めた。







 「杏月は、こうゆう所には余り来てなかったのか?」


 「はい、来てないですね。私が来た時は母が健在の時でしたし、まだ皆小さかったので」


杏月は少し寂しそうな表情を表すも直ぐに普段通りの振る舞いをする杏月の姿に照之は、



 「……。変な事を聞いてすまなかったな」


そう言ってアイスを頬張る杏月の頭を優しく撫でる。


愛らしい姿でアイスを食す杏月の姿を横目に、照之は思った。


小柄ながらも毎日大変で辛い事があっても、絶対に笑顔を絶やさない杏月の健気さに、もっと幸せになって貰いたいと思う気持ちが更に高まり、照之はつい傍に手繰り寄せたくなっていた。


そんな感情をグッと押さえ込み、照之は黙々とアイスを食し、ベンチで休憩した。






 「美味しかったな、杏月よ」


 「はい!人気なだけはありましたね。アイスの舌触り、アイスも濃厚で美味しかったです」


照之の言葉に杏月は頷き、満々の笑みで答え、デパ地下の散策を再開した。


食べ物エリアを抜け、他の階にも立ち寄る。


衣類に家具や家電に多種多様に売られていた。


照之と杏月は繋いだ手を離すことなく仲睦まじくデパ地下を堪能していた。


杏月の笑顔や容姿に、すれ違う他の客もつい視線を集め、何故か優越感に口角が吊り上がる事も度々ある照之。


宝石ショップや工芸品、デザートからお弁当まで多くの品に杏月は、只々驚くばかり。


デパ地下を堪能し終わると、照之と杏月は駅ビルのお金持ち専用のカフェに入っていた。






 「ここは複合施設でな、受付に行けば直ぐに案内されるから、杏月は近くのソファーで待っていてくれ」


 「はい。分かりました」


駅ビルの中に入ると大きなエントランスホールが2人を迎える。


照之は杏月を近くの待機ソファーに座るように促すと杏月は頷くとソファーに腰掛け、照之は受付に向かう。






 「いらっしゃいませ」


照之が受付に近付くと、白で着飾った受付嬢が席を立ち、笑顔で解釈する。






 「カフェを利用したいんだが、VIPルームでいい部屋は空いているだろうか??」


 「はい、ございます」


 「でわ、それでお願いする」


 「かしこまりました。直ちに案内人を用意致しますので、少々お待ちくださいませ」


受付嬢は会話が終わり黒色のカードを照之に渡すと直ぐに内線に繋いでいた。


照之も受け取ったカードをポケットに忍ばせると、杏月が座っているソファーの隣に座る。






 「少し待ってくれとのことだ」


 「は、はい。で、でも本当にカフェってあるんですか??人も多くはなさそうですし……レストランの間違いじゃ……??」


 「はははっ!!大丈夫だ、ちゃんとカフェはあるし、ちょーっと上層部の個室で休憩するだけだ。ここの駅ビルにはな、多くの資産家はもちろん議員もよく使っている場所なんだ」


照之の普通だっ!!と言わんばかりにスラスラと言う姿に、杏月は唖然とし規模の違いを定期的に思い知らされるのであった。






 「いやいや、照之様は平然と仰いますけど……普通はこんな大きい所に普通は無いです。普通はどっかにポツンとあったり、ショッピングモールにあるのが一般的ですよ」


杏月は呆れながらも普通はこうだと言うと、照之はははっと笑うと、




 「確かにそうだな。普通の人はこんな所は行かないな」


 「はい。自重してください」


杏月は苦笑いしながら会話を弾ませていると、執事服とも取れる人物が2人の座っているソファーに近寄る。






 「お待たせ致しました。お部屋にご案内申し上げます」


執事は爽やかな笑みを浮かべ案内すると、照之と杏月は素直に応じ付いて行く。


大きなエントランスホールを抜け、エレベーターに乗る。


カフェとは程遠い場所に向かっているのだと、杏月は上昇するエレベーターの外側の風景を眺めながら思うのだった。


少しすると、エレベーターのチャイムが鳴る。


傍に控えていた執事服の男性は扉を抑えると、2人を先に降ろし、案内人も降りカフェの入り口に向う。


中というと一般的なカフェに比べ、高級感溢れる店内の脇道に更に一際目を引くレッドカーペットの通路の方に2人は進む。


案内された部屋は角部屋の一角。


VIPルームに入るとそこは普通のホテルより遥かに立派な室内があった。


中に入ると、執事はメニュー表と電子パッドを渡すと言う。






 「こちらがVIPルームのお部屋でございます。こちらがメニュー表で、ご注文の際はこちらの電子パッドでご注文くださいませ。最高級のおもてなしをさせて頂きますのでごゆっくりおくつろぎくださいませ」


執事は一礼すると部屋を後にする。


照之はダブルベッドに腰掛け、杏月は椅子に座って寛ぐ。






 「あ、あの……ここ物凄くお高いんじゃ……??」


 「うむ、心配するほどではないぞ!!ほんの何十万だ、安いものだ」


照之は優雅に微笑んでいると、杏月は聞いた額にハラハラしたのであった。






 「よし、杏月は珈琲(コーヒー)がよいか?それとも甘いカフェラテにでもするか??」


 「はい。甘い方でお願いします」


 「ああ、わかった」


照之は杏月に尋ねると、杏月は小さく頷く。


直ぐに電子パッドに入力し杏月の為に三ッ星レストランのシェフが作るケーキを2つ注文していると、ドアがノックされ執事が手拭きと有名お菓子が何個か置かれたお皿を杏月が座っている椅子のテーブルに置く。






 「失礼いたします。こちら、最高級の豆で引かせて頂いた珈琲と自社系列の高級洋菓子でございます。失礼ですが、お客様はこの後、ごゆっくりされる御予定はありますでしょうか??」


 「あー、そうだな。夜までゆっくりするつもりだ」


 「はい、畏まりました。お客様、是非我が社の三ッ星シェフのディナーをご用意させて頂きたく思うのですが……いかがでしょうか??」


 「うむ、構わない。最高の一時を期待するよ」


照之は嬉しそうに話を進めていると、執事は不安そうな表情が晴れていき、嬉しそうに頷き下がって行く。


執事が部屋を去った後、杏月は照之に問う。






 「あの……ここはカフェですよね??」


 「うむ、そうだが……??」


 「そ、そうですか……。私の為にそんな無理しなくても……」


杏月はそこまでされて良いのだろうかと考えていると、照之は直ぐに言い返す。






 「心配するな、俺が杏月にしてあげたいだけなのだ。杏月には色々貰ってばかりなのだから……」


 「そんな、滅相もございません。私の方こそ色々して頂いて感謝しかございません。ありがとうございます、照之様」


照之はむずがゆくなり、そっぽを向くと杏月は椅子から降り、照之の隣に座る。


謙虚過ぎる杏月に照之は傍に来た杏月を抱き締め、小さな温もりを感じていた。


杏月から漂う甘美な香りが鼻腔を刺激し、理性を掻き立てる女性特有の匂い。


愛らしく素敵な杏月に照之は抱き締めながら呟く。






 「なぁ、杏月よ」


 「はい。なんでしょうか、照之様……」


照之の呼びかけに杏月は優しい音色で答える。






 「俺は、杏月が好きだ。好きで好きでたまらない……」


 「っ……!?きゅ、急にどうしたんですか」


 「ああ、ありのままの気持ちだ。杏月が愛おしくて可笑しくなりそうくらいなのだ」


 「えへへ。嬉しいです」


杏月はそう言うと抱き締める力が少し強張ると照之に甘える。


それに応えるように照之も抱き締め今の時を大事にする。


多忙な日々を過ごす照之はここぞとばかりに杏月を抱き締め、頬っぺにキスを施す。


照之の行動に杏月は頬を赤く染めながらも口を開く。






 「も、もう……照之様ったら……。いつもより甘えん坊さんですね」


 「ああ。たまには独り占めもよいだろう??」


杏月はクスクスと微笑み、優しく照之の頭を撫でる。


照之もまた杏月の頬を優しく撫でる。


撫でる瞬間身体がビクリと反応してしまう杏月の姿には、男性なら理性を保つ事など皆無に等しい程の妖艶ぷり。


暫し見つめ合い軽いキスをしていると、コンコンとノック音がヒートアップする2人の感情を抑制させた。


直ぐに二人は離れると、一息入れてから声を掛ける。


照之が声を掛けた後、執事は飲み物とケーキを届けに部屋に入るが異様な違和感に襲われたのを理解するのに、そう時間はかからなかった。


それは、杏月の少しうっとりとした流し目。


恥じらいも感じ取れるその妖艶な流し目は、執事もあっという間に釘付けにするのは造作もないものだった。


その場は静寂に包まれるも執事は直ぐに我に返るとテーブルに近付き、



 「こ、こちらお飲み物の珈琲とカフェラテでございます。続きましてこちらは、ショートケーキ2つでございます。そしてこちらはサービスの特製デザートとなっております。ミルク等はこちらの方からお取りくださいませ」


品を置き終わると次に頼んでないオシャレなデザートが2人を驚かせたが、1番驚いているのはその場にいた執事かもしれない。


執事は品をテーブルに置き、その場を去り際に杏月をチラリと視線を零すとなんとも言えない恥じらいを感じると共に杏月の頬を紅色に染める姿に、自然と執事の胸を熱くさせる。


執事は仕事柄、美しい女性を目にする機会が多くある。


だがそのどれも、杏月の様にその場に留まりたいと思う人は極稀であった。


性格や雰囲気はもちろんのことだが、それぞれの好みがある。


誰もが見惚れてしまうのだろうとなんとなく察した執事は一礼して静かに部屋を去っていった。


その後、執事は少しばかり休憩室で放心状態だったとの事。


VIPルームから執事が去って行ったの見届けると、杏月は緊張の糸が切れ、照之の体にもたれかかってしまった。






 「す、すいません……。緊張が解けたと思ったら腰が抜けてしまいました」


杏月の潤んだ瞳を揺らし照之に申し訳なさそうに言うと、照之はすぐ様首を振り否定すると、杏月を支えるよに抱き抱える。


照之に背を任せる杏月に、照之は杏月の背後から抱っこする形の姿勢になっていた。


杏月は身体の火照りと脱力でぐったりと身を任せる。


照之は杏月の美しい黒髪を撫で、シャンプーのいい匂いがふわりと漂わせ、ほんとにこの少女が元男だったのかと思い出すのも難しい程の完成形。


《愛おしい》そんな感情に支配される照之に、杏月は抱き締められた照之の手を握り呟く。






 「ねっ、照之様……」


 「ん??なんだ杏月……」


 「なんであの時私を助けてくださったんですか??」


 「はははっ、唐突だな。気になるか??」


 「もちろんです。私、気になります」


杏月は照之に背をあずけると、頭をぐりぐりと可愛い仕草をして照之に迫った。


美少女にそんな可愛い仕草をされたら誰もが堕ちるだろうと思う中、照之はニヤニヤが止まらず杏月の頭を撫でながら口を開いた。






 「それはだな、最初は物凄い好奇心からだった。だけど杏月と話し、触れ合ってからそれはいつの間に尊い物に変わっていったな」


 「…………。そうだったんですね」


 「まあそう落ち込むな。それに……杏月と出会えて本当に良かったと胸を張って言えるんのだ」


 「ふふっ……。それなら良かったです。照之様に出会えて本当に幸せでございます」


杏月は抱き締められていた照之の腕に愛おしそうに手を乗せた。


その行動に、照之の心臓は鼓動を加速させ、身体の芯をカッと熱くさせる。






 「ああ。俺も杏月と出会えて幸せだ。こうして一緒に過ごすのも良いものだな」


 「そうですよ!照之様は、いつも頑張っているんですから、たまにはゆっくりしてもいいんですよ」


杏月は振り向き、えへへっと微笑みながらそう言うと、照之はその可愛さに絶句する。


尊さ、愛おしさ、全ての愛の感情が雪崩のように流れてくるの感じる照之。


嬉しそうにしている杏月に照之は我慢出来ず、面と向かい合う。






 「杏月!!」


 「は、はい……??」


照之の呼ぶ声に杏月は首を傾げている中、照之は微笑みながら杏月の瞳を見て言う。






 「感謝を言うのはこっちの方だ。いつも俺を想ってくれてありがとう」


 「いえ、こちらこそです」


杏月は顔を近づけ、



 「離さないでくださいね」


杏月は照れながら満面の笑みを咲かせると、照之は杏月を抱き締め、



「ばかもの。こんな尊いおなごを離すわけなかろう!!」


照之は杏月の頬を優しく手を添える。


うっとりと嬉し涙を浮かべる杏月は、照之の添えられた手を包むと、



 「えへへ……。嬉しいです。ずーっと傍に……い……た…」


言葉を言い終える前に、照之は杏月の小さな唇に口を合わした。


杏月は「んっ……」と一瞬身体をビクリと反応させるも、照之の行動を否定はしなかった。


全てを受け入れ、熱量を増す2人のキスは、意識が蕩けてしまいそうな甘美な幸福に包まれた。


照之のガツガツ行ってしまったのもあり、杏月は腰が砕けもたれかかった。


フェロモンを出し、全ての男を魅力してしまうのではないかと思う程の色気。


うっとり顔でぼーっとしている姿に、照之は思わず杏月を抱き締め、囁く。






 「杏月……。愛してる」


ぐったりとした杏月に追い討ちを掛ける様に、照之は杏月の耳元で囁き、耳にキスをした瞬間、杏月の体温が更に物凄い速度で上がっていくのが分かった。






 「もぅ……ずるいです。私も、愛しております照之様」


杏月はそう口にするも、照れてしまい照之の胸元に頭を寄せ、抱き締める手を強くしたのだった。


恥ずかしがる杏月の頭を優しく撫でながら照之は思う。



杏月の為にと思うだけで、力が湧き上がる。ずっと笑顔でいてもらいたいと思うだけで俺は……こんなにも頑張れたのだな。



以前の自分とは比べ物にならない程の変化に、杏月の存在の大きさに改めて感じた照之であった。











ーーーーーーーーーーーーーーーーー







それから1時間程して、まだ頬を赤くしていた杏月は、美味しそうにケーキを頬張る姿を横目に、照之もケーキを食す。


ケーキを食べ、ベッドで休息をとっていると、可愛らしい寝息が聞こえ始めた。


照之は愛おしそうに杏月の頬を撫で、頭を撫でると照之はスマホで仕事内容を見ていると、とあるメッセージが目に入る。


それは、父からのメッセージであった。



『王族のトップが照之と会いたいそうだ。それと同時に、あの方の娘の婿になれと上層部総出で神乃家に圧力を掛けてきた。それでだ、照之はどうしたい??私は以前、酷い事をしてしまった。許して欲しいとまでは言わない……だが、今回は照之の意見をちゃんと聞きたいと思っている。それと、母さんが杏月ちゃんに会いたいと騒いでいるんだ……年越しはこっちに来て皆で過ごさないか??じゃないと母さんが暴れて手に負えなくなりそうでな。よろしく頼むよ』



そんなメッセージに照之は「ふっ」と笑を零し、母が相当愚痴を言っているのだろうと直ぐに感じとった。



杏月と仲良くしたいと以前からずーっと言っていたもんなぁ。これもまた杏月のおかげか……。年越しは実家に帰ってみるかな。



照之はそう思うと、直ぐに爺やにメッセージを飛ばすと杏月の隣に潜り込み、抱き寄せ一寝入りする事にした。




しばらくの間、眠りに落ちた2人であったが、夕方になる頃には目覚め、相も変わらずイチャイチャとしていた。


杏月を後ろから抱き締めながらふと、照之は口を開いた。






 「杏月。もしもだぞ?もしも俺が政略結婚する事になったらどうする??」


照之のその問いに、杏月は少し沈黙して少し考えた後にゆっくりと呟いた。






 「それは照之様次第だと私は思います。もちろん私は今のままでも充分幸せでございます」


 「……。杏月らしいな。だが、それは杏月自身の本心なのか??」


杏月の余りにサッパリした回答に、照之は少しムッとするも杏月の本音を聞くと、



 「ふふっ、そんな事ないですよ。今だから言いますけど本当は寂しいです……。ですが、半分は本当です。照之様が幸せが1番です!!それに弟達に同級生の皆さん、皆に幸せでいて欲しいって心から思ってますし」


杏月は、以前は強がって余り自分の意見は言わなかったが、本音を零し、少し寂しい表情を浮かばせると次に優しく微笑んだ。


その微笑みは、私は二の次でいいと言わんばかりの態度に、照之は杏月の頬っぺを軽く抓る。






 「馬鹿者……。杏月がいてくれたら俺は更に頑張ってこれた、それに使用人も爺も皆いつも杏月の事を慕っている。杏月の笑顔が俺にパワーを与えてくれる、前を向く力を与えてくれる。それだけ杏月の存在は大きいのだぞ……??」


杏月は照之の気持ちを聞き、一瞬で赤面してしまった。


俯いたその顔は、なんとも言えない気持ちと大切な人から言われる言葉にどう返せばいいのか困惑でいっぱいであった。



はぅ……。身体が熱い。恥ずかしくて照之様の顔が直視できない。



杏月はムズムズして俯いていると、照之は追い討ちをかけるように杏月を抱き締め首筋や耳や頬っぺに軽くキスをした。






 「愛してるぞ」


照之のその事に、杏月の身体を熱くさせる。


たくさん愛してると言わんばかりの愛情表現に杏月は沈黙に襲われる程のドキドキに杏月は抱き締められている腕に触れ、



 「わ、私も……その、あ、愛しています。こんな私を愛して下さって嬉しいです」


杏月の照れ笑いに照之も有意義な時間を過ごせたと満足そうに頷き、ベッドから夕焼けをバックに街並みを眺め肩を抱き寄せるのだった。





それから夕方になり、照之と杏月は三ツ星レストランに訪れていた。


それなりの人物や、資産家の者達が出入りするだけあり、風格ある人々が所々座っていた。


二人は窓側のテーブル席に座ると、夜景を観ながらの食事に杏月は興奮しっぱなしであった。






 「美味しいですね」


 「ああ。美味であるな!それに街の夜景も綺麗だ」


 「駅の周辺は夜景が一際綺麗ですね!!」


杏月は微笑み、イタリア料理のフルコースと美しい夜景を存分に嗜む。






 「あ、あのう……照之様ぁー」


杏月は足をモジモジしながら照之を呼ぶ。






 「ん?どうした杏月」


 「その、お手洗いに行きたいんですけど……」


少し恥ずかしそうに言う杏月に照之はなるほどと納得する。






 「わかった。ナプキンは椅子の所に置いて行くといい、それに俺も行こうと思ってた所だ。一緒に行こうか」


照之は優しく微笑むと、杏月もニッコリと微笑み返し二人して席を後にした。


照之は以前の出来事が再びあると困ると思い、杏月を一人ではなるべく避けける様にした。


手洗い場に向かうと照之と杏月はアイコンタクトだけするとお互いに中に入る。


杏月は、トイレに座る際に、自身の下着が濡れていた事に気づき恥ずかしさから再び顔を赤くしてしまい、直ぐに邪念を吹き飛ばす様に首を振り便座に座った。


一方、照之は用を足し終え、手を洗ってから鏡で身嗜みを整え髪を少し弄っていた。


手洗い場から帰って来た照之は、近くの壁際で、杏月を待っていた。



もう少しで今年も終わる……。何か杏月にしてやれる事はなかろうか。年越しは実家に帰るし、その後は屋敷の皆で旅行でもいいかもしれないな。



照之は、うんうんっと頷いていると、杏月が女子トイレから出てきた。






 「お待たせしました」


 「ああ。食事の続きと行こうか」


照之は杏月に手を差し伸べ、杏月も差し伸べられた手を握り2人は仲良く席に向かうのであった。


杏月が歩くと、その付近に座っていた人も、視線を移した。


それからディナーを食し、夜の駅を散歩した後、2人は屋敷に帰宅するのであった。










――――――――――――






とある高級ホテル。


ノック音がすると、中からSPの姿の大柄の男が迎え入れる。






 「し、失礼致します。そ、それでご用件はなんでしょうか……??」


 「ああ、よく来たな。荒木。お前にこの女は知っているか??調べた所、お前が通ってる学園にいるそうじゃないか」


椅子に座ったスーツの男は、机にとある写真を置いた。


だが、荒木は直ぐにとある少女だと気づくと、冷や汗をかいてしまった。






 「あ、あの……。そのですね、その方は止めておいた方が……その……」


 「おい!!お前の意見など聞いてない。この俺を誰だと思っているんだ??お前の会社を贔屓してここまで大きくしてやったんだ。呼び出したのは、分かるよな??」


 「は、はい。また……やれということですか……??」


 「察しがいいな。その通り、俺はこの女に惚れた。一目惚れだったんだ」


 「あの、ひとつ伺っても?」


 「なんだ?」


 「どこでこの方を知ったのでしょうか??」


 「それはだな、駅前のビルにカフェがあるだろう?そこでだ。隣にぱっとしない男がいたがその男にはその女は相応しくないと思ったんだ」


椅子に座った男は生理的に拒否反応を催す程に欲に溺れた表情を浮かべて更に言う。






 「だから、俺が娶ってやろうというのだ。それに今のあの女は大分使い飽きた。たまには極上のデザートが食べたい」


 「ですが、そんなに誘拐して大丈夫なのでしょうか??今年で素人が8人、芸能、アイドル等が数十人を個人で脅してやってますよね??それはリスクがあり過ぎるような気がしますが……」


 「てめぇ。誰に向かって意見してんだ」


その瞬間、ガラスで出来た灰皿が腹部目掛け、勢い良く投げつける。






 「うっ……」


 「てめぇの会社潰すぞ?ちゃんと持って来た時は、お情けで俺のおもちゃ少し使わせてやるからさ。わかったか??」


 「…………はい」


頷くと、SPに部屋から追い出された荒木。


荒木は思った。



敵に回してはいけない人を敵にする……。あの人は全然分かっていない、政権ですら敵に回してはいけないお方が贔屓する彼女を誘拐でもしようなら……。



最悪の状況に怯えそうになるも、邪念を振り払い、証拠も残らない様に思考を加速させたのだった。




それから数十分が過ぎた高級ホテルの一角。






 「坊ちゃん。あいつその写真を見た時、大分怯えてましたで??この山はやべんじゃないんでしょうか」


大柄のSPが椅子に寛いで、美女に自分のブツを舐めさせるスーツの男がいた。






 「おら!!もっと奥まで呑み込めや」


その言葉に、美女は苦しそうに悶えている姿を見下ろすスーツ姿の男は満足げにして話を続けた。






 「ああ、確かにな。大分手を染めた奴だがあんなに怯えるのは初めてだな」


 「はい。坊ちゃんもあんなに女を抱いているじゃありませんか、少しは静に今のおもちゃで満足した方がいいと思われます。それにもう直ぐお父様の選挙、余り派手な行動は避けるべきかと」


 「ふむ。一理あるな。当分は今のまま発散するか」


 「飢えた獣の様に萎えませんね。私は、飲み物を買って来ますね」


 「頼むわ。さぁ、お前も媚薬が効いてきたか、これからもっと可愛がってやるからな」


SPは部屋を出ると、鍵を掛け出掛ける。


スーツの男は、美女を抱き寄せ、ベッドに誘導する。


トロンとした目つきに、スーツの男は、貪るように美女と交わり、次の獲物をどう可愛るか考えながら目の前の美女を性処理の道具に使うのであった。

「杏月が可愛い!!」


「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」






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