お泊まり会は唐突です 其ノ四
4日目の朝、朝食を終え、メイド達が各自支度を整えていた。
アリシアは久しぶりに気品溢れるドレスから解放されお洒落な格好になっていた。
チェック柄ブロッキングコートを着こなし足元には白いヒラヒラした布がチラリと顔を表す、アリシアの黄金の髪は美しく靡きその気品ある雰囲気にも落ち着いたコートも難なく似合ってしまう。
普段からドレスなどを嗜むアリシアには新鮮であった、普通にお洒落をして大事な友人と優雅に買い物を楽しむ、そんな一時を実は心の底から楽しみにしていた。
キメ細かい肌は外出時では露出は抑え目の為、どうしてもコートやジーンズなどで肌を隠すが杏月と2人だけの時間だと意外と攻めるアリシアであった。
紗霧というとシンプルな印象を感じた、デニムパンツを履き横には黒のラインが入っていた、上着は白のカットソーだが襟は黒のラインが入り更にその上から羽織るように後ろの襟は黒のモコモコした物が付いているアウターを着こなす、元々クールな紗霧だがもっーとクールにさせるであろう姿。
愛里菜というと短パンデニムパンツに上は白トップスの袖なしノースリーブ、小麦肌が露になり一層美しさを引き立てる、胸は豊満な為主張が激しくその辺はギャルだった事もあり、余り恥じらいも感じさせなかった。
腰にチックのシャツを括りワンポイントにアクセントを付ける。
杏月はチェック柄、長袖のマキシロングワンピースを着ていた、アリシアのロングコートとはまた違い、杏月のマキシロングワンピースはウエストが特に強調され杏月の細いウエストがまた唆る出で立ちになっていた。
みな一様に着替えが終わるとメイドは黙礼して部屋を後にした。
杏月は一通り3人を見るとそれぞれの可愛さ、美しさに翻弄され見惚れているとアリシアは口にする。
「でわ、そろそろ行きますわよ!!」
「うん、行こう」
「そうだな!」
「はーい」
みな返事をして部屋を後にすると行き違いに照之と鉢合わせする。
「おー、お前ら。メイドから聞いたぞー!デパートに行くんだってな??」
照之はざっと4人に目を向けるとそうに言う、普段は中々見れない3人の同級生の見栄える私服姿。
そして杏月の姿を目にすると照之は素直にドキドキと胸を躍らせていた、ウエストが協調され身体のラインがそのまま出る服はスタイルがそのまま露になる為、美しくないと見栄えない服装になっていた。
そんな服も杏月にかかれば魅了する一つの道具になるのは必然、体格は幼いながらも杏月の胸はそれなりに出ていてピッタリとした服にウエストにはベルトが巻かれていた。
「うむ、相変わらず見栄えるな。車はもう玄関の前に着けてあるから楽しんでくるといい」
照之の取り計らいにアリシアは言う。
「流石ですわね!取り計らって頂き、ありがとうございますわ。さあ皆さん、行きますわよ!!」
アリシアは楽し気にそう言うとそそくさと先を急ぐ、直ぐに沙霧と愛里菜も会釈して進む。
杏月も3人について行き、照之とすれ違うと照之は杏月に耳打ちした。
「杏月、あの一件はもう手回ししてあるからな。安心してくれ」
照之はそう言うと杏月は驚きとその早さに驚愕した、直ぐに杏月は照之を通り過ぎるとくるっと振り返り万遍の笑みを浮かべ照之にだけ聞こえるように呟く。
「ありがとうございます、照之様!!大好きです……」
杏月はそう伝えるとひらひらと3人の方に向かって行った、照之はその仕草に鳩が豆鉄砲を食ったような不意打ちを食らった。
杏月のその一連の仕草は正に、花を舞う妖精の如く可憐な舞いをし微笑むと照之は一瞬で魅了され頬紅を染め俯きながら再び歩くのであった。
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そして1時間半が過ぎた時、都会の一等地に構える大型デパート本店に到着していた。
都会なだけあり、人の活気で溢れ返っていた、運転手が車のドアを開けると4人は静に下車しデパートの中に向かう。
優雅に歩く4人に通り過ぎる人々は行く先々で視線を集める、中に入ると広いホールが4人を出迎えた、流石は本店の大型デパートだけあると感じさせる上品な内装に各ブースでは色々な物を売っていた。
「で、どうしますの??」
人の邪魔にならないように端に寄るとアリシアが問うと愛里菜が言う。
「先ずは服を見ないかぁ??」
「わたくしは良いですのよ、2人はどうしたいのかしら??」
「私も服でもいいよ」
「私もそれで構いませんが……あっ、でも、私お金の方持ってきてませんけど、大丈夫なんでしょうか……??」
杏月は疑問に思っていた事を訊ねた。
「ええ、別に構いませんわよ??わたくしも照之さん程ではないのだけれど、わたくしもそれなりに資産があるのよ??」
アリシアは寛大な態度で杏月に説明すると沙霧と愛里菜も言う。
「うん、私もアリシアさん程ではないけど大丈夫」
「私もだ!伊達に大手企業の令嬢ではないんだぜぇ??そんな些細な事気にせず、今を楽しもうじゃんか杏月さん!!」
2人は誇る顔で杏月に促すと杏月は申し訳なさそうにはにかんだ。
それから先ずはブランド服が置いてあるお店に向かった、中に入るとやはり値段がそれなりにするのを見ると杏月は服屋の試着室に近くの椅子で3人の動向を眺めていた。
3人とも楽しそうに洋服を選んでいると何故かアリシアが杏月を見つめては服を手に取ったり戻したりと特に買う素振りもなくただ繰り返していた。
杏月はぐでーっとまったりして周囲を眺めていると沙霧がお店の外で何やら男の人に絡まれていた。
ん??沙霧様ナンパですか、流石ですね……。でもあれは、嫌がってる感じですし助けましょうか!
杏月は思った時は沙霧の方に向かっていた、直ぐに沙霧の近くに寄ると声を掛ける。
「嫌がってるじゃないですか、やめてください!!」
杏月は沙霧の嫌な表情を見て絡んで来た男の方を向き言い放つ。
「なんだてめぇ??あ??案外に可愛いじゃん、良かったらさ2人ともお茶しない??奢るからさ!!いいだろ~~??」
ナンパした男は杏月に近付き遊びの誘いをしながら杏月を上下品定めする視線を送っていた、杏月は不快な視線を感じながらも言う。
「嫌です、あなたみたいなゲスで常識のない人とは仲良く出来かねます。さあ、彼女が困ってます、やめてください」
杏月の言葉に男はこめかみに皺を寄せ荒々しい口調で杏月を捲し立てる。
「てめぇ、こっちがしたてにでりゃ調子に乗りやがって!!丁度いい、お嬢ちゃんも一緒に来いよ??」
男は杏月の手を取ろうとすると杏月はすぐさま口を開いた。
「そ、それ以上近づかないで下さい!!近付いたら大声で叫びます、大きいデパートなんですから直ぐに警備員さんが来てくれます。あまり迷惑を掛けないでください、さあ、行きましょう」
杏月は最大の睨みを効かせ男を睨み付ける、男は動揺すら感じられなく舌なめずりで見てくるのが分かったが直ぐに杏月は沙霧の手を引いてお店の中に戻った。
杏月は周囲を見ると観念したのか姿が見えなくほっと一息ついていると沙霧は話し始めた。
「杏月ちゃん、ありがとぉ。別に大丈夫だったのに止めてくれて嬉しかった」
「はぁ……怖かったんですからね??余り都会での単独行動は危険です、気を付けてくださいよ??」
沙霧は嬉しそうに小さく微笑み言うと、杏月は安堵の溜息を吐き沙霧に注意を促した。
「うん、気を付ける。杏月ちゃんもあんな怒り方するんだね……??」
「ま、まあ……でも、あの男の人を見る限り全然効いてるようには見えませんでしたけどね」
杏月は苦笑いして言うと沙霧は杏月を抱き締める。
可愛い……でもこんな可愛い杏月ちゃんも私の為にあんなにかっこいい顔になってくれた。すっごく嬉しかった、しゅき……好き過ぎる。
沙霧はそう思うと杏月の耳に近付き囁く、感謝の言葉を述べ杏月の可愛い耳に息を吹きかけ悪戯な笑顔を浮かばせてアリシアと愛里菜の方に向かって行った。
杏月は緊張の糸が切れたように試着室の近くの待機椅子に座って溜息交じりに座ってぽけーっとしているのであった。
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それから少し経ち服屋を見終わると次は沙霧の行きたかった本屋にやって来た。
本屋も大きい店舗なだけに様々な本が置かれているとか、沙霧は本を読んだりする事があり、娯楽や為に成りそうな本を探すのが好きなのだとか。
4人はそれ程バラバラにならない様に近くで本を眺める。
本が一杯だなぁ~、都会はなんでも置いてるから凄い!!漫画だって王道からマイナー作品まで幅広くあってこれなら私も飽きないかも。
杏月は本を眺めたり表紙を見たり、立ち読み品の一巻を手に取り見ていた。
アリシアも同様にする事はないが何かあるかとウロチョロしていた、愛里菜は余り本は好きではないみたいで少ししたら飽きて本屋の外にあるベンチに座って休憩していた。
退屈にしていると愛里菜は次は何処に行くのか考えていた。
んー、本は毎日見てるし飽きちゃうしな……。皆が楽しんでるしもう少ししたら杏月さんの方に行って何か見て回ろうかな??次は何見よう、最後にアクセサリー系見たいんだよねー。ふぅ……とりあえず一息一息。
愛里菜はベンチで寛ぐ、恥じらいを感じさせない風格、愛里菜はまったりと一息入れ少し時間が経つと本屋の中に戻る。
店内をしらみつぶしに本棚の隙間を見ていると杏月の姿を捉えた、凛とした表情で漫画を読んでいた、その姿に愛里菜もまた見惚れてしまっていた。
凛とした表情から一変、漫画が面白かったのか笑みを零しクスッとひと笑いする、どの表情もいつの間にか惹かれてしまう立ち姿。
杏月の姿を見て愛里菜は思った、幼い容姿はひと笑いすれば可愛く愛らしい、普段の素顔や凛とした艶姿は色香をも香る出で立ち。
がしかし、その外見とは裏腹に慈愛に満ちた母性、その優しさに触れようものなら一瞬で虜に、いや、依存してしまうであろう聖女の如く仁愛の心を持つ元男の子。
元男と聞いても一向にピンと来ない愛里菜、乙女よりも乙女だった元男の子は女の子に成り変わり、一層妖艶な色香を備え付け、異性はもちろん同性にすら惚れさせてしまう悪魔的魅力。
そんな杏月に愛里菜は静に近付き声をかける、暫しの間、2人だけの時間を堪能するのであった。
「杏月が可愛い!!」
「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」
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