食事は健康の一歩
まだ朝日が登りきってない午前4時、杏月はいつものように意識が覚醒した。
そっか……もう僕は僕じゃなくなる。まだ早いし、二度寝しよっと。
昨日の事を思い出し部が悪くなったのか、布団に潜り四男のみずきを抱き締めて二度寝する。
――――――――――――
朝の7時になると屋敷専用メイドが軽くノックし、照之の部屋に入り眠り込む照之を起こす。
「おぼっちゃま、おはようございます。朝でございます。朝食の準備が整っております」
メイドがそう言うと、照之は欠伸をすると口を開く。
「ああ、おはよう。まだ杏月達は起きてはないのか??」
「はい、杏月様達はまだ寝ております。昨日は色々おありでした思うので、お疲れなのでしょう」
「確かにそうかもしれないな、ゆっくり休ませてやってくれ。もちろん杏月の弟達が目を覚ましたらご飯を出してやってくれ」
「はい、かしこまりました。おぼっちゃま」
一礼してメイドは部屋を出る。
パチンと指を弾き、爺やを呼ぶ。
「爺、いるか??」
「はい、坊ちゃま」
左から爺やが現れる。
「で、どうだ。あの後は??」
「はい、もう殆ど杏月様の件は片付きました。杏月様の傷痕を見ると爺如きではございますが、胸がぎゅっとなってしまうのでございます。坊ちゃま」
爺は懐からスッとハンカチを出して、目尻を抑える。
「確かにな、爺の気持ちは分からなくもない。だが爺よ、朗報だ!!杏月が女になる事を承諾したぞ」
「そ、それはそれは承知致しました。直ぐにでも世界に1つしかない性転換を自然に促すワクチンが1つありますのでそちらを杏月様に……。ですが、お値段が多少お高くついてしまいますぞ」
「ああ、そうだな!!多少値は張るが、世界に1つしかないワクチンだ。何十億だとしても俺からしたらはした金よ。杏月の為にも万全を期し迎え入れよ!!」
照之は大きくアクションすると爺やは、ハッ!!と頭を下げた後、残像を残し姿を消す。
照之の財力は並々ならる力を持っていた。
資産家でも100憶も措けば普通の人は凄いと思うが、照之は遥か上をゆくのだ。
総資産は7兆を優に超し、高騰する土地は一等地の企業ビルを建ち並べ、他の貴族すらも一目置く存在。
資産家や貴族が行くお金持ちの学園にも通う照之、神乃家の行事やビジネスに自らの足でその場の空気や現状を把握する。
失敗は次に生かす完全無欠の皇帝陛下様は今日も屋敷の中では、天才の片鱗も感じさせないほどだらしのない顔をしていた。
照之は今現在、杏月にしか興味はなかった。
様々な絶世と言える美しいおなごを見てきた照之は、見た目も中身も全てが自分に合っていると自画自賛していると、自然と足取りが軽くなる。
ガチャと杏月が寝ている隣の部屋に行くと、案の定、弟達は先に起きていた。
「おう、おはよう!!お前ら、起きていたか」
「は、はい……おはようございます。そ、その、姉ちゃんを助けてくれて、ありがとうございます」
照之は部屋に入ると弟3人が遊んでいるのを横目に声を上げると、ともきは照之の近くまでより緊張しながらも頭を下げる。
「よいよい、お前達が大事にする姉ちゃんな、可愛いよな!!お前らの気持ちは、凄くわかるぞー」
「や、やっぱり分かりますか??」
「ああ!!もちろんさ」
ニコニコしながら照之は杏月について語ると、ともきは驚きながらも同意を求めた。
照之とともきが話していると、ゆうじとみずきも照之に寄ってくる。
「なぁーにいちゃん!!俺達のおねぇーちゃん、可愛いでしょ!!」
「おねぇたん、かわゆい!!!!」
他の2人も照之に語りかけてくる。
幼いながらも杏月の魅力的な味を占めている弟を見て言う。
「確かにこれ程の良いおなごは初めてだ!!羨ましいぞこのこの~」
ゆうじとみずきのほっぺを軽く引っ張りニッコリ語りかける照之に、弟達も安心したようにじゃれてきた。
少し騒がしくしていると、杏月が目を覚ます。
「んっ……んんー。あれ、みんなは……??」
眠たい眼を擦りベッドの周りを見ると誰もいないことに気付きベッドから起きようとすると、目の前で照之に戯れるゆうじとみずきがいた。
「こ、こらー!!照之様に迷惑掛けちゃ、ダメだぞぉー!!」
と言いながらゆうじとみずきに抱き付く。
「杏月……。そなたはホントに面妖な美しさだ……!」
照之は起きてすぐの杏月の行動見ると、自然と笑みが零れる。
「姉ちゃん大丈夫か!?」
ともきはフラフラな杏月を庇うように抱き付くと、杏月は更にともきをぎゅっと抱き締める。
「お姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんだぞ!!もー、何度言えばわかるの??悪い子はこうだ!……えい!!」
杏月はえいえいと、ともきを抱き締めて力いっぱいぎゅっぎゅっとするが逆に他からみたら御褒美に見えてしまう光景だった。
「杏月の天然プリが凄いな。はははっ!!よし、みなも起きたことだし、朝食にしようではない!!ついてまえれ」
朝からこんな可愛い杏月の姿を見られ、照之は終始機嫌よく皆に促す。
食事をする部屋に着くと杏月は思った。
広い食事場所はシャンデリアや豪華な装飾が施される空間に、メイドが朝食の料理をワゴンで運んできて手早くテーブルに配置する。
「照之様!!僕達はこんなに良いものを頂いて、良いのですか??」
杏月は不安になり、つい訪ねる。
「ああ…そんな事か。大丈夫だ!!食事はしっかりせねばなるまい、食事は健康の第一歩だ!!しっかり食べて、ともきにゆうじにみずきもしっかり食べるのだぞ!!そして杏月そなたもだ、遠慮せず食べよ」
照之の言葉に弟達は「はーい」と大きな声が食事部屋に響く。
杏月は嬉しそうに「はい」と小さく言うと、照之も微笑みで答える。
杏月は目の前の食事に感激して食の偉大さを噛み締めていた。
朝から目玉焼きにハム、それに何種類のパンにスープにスイーツまでその食卓に感謝し、杏月は「いただきます」と小さく呟き、食べ進めた。
――――――――――――
それから月日は1週間が過ぎ、豪邸での生活も少しだけ慣れてきた頃、杏月は弟達の世話を焼いていた。
「みずき、おいで」
手招きしてみずきを呼ぶ。
「なーに、おねぇたん??」
「ここの生活はどう??」
杏月の膝の上にみずきが乗って来ると、杏月はみずきの頭を撫でながら訪ねる。
「んーとね!おねぇたんといっしょだから、たのしいよぉ!!」
「それはよかった。ともきもゆうじも何かあったらお兄ちゃんに言うんだよー??」
みずきの返答にホッと胸を撫で下ろした。
杏月は2人の弟達にも言うと良い返事が返ってくる中、部屋に専属メイドが部屋をノックすると、中に入って来るや杏月の側に掛け寄る。
「杏月様、照之様から仰せつかり、参りました」
「は……はい!!僕なんかに良くして頂いて、ありがとうございます」
メイドに感謝の言葉を載せ、ニッコリと微笑む杏月。
メイドは杏月の微笑みにポッと赤くなると、エステ部屋に誘導する。
杏月は屋敷の生活に落ち着いてきたらこの屋敷に存在するエステ部屋で生きてる細胞を破壊せず痣の処理と、身体中の全身マッサージにオイルマッサージ等できることは全てしてくれと、照之はメイドに伝えていた。
照之は仕事で貴族の家族に挨拶に出向いたり、持ちビルの会談などに出向き、今は屋敷を留守にしていた。
エステ部屋に着くとフルオプションだろうか、一般人が使用したら一回20万はくだらない程お高そうなメニューがホワイトボードに書かれていた。
照之からしたらはした金に過ぎなく、杏月には遠慮なく使用してもらいたかった。
「杏月様、ようこそいらっしゃいました。今宵から担当させて頂く、富豪専属エステティシャンでございます」
「は……はい!!初めてなのでお任せで……お願いします」
杏月は初めてと言葉を添え、エステに戸惑いながらも指示に従い服を脱ぐ。
上から順に脱ぐとエステティシャンの担当者が杏月の背中を見て絶句した。
華奢な身体にそぐわない痣を目撃する。
「ははは……。こんな汚い身体ですいません……」
苦笑いしながら杏月は、痣がある背中やお腹を恥ずかしそうに隠そうとした仕草をした瞬間、エステティシャンが杏月そっと抱き締めていた。
「お辛かったでしょに……。こんなにお美しい姿になんてこと……!!杏月様、そんな隠さなくても大丈夫です。早く良くなるように、私たちも最大限のお力沿いを致します!!!!」
エステティシャンの人もメイドの人もみんな可愛いのに、何故か自分は場違いだと感じていると、杏月はエステティシャンの人に優しく諭され「ありがとうございます」と最大限の笑顔で微笑む。
杏月は何かしてもらうと直ぐに感謝するが、無自覚の屈託のない笑顔を屋敷中に振り撒いているだけで、ただただ屋敷に居る人の好感度は、爆上げしていくのであった。
「杏月が可愛い!!」
「杏月の可愛い姿がもっとみたい」
と思った方は是非、好評価をお願いします。
評価、ブックマーク、感想などして頂けると、物凄くモチベーションも上がりますので良かったら応援よろしくお願い致します!!